【2010年11月の提案②】
ビジネス書の読み方・使い方
● 朝日新聞の週末版に「耕論」というページがあります。先月10月15日(金)の特集は「ビジネス書を楽しむ」でした。3人のその道の識者にインタビューした記事でした。
● 経営コンサルタントの小宮一慶さん、ビジネス本書評ブロガーの山田玲子さん、作家・評論家の唐沢俊一さんがそれぞれの自論を述べられています。このなかで私が共鳴したのは同業の小宮さんの意見です。
● 小宮さんご自身は70冊近く執筆をされている有名な方です。その意見の概要は次のようなものです。
● 本を書く時は2種類に分けて書いているとのこと。1つは仕事に役立つ知識を教える本。例えば計数や財務諸表の見方などの本です。もうひとつは経営の原則論や人生論について書いた本だそうです。
● それぞれの愛読者は違っていて、前者は一部上場企業に勤めている会社員が多く、後者は中小企業のオーナー経営者とのこと。
● 後者の本で書いているのは「企業はお客様が居ないと存続が出来ないのだから、利益よりもお客様のことを第一に考えてがんばりましょうということに尽きます」とおっしゃっています。
●「その結果として、自己実現や経済的成功がついてくるということを、いろいろな本で繰り返し述べています」「読者のハートに訴えるように、理屈じゃなく実践の支えになるようなことを、例え話や事例で書いています」
● なぜなら、小宮さんは「中小企業の経営者は毎日金まみれで仕事をしているので、だんだん汚れてきて『お客様第一』という思いも薄れていく。だから同じ話を読んだり聞いたりして、もう一度こころを奮わせようとする、いわば演歌と一緒なんです」とおっしゃいます。
●「だからいったん共鳴していただいた方は繰り返し読んでくれますが、受けない人には徹底して受けません」小宮さんはそれでいいんですとのこと。
●「 中小企業の社長は全人生をかけて24時間本音でやらないと食っていけない。だから「ビジネス書」という演歌が必要なんです。」そういえば私も演歌というのは、気に入れば同じ曲を何度も聴いたり歌ったりしてひと時のストレス解消に役立てています。
● 不特定多数では無く特定多数の対象客を想定して、その人たちに受ければ良いというマーケティングの基本を実践されていますね。ただ小宮さんの場合は一方の得意分野である財務知識で中小企業の経営者の弱点を補っておられるのではないかと思います。そうでないとなかなか信頼されないのではないでしょうか?
● 3人の中で小宮さんの意見以外は私には受けませんでした。よって忘却です。そこで私の自論ですが、ビジネス書は自分の直面する仕事の課題解決に役立つヒントになるものか、自分で課題そのものや、解決策を考えるための視点や切り口の参考になるものを選びます。
● そこで冒頭の写真をご覧下さい。先月、月に一度の大型書店行きの時に見つけたものです。偶然、題材にしようと思っていた2種類の本が隣り合わせに陳列されていました。その書店では出版社別の陳列コーナーがあったからでしょう。どちらもダイヤモンド社の出版でしたから。
● 左側の河瀬和幸氏著の「また売れちゃった!」は直接ヒントになるアイデアが満載の本です。著者は実際の販売現場で経験しながら積み上げられたノウハウを「購買心理の5階段」(5段階をアレンジされています)を基軸にして書いておられます。
●ノウハウの羅列ではなく、購買心理を軸に持論の体系化を試みておられます。但し、あくまで河瀬氏がある現場である時期に経験された事がベースになっていますから、今後においてどこでも通用するものと考えない方が良いでしょう。あくまで自分の状況に対するヒントにすべきだと思います。
● 右側の本はハーバービジネススクールのヤンミ・ムン教授著の「ビジネスで一番、大切なこと」-消費者のこころを学ぶ授業-です。この本は著者が述べられているように、具体的なアイデアを教えてくれるものではありません。
● 自分自身で考えるためのヒントにしてもらいたいとおっしゃっています。一度通読しましたが、私には彼女の顧客の分類の仕方に刺激を受けたのと、読みながらひとつだけアイデアが閃きました。今のところこれで十分です。
また読む機会があるかもしれません。気になるところには付箋だけは貼ってあります。
● 私にとってビジネス書は娯楽本ではなく仕事に役立つか否かで読むものです。したがって概ねこの2つの視点で選択していきます。さらにもうひとつ挙げるなら本の構成について読み取ります。
● それは内容が辞典のような項目羅列型なのか、全体→部分→細部という体系だったストーリー型かという視点です。後者にはいくつかの事例からあるセオリーを導き出す帰納法的なストーリーの本もあります。
●ビジネス書はその内容だけでなくどのような視点と手段・方法で創られているかを読み取って、それも仕事に活用されることをおススメいたします。またご自分のビジネス書の選択基準のひとつにされるのも良いと思います。<完>
- 登録日時
- 2010/11/24(水) 11:38