▲今年も割いた我が家の「月下美人」。夜中に一夜だけ咲く、姿も香りも美しい花です。
【今月読んだ本】
『会社は変われる!ドコモ1000日の挑戦』と『会社がなぜ消滅したか』後編
● 次に佐野眞一氏の解説から。(引用します)
略 ― この迫真のドキュメントを読み終わって、情けなかったのは、単に涙もろい社長ひとりではなく、会社全体、社員ひとりひとりだったということを、背筋が寒くなる思いで感じとった。このままでは間違いなく倒産するだろう、と末端社員にいたるまで日々怯えながら、誰もが何をなす術もなくただただ手を拱いていたのが、四大証券の1つといわれた山一證券のいつわらざる実態だった。
◎ 私はこの本を読みながら「怯懦(きょうだ)」という言葉を何度も思い浮かべた。オレひとりぐらい多少まずいことをやっても大丈夫だろう、私のようなペーペーのOLがちょっとしたミスをしても大勢に影響はないでしょう。
◆(「怯懦(きょうだ)」とは辞書では「臆病で意気地がないこと」と書かれています)-筆者調べ
◎ 悪ともいえないこうした日常の瑣末な積み重ねが、やがて巨大なブラックボックスとなって会社をのみつくし、社員ひとりひとりに取り返しのつかない末路を用意する。
◎ ここに描かれているのは、組織というものが持つ本質的な恐ろしさである。個人ならば自分の病変を肉体の不調で感じることができる。しかし、組織の病変はそれほど簡単に察知することができない。
◎ なぜなら組織は個人ではなく、個人が持つ卑劣さや尊大さなどの人間的な弱さが知らず知らず堆積し、個人ではどうにも手に負えない強固な無責任体制を自動的かつ幾何級数的に増殖してしまうからである。
◎ -中略-(かつての中内ダイエーについて記述)― 彼らは個人で会えばすこぶる善良な人間ばかりだった。その善良な人間が寄り集まると、平気で不正と背信を犯してしまう。そのことが私を絶望的な気持ちにさせた。
◎ 繰り返すが、個人の邪な心が組織に病原菌をまき散らす例はめったにあるものではない。善良にみえる人間の心に巣くった自己保身や自己弁護の累積が、組織を内部から腐らせていくのである。― 後略
(全文は本書を参照してください)
● これらの文章を読み返していて、ドコモの社員たちは幸運だと思いました。改革を決意された中村前社長、そして魚谷氏という逸材に出会い、その力を取り入れたこと、あるいは魚谷氏に呼応して立ち上がったプロジェクトメンバーとそれに続く社員の方々の素直さと奮闘、・・・。
● しかし、改革は3年経ったから終わりではありません。本書でも述べられているように環境の変化、競合の変化、によりお客様のこころは移ろいで行きます。一度つかんだお客様との「絆」を強固なものにするには、つねに「お客様起点」で発想してマーケティングしていかねばならないでしょう。
● それをドコモが持つ「強み」につなげ、活かすことで、そこから生み出される価値はさらにお客様を惹きつけていくものと思います。
● 魚谷氏がエピローグに書かれた言葉、「ドコモはなぜ変われたのか?」より3つの要因分析が本書の的確なまとめでしょう。
①経営陣が自ら真剣に、危機意識を持って取り組み、行動を起こしたこと。
②社員のなかにすでに強い危機意識が存在していたこと。
③そして魚谷氏が、ハンズオンの姿勢で、現場にどっぷり漬かって、みんなといっしょにやろう、と取り組んだことです。
● このうち③は無くなったわけです。残った人々がかつて政治の世界で小泉・竹中改革(すべて良しとは言いませんが)を推進するより元に戻そうという動きをして、混迷と停滞、そして後退を招いたようにならないことを祈ります。
<完>
- 登録日時
- 2011/08/15(月) 13:33