▲桜草 桜の花は神戸でもまもなく満開か。
【4月のトピックス①】
実直なり鶴竜力三郎 大関に昇進する
● 2年ぶり開催となった大相撲春場所、見所は大関把瑠都の優勝と横綱昇進が成るかということでしたが、その夢はあっけなく粉砕。優勝は22回目となる横綱白鵬でした。その白鵬と優勝決定戦を争ったのがダークホース関脇鶴竜でした。
● 鶴竜は関脇で直近2場所が、10勝、10勝で春場所13勝なら大関昇進があり得ると見なされていました。ですが大方の予想は(私も含めて)それは無理だろう、11番勝って来場所につなげればという見方でした。
● ところが結果はご存知のとおり、横綱白鵬に2場所連続勝って、13勝2敗堂々の成績で大関昇進をモノにしました。見事です。琴奨菊、稀勢の里と続け様に大関が誕生して来場所は史上初の6大関の誕生です。
● 鶴竜はモンゴル出身で、朝青龍、白鵬、日馬富士に次ぐ4人目の大関誕生です。鶴竜が他の3人とは違うのがその一族にモンゴル相撲の達人が居ないことです。父親は大学教授、16歳の時に65キロの体ながらテレビで同国出身の旭鷲山、旭天鵬の活躍を見て相撲の世界に飛び込む決意をしたそうです。
● モンゴルでの新弟子審査に落ちたものの諦めきれず、父親のつてで相撲部屋に手紙を書いてアピールしたそうです。井筒部屋(元関脇逆鉾が親方)に入門を許されました。
● 当初は期待されていなかった(親方は体が小さいので床山にでもしようかと思ったそうです)が、それから10年、その志を胸に秘めつつコツコツ努力する情熱がついに実を結びました。偉いですね。
● 私は、その鶴竜の大関昇進にあたっての伝達式の口上に注目しました。3月28日、大阪・天王寺区の法岩寺での伝達式で使者を迎えた鶴竜は「謹んでお受けいたします。これからも稽古に精進し、【お客様に喜んでもらえるような相撲がとれるよう努力します。】本日はありがとうございました」と口上を述べたそうです。
● 今までの先輩大関の多くは四文字熟語(琴奨菊=万里一空、日馬富士=全身全霊など)を織り交ぜ、自身の今後の決意を述べた口上が主流でした。全てを記憶しているわけではないのですが、【お客様に喜んでもらえる】というマーケティングの基本を述べたのは鶴竜が初めてではないでしょうか?
● 今までの大関と鶴竜の大きな違いは、意識が自分以外の対象にあるということです。殆どの大関は自分に意識を向けた決意表明です。それがあたりまえでしたが、鶴竜はお客様に喜んでもらえる相撲をとるという日本相撲協会のビジョンでしょうか理念でしょうか、その実践を自分の決意にしたところが違うと思うのです。
● 千秋楽のNHKサンデースポーツのインタビューで鶴竜は、場所中は勝っても負けても無表情を貫くのはなぜかと問われたとき、「相手を敬う。それが日本の習わしだから」と答えて、同席した白鵬から「この大関は将来が楽しみですね」と好意的な評価を受けていました。
● 大相撲の伝統と精神を大切にするという親方の教えを実践しているのでしょうが、それを受け容れ実直に実践している新大関に感心をしました。自分にしか意識が向かないより、対象となる相手を意識した言動は人間としての器が大きくなる条件ではないでしょうか。
● そういうものを土台に持っている鶴竜の前途は、勝負の世界では必ずしも洋々たるものだと断定できませんが、私は支持をします。
● 風貌には似つかわしくない「力三郎」という名は井筒親方の弟、元関脇寺尾の錣山親方から譲られたそうです。やがてその名にふさわしい力士になってくれるでしょう。逆鉾、寺尾兄弟よりもっとも親父さんの元関脇、故・鶴ヶ嶺に雰囲気が似ている鶴竜、スピードと技と心に磨きをかけて精進してもらいたいものです。頑張れ鶴竜関!<完>
- 登録日時
- 2012/04/04(水) 11:55