【今月読んだ本】
『会社は変われる!ドコモ1000日の挑戦』と『会社がなぜ消滅したか』前編
■ 本書はコカコーラ・ジャパン会長の魚谷雅彦氏が2007年7月から2010年6月までのドコモにおける3ヵ年に亘る「経営改革ドキュメント」とそこから学べる「改革ノウハウ」をまとめられた経営改革のためのテキストです。
● 6月に発売され一気に読みました。そして7月末のドコモ関連への方々へのクローズドメルマガで推薦したのですが、300ページ弱のこの本、「読んでみましょう」では伝わらないのではという気がしてきました。
● そこで8月の上旬に五日間ほどかけて、著者が「マーケティングEYE」として本書にちりばめられた言葉を拾い出し、要約してみました。もともと体系的に書かれた本なので要約がしやすいのです。(A4で24枚にしました)
● ビジネス書の構成には大きく分けて本書のように体系的に書かれたものと、いくつかの関連する要素を羅列したものがあります。本を読んで実践へのイメージが湧くのは前者です。
●もうひとつ本書の特長は、実践をベースにビジネス理論で裏打ちされているところです。マスコミ情報と理論の組合せでビジネス理論を紹介しようという本と一線を画しています。
● 但し、本書のように大企業を対象としているものはそのまま中小業に適用できるわけではありません。またオーナー企業とやとわれ社長の企業でも違ってきます。本書を読んで活用しようとすれば、「改革の要素」と「流れ」と「心構え」を学び取るしかないのではないかと思います。
● またもっとも参考になる対象は経営者でしょう。それ以外の立場の方は部分的に参考になるヒントを学ばれればよいと思います。但し、ドコモの関係の方、特にプロジェクトに参画された方は、改革を継続していくうえでのテキストになるでしょう。ぜひ熟読されるべきです。
■ 今回この本の要約を書いていて思い出した本があります。それは10年前に出版された文庫本(新潮文庫)「会社がなぜ消滅したか」読売新聞社会部著です。題材はあのかつての大企業、山一證券です。
● 魚谷氏の著書を要約していてある箇所でこの本を思い出しました。その箇所とは189P、『ドコモには「こうでなければならない」というさまざまな思い込みや縛りがあちこちにはびこっているように見えました。悪く言えば、官僚体質、大企業病がはじまっていた。ということです。』
●「会社はなぜ消滅したか」は、自分の属する会社が大企業病に罹っているのではないか、と思われる方にはぜひ読んでいただくと良いのですが、そうでない方にも参考になる印象深い箇所があります。
● それは、現・巨人軍球団社長の清武英利氏が書かれたあとがき(文庫版)と文庫本の解説を書かれているノンフィクション作家の佐野眞一氏の文章です。以下一部を引用して掲載しておきます。
● まず清武氏の文庫本のあとがきから・・・(引用します)
― 略 ― 外国人の友人から教わった『人間のBig Rock』という話を思い出した。
◎ ある大学で、こんな授業があったという。
「クイズの時間だ」教授はそう言って、大きな壺を取り出し教壇に置いた。その壺に、彼は1つ1つ岩を詰めた。壺が一杯になるまで岩を詰めて、彼は学生に聞いた。「この壺は満杯か?」
◎ 授業中の学生は「はい」と答えた。
「本当に?」そう言いながら教授は、教壇の下からバケツ一杯の砂利を取り出した。その砂利を壺の中に流し込み、壺をゆすりながら、岩と岩の間を砂利で埋めていく。そしてもう一度聞いた。「この壺は満杯か?」
◎ 学生達は答えられない。1人の生徒が「たぶん違うだろう」と答えた。
教授は「そうだ」と笑い、今度は教壇の陰から砂の入ったバケツを取り出した。それを岩と砂利の隙間に流し込んだ後、三度目の質問を投げかけた。
「この壺はこれでいっぱいになったか?」
◎ 学生は声を揃えて「いや」と答えた。教授は水差しを取り出し、壺の縁までなみなみと注いだ。彼は学生に最後の質問を投げかける。
「僕が何を言いたいのかわかるだろうか」
◎ 1人の学生が手を挙げた。「どんなにスケジュールが厳しい時でも、最大限の努力をすれば、いつでも予定を詰め込むことは可能だ、という事です」
「それは違う」と教授は言った。
◎「重要なポイントはそこではないんだよ。この例が私たちに示してくれる真実は、大きな岩を先に入れない限り、それが入る余地は、その後二度とない、と言うことなんだ」
◎ 君達の人生にとって、『大きな岩』とは何だろう、と教授は話し始める。それは、仕事であったり、志であったり、愛する人であったり、家族であったり、自分の夢であったり ― ここで言う『大きな岩』とは、君達にとって一番大事なものだ。
◎ それを最初に壺の中に入れなさい。さもないと、君達はそれを永遠に失うことになる。もし君達が小さな砂利や砂や、つまり自分にとって重要性の低いものから自分の壺を満たしていけば、君達の人生は重要ではない「何か」に満たされたものになるだろう。
◎ そして、大きな岩、つまり自分にとって一番大事なものに割く時間を失い、その結果、それ自体を失うだろう。
◎ 一体、山一の役員が、彼らの壺に埋めていたものは何だったのか。それは途中ですり替わったのだろうか?-以下略
全文は本書を参照ください。
● いい例え話です。私はすり替えてはいませんが、壺の中に入れそこなったものがあるな。こういう話を知っていればと、思わずにはいられません。まだ若い人にはぜひ参考にしていただき、考えるきっかけにしてもらいたいですね。
<前編完:後編に続く>
- 登録日時
- 2011/08/08(月) 11:18