【今月のビジネスクイズ 番外編①】
先月のクイズの解答・解説編その2:世阿弥の言葉『秘すれば花』
■ 本コラムのビジネスクイズシリーズは前回の解答・解説と共に次回のクイズを出題するという構成で書いています。ところが今回のクイズの解答・解説は少々長くなりそうなので、番外編として3回に分けて解答・解説のみをアップします。今回は6月の続きでその2回目です。
● 今回も世阿弥の言葉の意味をご紹介しておきます。前回同様、岩波アクティブ新書「処世術は世阿弥に学べ!」土屋恵一郎先生の著書から引用させていただきました。
● この言葉が登場するのは、世阿弥の「風姿花伝」(ふうしかでん)<花伝書ともいいます>という伝書です。以下引用です。
● 誰も想像していなかったことをやって、相手を圧倒してしまうことである。隠し芸といった言葉もあるが、世阿弥にとっては、ただの隠し芸ではなく、芸の本質にかかわることであった。勝負の根本にかかわることであった。
● 1つぐらいは誰も知らない、自分の芸の秘密を持っていることを、世阿弥は求めた。秘伝である。
● どんな剣の達人でも、思いもよらない技には負ける。しかし、そうした秘伝もいったん使ってしまえば、秘密でもなんでもなくなる。だから、むしろ使うことを控えながら、いざという時の技とするのだ。
● それが「秘すれば花」という意味である。
■ ではこの言葉があてはまる現代コミックを何にしたと思われますか?
それは、「ゴルゴ13」と「JIN-仁」です。
● ゴルゴ13というコミックは40年くらい連載されているのではないでしょうか?「さいとうプロ」のドル箱作品でしょう。作品の中で時代は推移していますがゴルゴはあまり歳をとりません。従って年齢は40年間不詳です。
● この作品の謎は、ゴルゴ13(別名デューク東郷)の出生がわからないということ、生い立ちも不明、人種も東洋系だということだけです。その謎にせまる作品はいくつかあるのですが、決して謎は明かされません。
● ゴルゴ13の仕事はプロのスナイパーです。その技や狙撃方法の創意工夫は読者であるわれわれにはわかりますが、依頼主には秘密にされています。結果は成功しますから仕事は繰り返しオファーがあります。
● こういう秘密(謎)を抱えた主人公はそれだけで魅力となります。さいとう氏はおそらく最後までその謎は明かさないでしょう。それより現代の政治、経済の裏側をリアルに、謎らしきものを明かしてくれることで我々をいつまでも惹きつけてくれます。
● こういうアイデアをどのようにして考え出すかは明かされません。それこそ秘すれば花「さいとうプロ」の秘伝でしょう。
●「JIN-仁」にも謎が多くありました。それはコミック最終巻やテレビドラマの最終回で明らかにされました。それまでは謎の解明は秘密ですからぐいぐい読者、視聴者を引きこんでいます。謎がわかってしまえばお話はおしまいですからね。
● テレビドラマの場合もう一度再放送を見る価値はありますが、そこまででしょう。それにしても原作コミックと違うエンディングを創るために、脚本家ならびに制作スタッフは随分とアイデアを練られたのでしょう。
●ドラマの謎を秘密にして視聴者をひきつけるというのは、世阿弥のいう「秘すれば花」の意味とは少し違うようですが、原作者やそれを元にした脚本家たちのその創造力は秘伝のものではないでしょうか?
● 一方、自分にとっての秘伝は何かと問われれば「うーん」と唸ってしまいます。それなりのものがあると自負していましたが、世阿弥のこの言葉に秘められた厳しさを認識すると、まだまだこれからも修行と思わざるを得ません。
みなさまはいかがでしょう? <完>
- 登録日時
- 2011/07/13(水) 12:00