【2012年2月の提案①】
売上高ランキングの売場での効用とは?
● 私が担当する売場づくり研修のワークの中で、受講生の皆さんは「売上高ランキングの表示」は良いことだ、素晴らしい試みだという評価をされることが多々あります。
● そんな時それはどうしてですか?という理由や根拠を尋ねると、明快な答えが返ってこないことが多いのです。たまに「お客様が参考にされます」という返事がありますが、それほど多くの方ではありません。
● どうして皆さんは、売上高ランキング表示は良いことだというふうに思われているのでしょうか?おそらくお客様の買い物の役に立つと思っておられるのでしょうが・・・。
● 私のメモ帳によると、昨年11月12日のテレビ番組で「日本人のランキング好き」について外人の方々が集まって話しておられた記録がありました。そこでは日本人の86%の人が買い物をする際にランキングを気にする。すなわちみんなが買うものを参考にして選ぶとありました。
● 残りの14%の方々は気にしない、自分の独自性を尊重するとあります。外人の方はその現象が不思議だとおっしゃっていたような記憶があります。
● 日本人がランキングを気にする理由に、商品の数が多いためどれを選べばよいかわからない、選択基準がわからないから参考にするのだということも書いてありました。
● 注釈として東急ハンズさんの担当者の声があり、売れ筋を細かくユニークな切り口で表現することで需要の喚起につながるとあります。ユニークとはお客様が知りたいカテゴリーを考え出すことが重要ともあります。
● どうやら理由のひとつは「日本人のランキング好き」ということが広く伝わっており、新聞、雑誌、ネットなどの媒体で「よくランキング表示がされている」ことの影響があるのではないでしょうか?
● 私は研修でこの「売上高ランキングの表示」という手段について、ねらいは何なのですかという問いをいたします。つまり『目的の確認』です。目的の確認をいたしますと、先に述べたように答えは曖昧になります。
●「手段は目的に従う」というのが原則です。このことがわかっていないと、どこかで誰かがやった手段を真似ようとする行動につながります。私が経験する研修の業種は携帯電話ショップが多いのですが、この目的が曖昧な手段の選択が多々見受けられます。
●「売上高ランキング」は東急ハンズさんの事例のように、お客様が必要性に気づくような切り口の提示や商品を選択するときの手助けにならないといけないのではないでしょうか。これが目的のはずです。
● また売上高ランキングが有効な商品とそうでない商品があると思います。一般的にCDや映画のDVD、食べ物、飲食店、温泉、おみやげ品など種類が多くて商品選択に困るものに適しているのではないかと思います。
● では携帯電話のようなハードグッズで、趣味嗜好性が高い商品には適しているのでしょうか?わたしは「NO」という答えをいたします。
● その理由は、その店の売上高ランキングを参考に、私の場合はよく売れているものを購入しようという気にはならないからです。なぜならそこには売れている理由も、どのような方に適しているかが表示されていないからです。
● 他の人々が参考にしているのかどうかという調査をしたわけではないので私の独断です。何を買えば良いかがわからなくて困っておられる方は参考にはされる場合があるでしょうが、ハードグッズではそんなに影響を受けないと思います。
● なぜなら私たちは「理由もわからないもの」を信ずることは少ないと思うからです。ましてや高額のお金を出して購入し3~4年は使用します。しかも自分の好みが影響する趣味嗜好品ならなおさらだというのが私の見解の根拠です。
● では売場においてどのようにすれば「売上高ランキング」を有効なものにできるのでしょうか、その要点は・・・以下のようなものだという仮説を持っています。
● ①売れている理由を書くこと。(お客様が購入される理由)
②どういうことを求めている人におススメでその理由が何なのかを書く
こと。
この2つのいずれかが書かれていないと、他の方が必要性に確信を持つなり、選ぶ手助けにはならないからです。特にハードグッズでは必要でしょう。そしてこれは、お客様との接客でしか情報収集ができないのです。販売スタッフに意識して情報収集をしてもらわないと実現がむつかしいのです。
③以上のことができない場合は、売れ筋商品の特長を3つ以内で記載することです。しかもそれはカタログから転載したようなものではなく、特長を【お客様にとってのメリットに置換えたコピー】でないと役にたちません。
④また単に販売数量の多い順ではなく、男性&女性や学生さん&ビジネスパーソン別や初めての方&ワンランク上を目指したい方&マニアの方というお客様の状態を想定した区分や、友達との交流やエンタメが中心で使うとかプライベートや仕事の両刀使いなど用途目的別などに分けることです。
東急ハンズの方がおっしゃっている必要性に気づく切り口の発見が重要だと思います。
⑤そしてランクはベスト3までが限界でしょう。ベスト5やベスト10では下位の商品を選択する方は少ないからです。見る時も3つまでが目につきやすく抵抗感が少ないからです。
● このような条件を満たすならば売場での売上高ランキングも効果があるの
ではないでしょうか?
ちなみにこのランキング表示とは社会心理学でいわれるところの社会的証明の
理論を適用しています。
● 社会的証明の理論とは、人は他の多くの人が賛同するものと自分が良いと
思ったものが一致していると、そこに価値を見出すという考え方によります。
そしてその数が多ければ多いほどそれは正しいものとみなされるということで
す。特に買い物において選択に困るほどの知識しか持ち合わせていないと、
このようなランキング表示に頼るようになります。
● またランキングをあるカテゴリーで表示するということは、フレーミング効
果と言い、ある枠組みにお客様を誘導し商品選択をしやすくするという効果が
あります。東急ハンズさんの方の言葉はそれをねらいにされているのでしょう。
● 私たちが選択する手段には必ず目的(ねらい)があるということを意識して、
それにふさわしい手段を創意工夫しましょう!
そしてその効果を確かめる習慣を持つのが賢明な仕事の仕方です。<完>
- 登録日時
- 2012/02/07(火) 11:37