【2017年1月のトピックス④】
▲朝日新聞の記事から。7人の横綱の昇進1年前の成績が分かります。クリックしてごらんください。PDFの画面を右クリックして右へ回転をしていただければ見やすくなります。
他人(ひと)の褌で相撲を取るコラム
■今日23日付の朝日新聞も大相撲初場所で初優勝し、19年ぶりの日本人横綱の誕生が間違いない状況になったと稀勢の里関に関する記事が多く紙面を飾っています。私にとってはアメリカのトランプ大統領の就任行事よりもこちらの方が関心大です。(笑)
●朝からネットの記事もほぼすべて検索して読みました。朝日新聞の記者一人だけが横綱昇進には成績が甘いと書いています。先場所の準優勝が優勝の鶴竜と2敗差であるというのが理由です。
●ですが「準ずる成績」には間違いありません。それよりも2面で特集している「時時刻刻」では1995年の貴乃花以来7人の横綱昇進者の前6場所(1年間)の成績を図表にして掲載しています。それを見ると貴乃花の80勝10敗(勝率888)がダントツで、稀勢の里はそれに次ぐ74勝16敗(勝率822)です。
●他の横綱はほぼ2場所連続優勝の昇進規定は満たしていますが勝率は稀勢の里以下です。三代目若乃花、武蔵丸、朝青龍、白鵬、日馬富士、鶴竜の6人です。この1年の安定度は昇進に値するものだと思います。
●2場所連続優勝すれば文句はないのでしょうが、稀勢の里には残された時間がそう多くは有りません。前にも書いたとおり横綱に成ると短命に終わるリスクがあります。それに20年に1人の日本人横綱は少なすぎます。ここはジャパンファーストでお願いしたいものです。(笑)
●稀勢の里関には私も一抹の不安を持っています。父上と同じように大関のまま、名大関として長く相撲を取って名を残してもらえればと思う気持ちもありました。ですが彼は壁を乗り越えてしまいました。その先には茨の道が待っているかもしれません。
●そんな複雑な心境を持っていたところ今朝のネットの日刊スポーツの記事が目に留まりました。記事を書いた首藤正徳記者の文章が私の心境とほぼ同じでした。これだけうまく表現してくれている記事にはめったにお目にかかれません。そこで『他人の褌で相撲を取る』という言葉が浮かびました。
●首藤記者の記事をコピペしてこのコラムを書いています。プロの記事で代弁してもらいます。ぜひお読みください。そして私の横着をご容赦ください。
■日本人はなぜ稀勢の里から目が離せないのか 日刊スポーツ 1月21日付
いつからか稀勢の里の取り組みを見るのがしんどくなった。ときに白鵬を吹き飛ばすほど恐ろしく強いのに、中堅どころにコロリと負けたりする。しかも、ここ一番の勝負どころで取りこぼす。ひいきの力士が勝って喜び、負けて落胆するのが相撲ファン。それが相撲の魅力でもあるのだが、稀勢の里はその落差があまりにも大きいのだ。
大きな重圧に緊張して硬くなり、自分本来の力を出し切れない。それがどこか人生にも似ていて、つい自分の姿と重ね合わせてしまうから、なおさらしんどくなる。あまりにしんどいので、最近はあえて期待しないふりをしていた。「また負けるよ」と自分に言い聞かせて、土俵に疑いの視線を投げる。そうすることで負けた時の落胆を少しでも軽くしようという、実に姑息(こそく)な観戦術である。
不思議なことに、期待外れが続いても、なぜか稀勢の里に引きつけられてしまう。目が離せないのだ。恵まれた体格とスケールの大きな相撲、日本人横綱誕生への期待はもちろんだが、中卒のたたき上げで、とことん正攻法、勝っても笑わず、武骨で不器用。五月人形を思わせる、きかん坊の顔。彼の姿は、懐かしい日本の心、美徳を思い出させ、どこか私たち日本人の琴線に触れるのだ。
千秋楽。稀勢の里の涙のインタビューを見て、泣けてきた。何よりも彼自身が一番しんどい思いをしていたのだ。彼は勝手に期待していたファンの何百倍も悔しい思いをし、失望したに違いない。その度に立ち上がり、手抜きをすることもなく、ひたすらおのれの力を信じて、長い時間、愚直に挑み続けてきたのだ。きっとそんな姿を、ずっと天から誰かが見ていたのだと思う。期待しないふりをした自分が、何だかとても恥ずかしくなった。
最高位に昇進するであろう来場所、もうあの『綱取り』への緊張感がなくなると思うと何だか寂しい気もする。と同時に長年の緊張から解放された稀勢の里が、どれほど強くなるか、考えるとワクワクしてくる。一方で誰を相手にしてもひきょうはせず、全身全霊で相撲を取る姿は変わらないだろう。そして、おそらく腰高と脇の甘さを突かれて苦労する姿も。それでいいのだ。それも稀勢の里の魅力なのだから。【首藤正徳】
■横綱に成ると金星狙いで平幕の力士がしゃかりきで挑んでくるでしょう。稀勢の里が横綱に成ることでほくそ笑んでいる力士も多いと思います。碧山、栃の心、松鳳山、隠岐の海というベテラン勢の他遠藤、御嶽海、正代らの若手がその候補です。
●今場所は立ち合いに変化する力士がいませんでした。これからは何でもありです。変化を警戒しすぎると一気に押し込んでくる可能性があります。まわし不十分で寄ると土俵際の突き落としがあります。それらを想定して稽古に励んでもらいたいですね。首藤氏の最後の2行はぜひ「魅力ではない」にしてもらいたいですね。
●頑張れ稀勢の里関。もっと稽古をして強くなりたいという気持ちがあれば道は必ず開けます。名大関ではなく名横綱への道を歩み始めたのだから。応援していますよ。<完>
- 登録日時
- 2017/01/23(月) 15:02