▲春に向けて芽生えるチューリップの蕾
【今月の提案】
3月3日(耳の日)に「聴く」を考える
■ 3月は『讃(たたえる月)』と言うのはいかがでしょう?入進学、とりわけ受験生、新入社員、昇進・昇格、ご結婚、ご出産、新築、独り立ちなど人生の分岐点になる方が多い時期です。いずれも「賞賛」という言葉で讃え合いましょう。
■ そんな3月の今日は3日です。寒の戻りで急に寒くなりました。神戸も外は雪がちらついています。昔から3月3日はひな祭りで女の子の節句ですね。スーパーのチラシではちらし寿司などが推奨されています。また3月3日の語呂合わせで「耳の日」として「補聴器」が拡販の対象になっています。
■ そこで「耳の日」にちなんでその機能である「聴く事」について考えてみました。わたしはここで、「きく」を「聴く」という漢字を使いました。しかし「きく」には同じ意味で他にも「聞く」「訊く」という漢字があります。
■ その違いを手元の国語辞典で調べますと次のように書いてありました。
「聞く」は、しぜんに耳に聞こえてくる音声を耳に感じる意で、「物音を聞いた」「叫び声を聞いた」「うわさを聞く」などと使われる。
■「聴く」は、意志を持って念入りに聞く意で、「音楽を聴く」「市民の声を聴く」などに使われる。
■「訊く」は、たずねる。問うなどの意で使われ「道を訊く」「使い方を訊く」などに使われる。おなじ「きく」という機能でも漢字によりその意が違うのですね。
■ 昔(30年近く前ですが)ある研修で講師の方からこの「きく」の違いを、次のような漢字の分解で教わったことがあります。それは…
■「聞く」とは、耳に「門構え」を付けて聞くので、自分の都合で門を開いたり閉じたりする聞き方だと。
■「訊く」は「言葉に刃を付けて」訊く。たとえば訊問などがその例であると。
■ そして最後に人と人とのコミュニケーションで大切なのは「聴く」だと。それは耳を四方十方(八方でないところはこじつけ)に傾け「心をこめて」聴くことが大切であるという説明でした。なるほどと感心して印象に残こりました。
■ その後今日まで「聴く」ということの難しさ、重要性に気づき今なお私の課題のひとつになっています。
■ 自分の言いたいことを一方的に話さない、と心がけていますが、人の話を聞いているうちに自分の話したいことが浮かんでしまう。そうすると早くそれを話そうとするなどまだまだ未熟です。
■ 聴き方のスタンスは「相手に意識を向けて」、技術は「たずね」「つかみ」「答える」ことが必要だとはわかっているのですが、常に実践することは難しいのです。
■「相手に意識を向ける」とは相手が何を考え、何を言わんとするのかに心を傾けることです。「たずね」とは問いかけ、質問ですね。「つかみ」とは聴いて相手が何を伝えたいのかを把握することです。
■「答える」とは①自分の意見や知識を伝えるだけでなく ②相手の言わんとすることを復唱して確認する ③共感を示す ④賛同する(同意する)⑤反対する ⑥違う視点や考えを伝える ⑦参考情報やいくつかの選択肢を示すなどがあります。
■ この答え方によりコミュニケーションは生産的な発展につながりやすいのではないでしょうか。通常、日常会話は「たずね」なくとも相手が言いたいことを話し出すのが普通です。それを黙って聴いているだけでは良い聴き手にはなれません。
■「たずね」が良い聴き手のポイントであり、「つかみ」は聴くことの決め手だと思います。耳は聴くための体の機能ですが、機能は価値を生み出さねば存在が問われます。ただ単に体の一部として付いているのではなく、その奥にある「ココロ」とつながっています。
■ コミュニケーションのもうひとつの機能である「口」は「話す」だけでなく「息をする」「飲食をする」「舐める」「キスをする」など複数の役割を果します。しかし、耳は聴いてココロとつなげる単機能です。
■ 目と共にココロに働きかける機能としてより専門性が高く、重要な役割を果すものだと思います。「耳の日」にちなみこの機能の存在価値について考えてみました。この使い方が上達すれば多くの人々の幸せにつながると思います。
■ 尚、会社や学校、各種団体などの組織内コミュニケーションの課題として、東京大学の中原 淳准教授がダイアローグ「対話する組織」(ダイヤモンド社2009年発刊)という著書で興味深い提案をされています。まずは組織における人材育成担当の方には必読の書として推奨いたします。<完>
- 登録日時
- 2011/03/03(木) 18:16