【7月の提案】
『家電量販店の商品力に対する私案』
■日本一の売上高を誇るヤマダ電機の山田昇会長は、家電量販ビジネスは「価格の安さ」であると言っておられます。(週間ダイヤモンド6月21日号)これだけの実績を実現されたということは、その考えが消費者に受け容れられているからでしょう。その価格の安さを実現するためのローコスト経営への投資(闘志)は素晴らしいものだと思います。
■しかし、家電量販店の成長は他社も含め「価格競争」だけが要因ではありません。出店戦略、規模拡大による「品揃えの充実」、チラシを主体とした販売促進、そして接客力などが関係しています。
■特に店舗の拡大による「品揃えへの投資」と「在庫管理&物流システムへの投資」は大きな成長要因でしょう。郊外立地型の家電量販店は700坪から1,500坪、都心繁華街立地型では3,000坪から6,000坪の店があたりまえになりました。その品揃えアイテム数は50万アイテム(都心立地型)とも言われています。(複数の新聞記事や雑誌による)
■これだけ多くの品揃えをするということは、あそこの店に行けば想定したものが何でも入手できる、あるいはいくつかの品揃えの中から選ぶ楽しみがあるというのが魅力となるでしょう。
■しかし、一消費者の立場に立つと1回の訪店(こういう言葉はありませんね。来店と言うのは店側の立場での言葉です)で購入するものは1品か数点の商品でしょう。10万点や50万点の品揃えと言われても関係ありません。自分が欲しいカテゴリーの商品がいくつあり、選択肢はいくつあるのかが重要です。このあたりに同じ量販店でも品揃えの差があります。
■品揃えは一般に「部門構成」「品種構成」「品目構成」で組み立てられます。
各企業内では大分類、中分類、小分類、少々分類などに区分けされます。この分類の切り口が各企業の商品戦略にもとづいて行われます。たとえばわかりやすい大分類ですと、ホームエレクトロニクス家電(エアコンや冷蔵庫など)オーディオ&ビジュアル家電(テレビ、DVD、音響機器)、情報・通信家電(パソコン、携帯電話)などです。
■これらをメーカー側から見ますと、家電業界、情報機器業界、通信機器業界
の3つに分かれています。また音楽ソフトや玩具なども別の業界です。主力はなんといっても、パナソニック、SONY、東芝、シャープなどの家電業界です。従って、家電量販店の品揃えはこれらの業界のパワーの影響を受けています。
それが、新製品マーケティングによる品種部門別の品揃えを実現しています。
■例えばオーディオ&ビジュアル家電を音響機器とテレビ機器関連に分けると売場では音響売場、テレビ売場になります。その主体となるのが品種別分類です。それが品種ごとにさらに分類されて区分けされます。最終的にはある最小のカテゴリーの品目数になって完結しています。
■消費者もこれに慣れていますから、品種別売場の方が買いやすいと感じます。最初の選択肢が、テレビを買おう、次にサイズは何インチにするか、あるいは液晶テレビかプラズマテレビのどちらにしょうか、そしてデザインや機能・性能、操作性などが選択肢になります。同時に価格が決定の要素になります。それを32型の液晶テレビと到達したところで、メーカーの選択になります。この時、1機種しかないのか、3択なのか4択なのか5択なのかが品揃えの妙味となります。
■各企業のバイヤーという仕事をされる方々は、担当商品分類の品揃えと価格交渉をされ値づけをされています。そして販売数量を想定して仕入れを行います。このような仕事の内容が多くの家電量販店の実情だと思います。
■ここでひとつの私案ですが、商品戦略、店舗の部門構成を考えるうえでの視点を紹介したいと思います。それは商品の特性と顧客の使用状態を想定しながら売場分類を考えるということです。管理上は品種別商品分類で良いと思いますが、営業上は新しい視点での取り組みがあってもよいのではないかということです。
■一時期、メーカー別売場分類に挑戦された企業がありました。
必ずしも成功したとはいえないのですが、勇気ある挑戦ではないでしょうか。必要性を喚起し、比較して選ぶ愉しみができれば購入決定への効果性と効率性は上がると思います。
消費不況が予測されるなか、「価格の安さへの挑戦」とともに、買いたくなるような量販店売場に進化してもらいたいものです。
■顧客との関連性のなかで考える商品の売場分類とは何か?
たとえば、大分類を生活必需品と趣向品に分けます。生活必需品とは生きていく上でなくてはならないものです。趣向品も生きていくうえで必要なものですが、その選択には各人の価値観が色濃く反映されるものと定義します。
テレビや冷蔵庫やエアコンは生活必需品ととらえます。しかしパソコンやDVDやビデオムービーや携帯電話は趣向品というように分けます。
■次に商品を完結型商品と発展型商品に分けます。完結型とはその商品単体で目的が達せられるものです。冷蔵庫やエアコンはそれにあたります。一方発展型商品はパソコン、音響機器、ビデオムービー、ホームシアターなどです。
■完結型商品は一度購入されると次回購入まではおよそ耐用年数を要します。しかし発展型商品は、購入後に発展させるプログラムいかんによって購入商品が拡がっていきます。お客様が使いこなし、成長されることで購入商品の買換えサイクルが早くなり、消耗品や関連商品が発生してきます。都心型の大型家電量販店の部門構成はこの発展型商品とその関連商品、消耗品にウエイトが置かれていることがわかります。
■次の視点は一家における所有台数の推定です。一家に1台の商品といえば同じ生活必需品でも冷蔵庫や洗濯機、炊飯器などです。しかしエアコンやテレビは複数台数所有です。発展型商品でもビデオムービーやパソコンは1台でしょうが、音響機器やデジカメやゲーム機は複数台数所有の場合が多いでしょう。
■これらの視点に加えて耐用年数、買換えサイクルの長短と商品単価を考えて商品の部門構成を考えるのが戦略です。同時に商圏の顧客特性を年齢や職業だけでなく、どのような生活スタイルであるかを想定して部門構成を考えるのも重要ではないでしょうか?
■そして、商品力を価格とこれらの分類の仕方の組合せによって組み立てます。
消費者の購入の最小単位であるカテゴリーをいくつにするかが、豊富な品揃えの重要なポイントになります。小分類もしくは少々分類の単位になるでしょう。大型店はこの種類が多いから結果的に品目数が増えるのでなければなりません。
■さらに、同一カテゴリーでの比較品目を商品ごとにいくつに設定するのが効果的かつ効率的なのかを考えていく必要があります。全メーカーを揃えると品目数は増えますが、同じ用途や機能・性能なのでかえって選びにくくなります。ここはバイヤーの腕のみせどころでしょう。
■他店よりいくら安いかということも重要な課題ですが、同時に品揃えの進化と売場での表現力の向上が求められると思います。表現力とは「販売のストーリー化3つの視点」です。これらについては多くの家電量販店で研究され実施されていますが、部分的であることが多いですね。これについてはまたの機会に提案いたします。 <完>
- 登録日時
- 2008/07/17(木) 12:00