▲ 7月9日号の週刊東洋経済(大型書店にはバックナンバーがあります)
【今月のビジネスクイズ②】
経営学でニュースを読み解く:その1
■ 前回のクイズは松本前復興担当大臣の発言についてでした。松本前大臣が早々に辞任されましたのでこの件は急速に終息に向かっています。先週のテレビワイドショーでも多くの方が「けしからん、辞任は当然、菅総理の任命責任云々」という発言をされていました。
● 本欄の読者の皆様のご意見はいかがでしょう?論ずるに値しないと言う方もおられると思います。私はいささか肯定する感情がありましたので、何か学べないかとクイズにしてみました。以下問題から振り返りましょう。
● Q:あなたなら松本前大臣の一連の発言の問題点はどこにあったと思われますか?
また、それではどのような対応をすれば良かったでしょうか?
そしてこの事例から何を学ぶことができるでしょうか?
ちょっと考えてみてください。
● 今回の発言を「内容」と「言い方」とその奥にある「心の姿勢」に分けてみるといかがでしょう?
● ひとつひとつ新聞記事になったものを検討してみましょう。特に7月3日(日)の岩手、宮城両知事に対する発言が問題になったようです。(興味のある方は、前回の新聞記事を拡大してみてください)
● 岩手県の達増知事との会談では①「九州の人間だから・・・」と②「知恵を出したところは・・・そのくらいの気持ちを持って」はいかがでしょう?
①は言わなくても良かったでしょう。そのココロは地元の協力が必要ですよという共感づくりの姿勢ではなかったでしょうか?しかし、これは発言内容そのものが適切ではありません。
● ②もいきなり言われると何だ、と感じる言葉ですね。何かそれまでに松本氏のほうに、被災地の役所の言動に対する不満があったのかと推測しますが、ご本人は気合を入れるつもりだったのでしょうか?私なら、「どうなんだ?」という状況を確認する言葉から入りますがね。決めつけているところが問題だと思います。
● ちなみに岩手県の達増知事は玄関で松本氏を出迎えていました。松本氏のサッカーボールに激励の言葉を書いて「キックオフだ」という言動も悪くはないですね。それなりのパーフォマンスではないでしょうか?
● 次の宮城県、村井知事との会談。こちらの方が問題視されたようです。
①「コンセンサス云々・・・」と②「長幼の序がわかっている自衛隊なら・・・」
③「今の最後の言葉はオフレコです。・・・書いたらその社は終わりだから」
● ①の内容には問題はあるのでしょうか?あるとすれば「そうしないと、我々は何もしないぞ」ではないでしょうか?恫喝が入っています。私なんかもよく使った手です。ここでも「何が問題なんだ?」と聞いてあげる姿勢が必要です。
●そのうえで、「この問題は地方が解決することだから早急にやってください、そうしないとわれわれも動けないから」と伝えれば済むことです。
● ②の内容も問題は無いでしょう。おそらく松本氏はこのことが一番引っかかっていたのではないでしょうか?達増知事は玄関に出迎えていたのに、村井知事は出迎えもせず、応接室に後から入ってきた、このことにこだわった結果、「言い方」が命令調になったのではないでしょうか?
● 新大臣としての気負い、プライドを優先されたのでしょう。しかも自衛隊出身の村井氏がそういうこともできないのか、という憤りがあったと推測します。しかし、言ってしまった後、すぐに「オフレコ」と言ったのは「言い過ぎたとう反省が瞬時にあったのではないでしょうか?」
● そういう意味ではまともな人間だと思いました。柳田元法相のような軽率な発言ではなく、放言でもないと思います。ただ怒りに任せてテレビカメラの前で言う必要はなかったですね。
● その後、平野新大臣が宮城県を訪問された時の映像では、村井知事はちゃんと先に出迎えておられました。その効果はあったのでしょう。
③は意味がありません。オフレコとは事前に断って行なうものですから、後の祭りです。しかも恫喝まがいの発言は取り繕うにはへたくそですね。
● 村井さんはどう思いますか?と聞く余裕があれば良かったのですが、一方的に決め付けて終わり、という発言は松本氏に余裕がなかったのでしょう。プレッシャーからくる気負いが余裕を失わせたのではないでしょうか?
● まとめとして、学べることは・・・
①「ものは言いよう」という格言を思い出します。「内容に問題はなく」ても「言い方が拙い」と受け手には真意が伝わらないし、かえって感情を害するということです。
② 会談の最初は「共感づくり」から始まるということを知っておくべきです。
いきなり「用件」を切り出したり、怒りに任せて「説教」したのではその場の空気は悪くなります。これから一緒にやっていこうというのが目的なのにそれを忘れてはいけません。
③「共感づくり」には相手の状況、困っていることを「聴いてあげる」ことから始めるべきですね。そういう意味では「質問する」ことから始めるべきです。「聴いて、掴んで」それから「こちらの言いたいことを言うべき」です。
④ 自分は「お客さん」だという「例えの間違い」、「命令口調」などは「虎の威を借りる狐」です。一緒にやっていこうという姿勢が欠けています。繰り返しになりますが、今回の訪問、会談の「目的」を明確に意識していなかったか、間違えていたのでしょう。
■ では今回のクイズです。先週発売の「週刊東洋経済」の特集記事はビジネス
パーソンに役立つでしょう。「ニュースがわかる経営学」です。ちまたにあふれ
るビジネス理論を「最新ニュースを事例」でもって解説してくれています。
● ビジネス書の多くが海外の翻訳本のため、事例は海外のものが多いのです。
最近は国内の事例に置き換えて解説してくれる本も出ていますが、多くはあり
ません。そこでこういう特集を参考にすれば、今後、自分で最新事例とビジネ
ス理論を結びつけて理解することが可能になります。
● 量が多いので2回に分けて出題しましょう。
①から③の会社名の事例を表わすビジネス理論はA、B、Cのどれとマッチする
のかを選んでください。
● ①SONY ②ソフトバンク ③ライフネット生命
A:ブルー・オーシャン戦略 B:ビジョナリーカンパニー「衰退の5段階説」 C:事業ポートフォリオ理論
- 登録日時
- 2011/07/11(月) 13:40