【今月読んだ本】
『ユニチャームSAPS経営の原点』
■ この本は素晴らしい内容の本です。営業関係の仕事をされている方には是非読んでいただきたいと思います。しかしセールス戦略や技術を解説した本ではありません。できれば営業会社のトップや幹部の方に読んでいただき、自社の『営業システム』の見直し、改革のためのプロジェクトのテキストにされると良いと思います。
● 著者はユニチャーム・ペットケア株式会社の社長であられる二神軍平氏です。トップ自ら会社再生への実践に基づいて作り上げた「仕事の仕組み」と「組織文化の改革」について述べられています。
● すべて社内で自分達の手づくりで仕上げたのではなく、トヨタやP&Gという企業の実践していることを参考にするなど、外部のコンサルタントの力も借りて築きあげられたそうです。
● 二神氏は2001年から当時ユニチャームの一事業部だったペットケア事業を立て直すために子会社化され社長に就任されました。以来この本が出版されたのが2009年10月ですから、今から1年半前時点でのSAPS経営の集大成の記録です。
● 本にも書かれていますが、このSAPS経営は現在も進行中であり、日々試行錯誤が続けられているようです。2011年春の時点でどのように進化されているかは業界紙や雑誌などに注目していただければと思います。
● 二神社長がなぜこの本を書かれたのか、その動機は述べられていません。私の推測では、おそらくユニチャームグループの社員向けのテキストではないかと思います。それほど詳細に、無駄なく本質の部分が書かれているからです。しかし実践している当事者でないと十分な理解と共感ができないかしれません。
● 本書の特長を列挙しますと…
①理念から組織を成長させる根幹である「営業システム」に焦点が当てられている。従って自社の事業戦略やマーケティング戦略については語っておられない。
②SAPS経営の「営業システム」については余すことなく全体系を体系的にまとめておられる。しかも細部まで記述・公開されている。
③したがって、業種が違っても営業会社であればとても参考になる内容である。しかし、「営業システム」にこそ会社の体質と社員の能力を開発し強化する秘訣があると信じる人にしか参考にならない。
■ 特に第3章から第6章にわたってSAPS経営の真髄と詳細が記述されているのでそこは2度読んでいただきたい。さらに第5章のSAPS経営実践の4点セットは複数のメンバーで研究されることをお勧めします。
● 各社でも同じような事はやっていると思われる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、私はこれを頭で理解するより実践することで本質が実感できるようになるものだと思います。
● しかも数年にわたり実践しないとその価値が見えてこないかもしれません。ここにはこの仕組みによるペットケア事業における具体的なアウトプットやその成果、反省などは記述されていません。
● あくまで考え方と仕組みとツールの紹介です。当然ながら実践のドキュメントはブラックボックスです。良い実態把握の事例や状況判断と意思決定のコツ、そしてアイデアや効果的な手段がどのように生み出され、それがどのように共有されていったのかなどは書かれていません。
● そういうものが無いと考えられない、効果に疑問を持つという方もおられると思います。しかしそれは自分達で考えるしかありません。あるいは他の著書を参考にすべきでしょう。
● この本はあの手この手の販促手段やセールス技術を学ぶものではありませんが、本当に会社を強くしたいと思われる方のための優良なる参考書です。実践に裏打ちされた理論書です。ぜひ興味を持たれた方はご一読下さい。
● 私が1枚のマンダラ図法(省略型ですが)で本書をまとめてみました。上にファイルがあります。印刷して横に置いてお読みいただければ理解が進むと思います。特に右側の下半分が本書のキモだと思います。ぜひ参考にして下さい。<完>
- 登録日時
- 2011/04/28(木) 14:32