▲ 7月9日号の週刊東洋経済(大型書店にはバックナンバーがあります)
【今月のビジネスクイズ③】
経営学でニュースを読み解く:その2
■ 前回のクイズは先週発売の「週刊東洋経済」の特集記事「ニュースがわかる
経営学」からです。ちまたにあふれるビジネス理論を「最新ニュースを事例」
でもって解説してくれています。
●2回に分けましたので前回がその1、今回はその2としてお届けいたします。
まずは前回の問題と解答、それに若干の解説です。問題から見てみましょう。
● Q:①から③の会社名の事例を表わすビジネス理論はA、B、Cのどれとマッチするのかを選んでください。
● ①SONY ②ソフトバンク ③ライフネット生命
A:ブルー・オーシャン戦略 B:ビジョナリーカンパニー「衰退の5段階説」 C:事業ポートフォリオ理論
● 雑誌の表紙写真を掲載しましたのでそこに2つまで答えが出ていましたね。お気づきになりましたでしょうか?2つが解れば残りは1つ。簡単でしたね。念のため正解は以下のとおりです。
①SONYはB ②ソフトバンクはC ③ライフネット生命はA
● ①はSONYの最近の衰退ぶりを「ビジョナリーカンパニー」の著者、ジェームス・C・コリンズ氏が最新刊で提唱する「衰退の5段階」で説明しています。(ビジョナリーカンパニーシリーズの3冊目です)
● コリンズ氏は優良企業が衰退するまでに次の5段階をたどると分析しています。それは・・・
①成功から生まれる傲慢 ②規律なき拡大路線 ③リスクと問題の否認
④一発逆転の追求 ⑤屈服と凡庸な企業への転落か消滅
● 詳細は本誌をお読み下さい。ご自分が所属する会社はこのような段階を踏んでいないか確かめるのも良いでしょう。私がかつて勤めていた会社は衰退しましたが、必ずしもこの法則どおりではありませんでした。
● 別の要素も考えられるのではないでしょうか?米国発のビジネス理論を頭から信じこむのではなく自分で考えてみるのも必要です。
● ソフトバンクの事業戦略をボストンコンサルティンググループの「事業ポートフォリオ」で説明しています。ソフトバンクについては、孫正義社長の思い切った事業戦略が注目されています。
● 同社の2005年と現在の事業ポートフォリオモデルが対比されていますが、大きな変化がみられます。それは携帯電話事業への参入とそれを儲け頭にしていることです。
● しかし、孫社長は次のスター事業として太陽光などの自然エネルギー発電事業に参入意欲を示しています。東日本大震災後に100億をもの寄付、脱原子力発電を打ち出し、各自治体に働きかけメガソーラーの敷設などの賛同を得ています。
● しかも、あの四面楚歌の菅総理を持ち上げ続投への意欲を持たせ、新エネルギー法案の成立をめざすしたたかさ。孫社長はあくまで本業は通信事業と言っておられますが、自然エネルギー事業は同社の大いなる布石であることは間違いないでしょう。
● 成熟市場である「保険業界」で「ブルー・オーシャン戦略」を実行したといわれているのが、インターネット専業の生命保険会社「ライフネット生命」です。テレビのCMでこの会社のことをご覧になった方も多いのではないでしょうか?
● 競争が激しい既存の市場で勝ち抜くための戦略を「レッド・オーシャン戦略」と呼ぶのに対し、誰も気づいていない新規需要を創造し、競争が存在しない状況を創り出す戦略論が「ブルー・オーシャン戦略」です。
● 2005年にハーバート大学のW・チャン・キム教授とルネ・モボルニュ教授による共著でこの理論が発表されました。その後日本版ブルー・オーシャン戦略の事例を入れた著書も日本人の手で出版されています。(最近、日経文庫で安部義彦氏が「ブルー・オーシャン戦略を読む」という本を出版されました)
● ライフネット生命は2008年に設立され、わずか3年で7万人の契約者を獲得する急成長ぶりです。その特長はこの理論のツールのひとつである「戦略キャンバス」によって、既存の国内大手生保会社との特長比較(商品や機能他)をされた図表で一目瞭然です。
● 35歳の岩瀬副社長はハーバート大学卒のMBAです。なぜイノベーションを起こし、何をめざし、何を大切にしているかなどはインタビュー記事をお読みになるとよくわかります。素晴らしい!
● 7月14日(水)のテレビ番組「カンブリア宮殿」に同社の出口社長、岩瀬副社長が出演されていました。お二人は28歳の歳の差があるコンビですが、志をひとつにされており違和感がありません。
● 岩瀬副社長(35歳)は「年齢より価値観、考え方が大事」だとおっしゃっていました。
● 岩瀬副社長の友人のグリーの田中社長はインタビューを受けて「世の中のために正しいことを自分で行動したいという意識が高い」とコメントされていました。
● なぜ生保業界を選んだのかという問いには「生活に密着したビジネスにもかかわらず、50年から60年間イノベーションが行なわれていない」と言いその結果「対面サービス料の価値に対する判断基準を提示した」と答えられています。
● 同社は若い人を対象顧客にしており、「シンプル」「わかりやすい」「安い」を実現されています。出口社長は2008年11月に保険料の内訳を公開されましたが、その理由を「若い人たちに安心して赤ちゃんを産んで欲しいから」とおっしゃっていました。
● 理念も、戦略も、手段もわかりやすくユーザーの共感を得やすいものになっています。注目すべき会社ですね。
■ 経営理論を身近なニュースで学ぶとより理解が深まります。またその応用にも考えが及ぶでしょう。理論は①その目的 ②実践の方法、ツール ③事例などを学ぶことを通じて理解し実践することが可能になります。単なる物知りで終わりたくないものです。
■ ではクイズその2に行きましょう。本誌では16のケースが紹介されていますが、ここでは残り3つを選びました。他の事例に興味のある方はぜひ本誌をご購読ください。
● Q:①から③の会社名の事例を表わすビジネス理論はA、B、Cのどれとマ
ッチするのかを選んでください。
● ①サントリー ②日産のSUV(ジューク) ③吉野家、松屋、すき家
A:ゲーム理論 B:商品ライフサイクル理論 C:イノベーター理論
- 登録日時
- 2011/07/26(火) 14:00