▲上は11月上旬の会津若松城での「いちょう」、下は12月上旬の京都の紅葉。
【今月のトピックス①】
テレビドラマ『家政婦のミタ』を見た。
■ 今秋のテレビドラマではダントツの視聴率を記録している同作品。5週連続20%超のようです。先週は29.6%の今年最高を記録しました。今週は2%ほど下がっていましたね。私も多くの視聴者と同じようにこの一風変わったドラマを毎回楽しんでいます。
● ネットで情報が沢山流れているようなので、私はちょっと違った視点でこのドラマの魅力を語ってみます。このドラマの魅力の大部分は、遊川和彦氏の脚本と主演の松島菜々子さんにあると思います。その魅力を探るには、まずは遊川氏へのインタビュー記事(オリコンニュースより)を見てみましょう。
● 今作のドラマ制作あたり「1話完結にして、毎回違う家庭をめぐる方が話が盛り上がるという意見もあったけど、僕は1つの家族を見つめて掘り下げることは譲らなかった」という。
● その理由として「ドラマは“人間を描く”に尽きる。だったら、各話ごとに家族を変えていくと、家族の問題点や人間の闇を真剣に描ききることはできない。1つの家族に焦点を当て、2011年の現代だからこそ描けるテーマを掘り下げたかった」と振り返る。
● 今年は3月に東日本大地震があり、エンターテイナーとしてどんなドラマを送り出すのかを考えさせられる1年でもあったという遊川氏。そんな状況の中で、冷血家政婦を主人公とする事に周囲の反対はなかったのだろうか? 「最後には良い事言いますから! って、吹きましたね」と笑う遊川氏だが、「撮影が進むにつれて気づいたんですけど、この作品は『死者に対して、我々生きている側の人間がこれから抱えていく義務を描く』という一面を持っています。阿須田家の母親の自殺から始まって、回を重ねていくうちに、それぞれ失った人への関わりが見えてくる」と、作品の核となるテーマを明かす。
●「震災があって、これからみんなどうするのか? 死者に対して僕らは心の折り合いをつけ、先に進まなければいけない。そこで、説得力を持つキャラクターとして自分たちよりも遥かに深い悲しみと喪失感を持っている三田が必要だった」と三田灯(みたあかり)の誕生秘話を明かす。
●「心が折れている時に“もういいよ、辞めちゃえ”って言われた方が楽な時もあるでしょ? 人間は弱いから、優しい言葉は疑うけど、冷たい言葉はすぐ信じちゃう。でも、その言葉を言う資格があるのは、誰よりも深い喪失感を背負ってそれでも歩いてきた人間だけなんです」。
● 終盤へのラストスパートとなる9話以降は「阿須田家の終息を含め、三田にはこんな過去があったのか!? なんて事を最後の最後まで引っ張るようなことはしません(笑)。終息のその後の生き方を描くことが大事だから。三田という人間、それに対する阿須田家の人間のかかわりを最後は描きます」と断言。
●“承知しました”と、どんな命令にも従い、初回から仏壇を燃やす、次女を誘拐する、または長女を刺し殺そうとするなど、その行動や胸の内が全く読めない三田と、トラブルだらけの阿須田家が向かう先にあるものは? ラストへ向けさらなるスピードアップが期待できそうだ。(以上、引用)
■ うーん、深く考えているんですね。私はこのドラマを途中から阿須田家の人々の再生を通して、三田灯という女性の再生の物語だと読んでいました。なぜなら毎回、阿須田家の人々が1人ずつ主人公になってそれぞれが抱える問題を解決してきたからです。
● 第9話を終えて残るは相武紗季さん演じる親戚の「うららちゃん」と「三田灯」だけです。残すはあと2回ですが、どうやら9話からは「三田灯」に焦点が当てられているようです。うららちゃんは「お兄さんが好きかも」と告白するだけでお役御免かもしれませんね。(いや、意外な展開があるかもしれません)
● あと2回で松島菜々子さん演じる「三田灯」はどのように再生するのかが興味のポイントのようです。風邪薬のCMのような素敵な笑顔に戻れるのでしょうか?戻すとしたらどのような出来事によって為されるのか興味津々です。
● また三田灯の再生に阿須田家の人々がどのように関わり、それを通してどのように自分たちも新たな生き方を見出していくのか、特に長谷川博己が演じるお父さんはまだ頼りないところがありますからね。
● このドラマの魅力は遊川氏の脚本にあると指摘しました。それは人が変化するのを言葉だけでなく行動で表現しているからです。三田は業務命令には「承知しました」の言葉と同時に、即行動します。そしてその任務をストップが掛からない限りやり遂げます。
●この「即行動、やり遂げる」というのはビジネスパーソンにとっては重要な要素です。うららちゃんのように即行動して失敗ばかり重ねるようでは、仕事の世界では失格ですからね。このあたりの対比も面白いですね。完璧に仕事をやり遂げ成果につなげる三田は見習いたいものです。但し、反社会的な行動は慎むべきですが。
● 三田の行動と共にその言葉にも魅力が潜んでいます。三田の発する言葉には「説教くさい」ものはありません。毎回1回はインタビューにあるように最後に良いことを言うのですが、上から目線の説教ではありません。
● 相手の気持ちを代弁したり、本人に気づかせるようなことを言います。それにより、各人が何かに気づき、自己の気持ちを開示して自ら立ち直って行くように仕向けています。
● それは三田灯が意識的にそうしているのではないでしょう。ものすごい喪失感から自己を捨ててしまっているからではないでしょうか?三田が自己主張をするのは「自分の過去は探らないで欲しい」ということだけです。
● 自己を捨てた場合、普通は自分にも他人にも関心がなくなるのですが、遊川氏は三田灯に関わる相手に意識を向けさせるようにしています。ですから相手にとって最もふさわしい言葉を発し、気づかせることができるのでしょう。
● 他の登場人物は自己主張の方が強いセリフが多いのです。自分のことをわかってほしい、自分はこうして欲しい、こうしたい、のオンパレードです。それはカーネギーが言う「自己重要感」を満たしたいという人間の欲求を現していると思います。それが普通だからです。
● 第9話では阿須田家の子供たちが三田灯を立ち直らせようと努力しますが、その言葉は「大丈夫だよ」とか「頑張れ」とかではなく、「あなたのために私はこう思う」という気持ちを伝えます。それが三田のこころを少しずつ動かしているのではないでしょうか?
● ここでも遊川氏は相手を操作しようというような言葉は発しさせません。自らが主体的に気づくような仕掛けをしているのではないでしょうか。このようなセリフは対人関係では重要だと思います。
● また前回(第8話)で三田は自分の「哀しみ」の感情を発露しました。今回(第9話)は、「もういい加減にしてください!」と初めて「怒り」の感情を見せました。人間の感情の種類で言うと、「喜怒哀楽」のうち2つは見せましたね。残るは「喜び」と「楽しさ」です。今後これらをこのドラマの中で見せてくれるのでしょうか?
● 私は心理学の専門家ではありませんが、このような視点でこのドラマを見て愉しんでいます。
● もう一点は主演の松島菜々子さんの魅力です。彼女のきりっとした顔と製薬会社のCMに出てくる笑顔の両方が私には魅力的です。このギャップも今回のドラマで視聴者の意表をついているのではないでしょうか?ただあの足の長さには引いてしまいますが、上半身が映った時は最高です。(笑)
● また三田のエプロン姿が大好きです。濃紺が似合います。他の番組でやっていましたが、あのエプロンの模様は三田を縛っているように見えます。彼女が自分の過去に縛られているというのを象徴しているそうです。その呪縛から解き放されたとき彼女はどのような模様のエプロン姿になるのでしょうか?そして笑顔は見せるのでしょうか?興味深いところです。
● ドラマはあと2回ですが楽しみですね。最終回を見終わったらまた感想を書きましょう。では(o・・o)
- 登録日時
- 2011/12/12(月) 14:20