【2017年1月のトピックス⑤】
▲ロウバイの花:寒い時期に咲く花です。花言葉は「慈愛」「優しい心」です。
ドン・キホーテ安田会長の考え方
■1月15日プレジデント・オンラインの記事から触発を受けましたのでご紹介します。まずは以下の記事を参照ください。タイトルは『他人の悩み相談、聞き流す派?腹を割って話す派?』です。
■真摯な態度で即対応すべき
ドン・キホーテグループの店づくりとストアオペレーションの要諦は、徹底した“顧客親和性”にある。これは、各業態が想定するターゲット層に近い年代、属性、ライフスタイル、感性を有する者が主体になって、売り場をつくり、価格も決めるということにほかならない。
商売の最前線である売り場は、自分の成長の場である半面、仕事上の悩みや不安を抱えることも少なくない。グチが出ることもあるだろう。そうした場合、上司はどうすべきか。私が指導してきたのは、真摯な態度での即対応だ。聞き流さず、きっちりと受け答えすべきだ。
現場は常に、柔軟かつ大胆に新陳代謝しなければならない。だから現場に権限委譲する。これを当社では“主権在現”と表現し、積極的に推進してきた。それによってバブル経済の末期に1号店を開いたにもかかわらず、経済のパイがどんどん減少していくなかでも成長できた。
当然、店長クラスの責任は大きい。商品を安く仕入れても、売れなければすぐに撤去する。現場は、その仮説と検証の繰り返しだが、予測には当たりはずれがある。その意味でも、品揃えと価格はフレキシブルにしておき、ヒット商品が生まれる確率を高めておくのである。それが結果的に顧客のニーズを先取りすることにつながる。
■正しい主張はする、中傷と批判は御法度
この権限委譲の風土と歴史、文化は、当社グループにおける最も誇るべきDNAといっていい。創業以来の経験をもとに「こうすれば絶対に売れる」という確信があっても、それが現場に伝わらなければ、私の成功体験は具現化できない。そこで、彼らに権限を与えることで私の創業時を疑似体験してもらうわけだ。性善説にもとづいた人事戦略ともいえる。以前は私も「俺の指示どおりにやれ!」などと一方的に命令して、うまくいかないことも多かった。そんな反省から信頼して任せると決めたのである。
もちろん、頼んだ以上は成果を求める。権限と結果責任は車の両輪の関係だ。一定期間、短ければ1カ月、普通3カ月は口を出さない。幸い、これまで当社の権限委譲は、順調に店舗数が増えたことで比較的スムーズになされてきた。
スタッフの役割も重要だ。店舗はチームで運営するからである。部下も職務上、自分が正しいと思う主張ははっきりするべきだ。ただし、中傷と批判は御法度。とりわけ、陰口は厳禁となっている。部下との関係にあって、上司は威張ってはいけない。昔から「弱い犬ほどよく吠える」というではないか。真に実力があって、見識に富み、人望がある上司は部下を威圧することはない。職位が上にいくほど、謙虚にふるまい、フレンドリーに周囲の人たちと接するべきである。それは、部下に迎合することとは違う。
ドンキホーテHD 創業会長兼最高顧問 安田隆夫(やすだ・たかお)
■記事の引用はここまで。読者の皆さんの感想、気づきはいかがでしょう?
こういう記事から少しでも何かを学ぼうとするなら、少し努力が必要です。
エッセンシャル(本質的なものは何かを考えること)なことを見出せば何か役に立つことが見出せるかもしれません。
●記事の筆者は安田会長にインタービューしてその要旨をまとめて書かれていると思います。問題提起は見出しタイトルに、その対応策は■印でサブ見出しにされています。
●読んでみて本文のタイトルと内容には若干のずれがあるように思われます。タイトルに対して内容はごく一部分であって、安田会長の人を活かす経営の考え方を主に述べられているように読み取れました。
●私は編集者ではありませんので本文の見出しタイトルとサブタイトルと内容の表現の巧拙を問うものではありません。小売業の現場で働いてきたものとして、これからの小売りの現場でも役に立つ考え方は何だろうというのに興味があっただけです。
●前提条件として、ドン・キホーテが長年増収増益の成長を続けているからです。まさに結果を出している、すなわち顧客に支持され経営上手であるという事実があるからです。
●そこでこの記事から学べる要点は■印にある2つのサブタイトルがキーワードです。これをもとに本文を読み自分で理解し納得できる本質を押さえた文章に要約すべきと思います。
■私は以下の4項目にまとめてみました。
①顧客親和性→ドンキは想定する顧客と同世代の者が売場を創り、価格も決めることによってミスマッチをなくす。(仕入れはどうなのだろうか?は書かれていない)
②現場に権限移譲(主権在現)→部下の不安や悩みに上司は真摯な態度で向き合い即対応する。
➂権限と責任の一体化→店長に権限を大幅に与えるが一定期間の後の結果責任も厳しく問う。
④部下は正しい主張はしても、中傷と批判はご法度。特に陰口は厳禁。上司は常に威張らず謙虚であれ、それは迎合とは違う。
●①はドンキの商売を成功させるための人事戦略でしょう。販売する商品を使う生活体験世代が仕入れ、売場を創り、価格を設定するのは商売の王道です。
特に趣味嗜好商品などは好きな人間の情報を活用するのは重要です。ですが在庫管理というマネジメント能力を教えないと在庫過剰になるリスクがあることを認識しておくべきです。
●同世代であっても想定する顧客像をいくつかの塊に分けて(特定多数といいます)そのライフスタイル、好み、購買行動を把握する必要があります。いずれにせよ、店頭で顧客の言動を観察、対話することなどでできるだけ客観的に掴むことです。そのうえで日々提案していくのが需要喚起につながります。
●②は本文のタイトルの対する答えの部分でしょう。要点は聴くことのスキルが求められます。仕事の内容に関すること(売り上げ不振や売れ残りの処理など)なのか感情に関すること(同僚間の仲たがいなど)、その他に分けて対応すること。これが瞬時にできるのが長の必須条件です。
●真摯な態度と即対応は当たり前のことです。教育するというより登用の段階で見極める要件でしょう。真摯さや対応力の速さは幾分本人の資質に関わることだからです。
●➂は権限を与えるから結果責任を問うというのも普通ですが、私は責任が先にあると考えます。どういう責任を果たすのか(目的が明確)ならば権限(手段)は本人次第で行使の選択ができます。できる人はどんどん権限を広げてより大きな責任を果たすようになるものです。
●④の正しいと思う主張はすべきについてはその通りですが、正しい答えを見つけるのは上司と部下の間で『実験研究』(科学的)という態度が共有された方が良いでしょう。主張はあくまで意見(仮説)です。小売り、サービス業の現場ではやってみないとわからないことが多くあります。
●テレビの討論番組でよくみられる主張合戦は観ていて面白いのですが、なんら建設的な答えが生み出されていません。現状実態を共有、問題点の把握、課題の設定(仮説づくり)、手段の創出、実行、検証を繰り返すという科学的な態度が仕事遂行の基本原則です。
●それを上手くやるには上司がパワハラしないこと、短気にならないこと、俺の考えが正しいと思いこまないことです。小売りやサービス業の現場ではお客様が反応するか、支持するかが正しい答えです。部下も中傷、批判、陰口など非生産的なことに無駄なエネルギーを消耗しないことが大切です。
●ドン・キホーテ安田会長の考え方に啓発されて私の考えをまとめてみました。読者の皆様におかれましてはご自分の考えをブラッシュアップするのに参考にしてみてください。<完>
- 登録日時
- 2017/01/26(木) 10:53