▲ お店のファサードです。
【今月の見た店】
遊べる本屋『ヴィレッジバンガードBOOKストア』は面白い!
■ 神戸三宮の繁華街からはずれた元町との中間の山手側の道を歩いていて目に留まったお店がありました。その店の看板には「遊べる本屋」と書かれています。
● 本には興味がありますから思わず立ち止まりました。通りに面してはいますがいわゆる商店街ではありません。看板がなければ通り過ぎていたでしょう。ちょっぴり好奇心を刺激されて中に入ると雑貨のボリューム陳列が迎えてくれます。
● その奥には大きな本棚があり、コーナーサインにあたるデカPOPと本、普通の本屋さんに比べればPOPの多さが目につきます。ざっとみてもフロアは50坪ぐらい、左手に2階への階段があり、そこにも天井から床まで商品が量感いっぱいに陳列されています。
● 一見するとドンキホーテの店かと思われます。見渡してすぐに面白いと感じたのが売場分類とそのコーナーを表示するPOP、それに品揃えと貼付されている商品POPです。
● 量感のある商品陳列、本だけでなく雑貨などが同時に陳列されている売場、そこにPOPですから、人間の視覚をおおいに刺激します。文字情報には反応しやすい私ですから、そこに書かれているコピーにはすぐに興味が湧きました。
● 最初に立ち止まって注目したのが「お父さんお母さん、過去のわたしへ」のサブコピーのあとにメインコピーで『今年こそゼッタイ幸わせになります』と書かれたコーナーサインのデカPOPです。(幸せは正しくは「わ」という送り仮名はいらないはずですが、記号的にはあるほうが良いと思いました)
● 商品は本がメインです。タイトルは「結婚1年生」。普通の本屋さんでは1冊か2冊しか在庫をしていないだろうと思われるものが、50冊は平面陳列しています。そして商品POPは「恋愛と結婚は違う!」『「好き」だけじゃ片付かない現実問題』「新婚さんにプレゼント!」と3枚ありました。
● お客様のキャッチを目的のコーナーサインPOPは、対象客のセリフで表現し、商品POPはこの本を読まそうとする問題提起型に、そして行動を促すプレゼント訴求となかなか良く出来ています。他にも関連図書や雑貨が一緒に陳列されています。これがまた暖かい感じがするんですね。
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● そこでちょっとクイズです。(笑)このコーナーの対象顧客はどういう人でしょうか?ちょっと考えてみて下さい。
● いかがですか?考えられましたでしょうか?私はお店で考えました。品揃えから対象とするお客様を想定するっていう練習は面白いですよ。正解はわからないことが多いのですが、楽しめます。では・・・
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● 答えを「新婚さん」や「これから結婚する2人」「これから結婚する女性」というのはすぐ浮かびますね。それ以外には?どういう人でしょう?・・・
私は独身女性(未婚ならびに離婚経験者)や「結婚できないのに近じか友人が結婚する女性」ではないかと思いました。
● 特に一度失敗したけれど、次はと期待を持っておられる方や初婚の友人へのプレゼントを考えている人は購入されるのではないでしょうか?どうなんでしょうか? 興味深いですね。
● 正解はその商売をしている人が、自分で検証するしかわからないでしょう。大事なのはこの売場のように企画(仮説)を立てて売場を創り、それを確かめるという行為をすることです。これが商売という仕事の醍醐味のひとつだと思います。
■ 他には昨年のM1グランプリ優勝の漫才師「笑い飯」の哲夫が書いた本「般若心経」の解説本コーナーが面白かったですね。上のサインPOPは「私自身から自由になる」、商品POPは「哲夫の中にブッタが生きてる~」で本の横には「せんとくん」の人形がありました。
● 哲夫と般若心経の解説というギャップを利用したコピーですね。(哲夫が仏教を勉強しているのは知っていましたが、一般にはあまり知られていないかもわかりません)朝日新聞にコラムを書いていましたし、今は同紙で人生相談をしているようです。
● ところで笑い飯の2人は通常「西田」と「哲夫」と呼ばれています。この店でも「哲夫」というPOPでした。それぞれの名前と苗字は何なのか気になりませんか?どうでもよいことですが、西田は幸治、哲夫は中西です。こういうクイズを売場に貼り出せば面白いんですがね。
■「社会人全員必読!」のデカPOPのコーナーにはいろんな仕事本が品揃えされています。分類はありませんが、面白そうな本が揃えられています。話題の哲学者ニーチェの言葉本には「ニーチェは変人かもしれない」というPOPがありました。謎掛けPOPで興味を惹いていますね。
■ 2階に上がると人気のコミック「ワンピース」が迫力陳列で迎えてくれます。ここも本だけでなく、ぬいぐるみやステッカーなどファンの欲望を刺激する品揃えと陳列です。
● こういう売場づくりは複数購入を促進して「客単価」を上げます。思わず欲しくなるのですね。一品の商品単価の低い店は単価の高いものを購入させる仕掛けではなく買上点数アップがメインです。
● 雑貨以外にもCDやDVD、ファッション、文具など買上点数アップの仕掛けはあちこちにちりばめられていました。わたしも心理学のコーナーでその気がなかった本を2冊衝動買いしました。「心理テスト」と「カリスマ手品師に学ぶ超一流の心理術」という本です。まだ読んでいません。(笑)
● その日は30分ほどしか時間がなかったので帰りましたが、また行きたくなる店でした。おそらく私は店が対象とするお客ではなかったでしょうが、私の方はお客になりました。その要因は「欲しいものがありそうだ」、「店に居ても楽しい」からです。
● 会員制度もポイントカードもありません。特別心に残る接客応対もありません。アルバイトさんのようです。それでもリピートしたいと思ったのは「品揃え」と「楽しい売場づくり」です。これなら大型量販書店にも、アマゾンも関係なく生き抜けるでしょう。
● 業種・業態によって同じ人間を対象にしていても顧客満足の要素は違います。
ご自分の商売にとって何が主な顧客満足の要因なのかを考える必要があります。全て同じではないですからね。
● この店は私にとっては、願わくばもう少し便利な立地に移転してもらいたいと思います。家賃が問題なんでしょうかね。それともねらう客層が近くに集まるのでしょうか。GWにまた出かけてみようと思います。今度は店内がどのような出し物に変わっているか愉しみです。<完>
- 登録日時
- 2011/04/28(木) 14:02