【今月読んだ本】
ハーバート・ビジネス・レビュー 2012年7月号より
JCペニー・カンパニーCEO ロン・ジョンソン氏へのインタビュー
『アップルストア成功の教訓』
● この雑誌「H・B・R(略称)」はビジネス界のトップマネジメント層や経営コンサルタントが主な読者のようです。私は偶にしか読みませんので熱心な読者ではありません。今号は本誌には珍しく「小売業は復活できるか」という特集だったので購読しました。
● 実は昨年12月に、流通業界の指導者の先達である経営コンサルタントの島田陽介先生のメルマガで本号を紹介されていました。その時に書店に走ったのですが見当たりません。おかしいなと思っていましたが、今回その謎が解けました。島田先生は英語版を読んでおられたのです。日本語版は半年遅れで発売されたことに気づきました。
● それはさておき、本誌で役に立つと思った記事が島田先生もご推薦の今回の記事です。ロン・ジョンソン氏はアメリカ流通業のカリスマだそうです。このインタビューは昨年11月に、成功したアップルストアのCEOから老舗百貨店のJCペニーのCEOに転身した時に話されたものです。
● 日本の小売業に携わる人々にとっても役立つ内容だと思いますので、一部抜粋しながら紹介し感想を述べたいと思います。構成はインタビュアーの質問にジョンソン氏が答えるという内容ですが、有料雑誌なので答えだけを書くとか、質問だけを書いています。興味が湧かれた方で未読の方はぜひ購入してください。(近くの書店にあれば立ち読みもできますね)
● 今号の特集「小売業は復活できるか」は米国の現状にもとづいています。ネットビジネスが発達し、実店舗の小売業は衰退しつつあるという問題意識のもとに構成されています。
● アップルストアは2000年に故スティーブ・ジョブスの依頼を受けてジョンソン氏が立ち上げた実店舗です。それからの10年にどのような考え方で成功に導いたかが語られています。その考え方を吸収し自問自答するのに役立てていただくと良いと思います。以下記事の抜粋と感想です。
● ジョンソン氏:「小売店は、単に商品の売買を行うことのみを目的としてとらえてはいけない。人々の生活が豊かになるようサポートすべきなのです。」
●「ほとんどの小売業は【いかにして数多く売るか】という取引重視の考え方をします。それを、価値創造重視の考え方に移行しようとするには、根本的な見直しを必要とします。」
●「アップルストアは、従来のモデルを微調整して成功したわけではありません。私たちは、何もかも再構築したのです。【試してから買う】というコンセプト1つ取っても、徹底的に考え直しました。」
● 氏は小売業には低価格重視のビジネスと価値創造重視の2つがあることを認識したうえで、後者の立場を取ろうという考え方です。そのためには従来の延長線上に発想するのではなく、根本から見直し再構築しなければならないというスタンスで発想されています。
● そのために、『事業の目的』や個々の要素の『コンセプト』を重視して徹底的に考えると言っておられます。日本でも成功している企業の中には同じような考えでやっておられますね。小売業では【セブンイレブン】や【ユニクロ】など成長企業のほとんどが満たしている条件でしょう。
● 今年からJCペニーのCEOに就任するにあたってジョンソン氏は質問者に以下のような答えを示しています。
● ジョンソン氏:「百貨店の問題点は、規模や立地、または物理的な設備などではなく、イマジネーションの欠如にあります。つまり、商品の取り揃え、店内環境の整備、顧客へのアピール方法、デジタルの未来の受け入れ方といった課題に対する想像力のなさです」
● 百貨店におけるソフトウェアの重要性について言及していますが、これは日本の方が優れているのではないかと思います。私は米国の現場を見たわけでないのですが、これが現実ならジョンソン氏はJCペニーでも成功するのではないかと思いますね。
● ジョンソン氏はこれから10年の小売業のリーダーは、バーチャルな体験と実際の体験を最もうまく統合したところになるだろうと予言しています。その内容について問われると、それは秘密だと言って明かしていません。
● その代わりアップルストアでの成功のひとつであるジーニアス(天才)バーについて語ってくれています。小売業ではデータだけでなく【直感】を信頼することが大事だと述べ、ジーニアス・バーのコンセプトについて語っています。
● ジョンソン氏:「この時の直感は単に【コンピューターを修理したい人々に対する最大限のサポートをどのように提供するか】ではなく、【<iPod>の問題で損なわれたおそれのある顧客との関係をどのように修復し向上させるのか】というものでした」
●「アップルはコンピュータービジネスと同じくらい、顧客との関係性ビジネスにも注目しています。そして、本当の意味での関係を築くためには、実際に顔を突き合わせるしかありません。それが人間というものです。小売店のあるべき姿の本質はそこにあります。人との関係を深めるということです。」
● 決して難しいこと言っているのではありません。当たり前のことです。ですがその考え方を具体的なカタチにして実行することは容易ではないでしょう。そこに小売業(店)について、日米に共通する課題があるようです。
● 最後にインタビュアーの質問を2つ書いておきます。それに対してジョンソン氏がどのように答えたかは本誌を参照してください。
● インタビュアー:「私が同業者なら、あなたが次に何をするのかを待ってから、後をすかさず追うでしょう。JCペニーでも未来を切り開くリスクを取るのですか?」
●「あなたは【デジタルエリートの神】、【小売の黒幕】、【小売業のスティーブ・ジョブス】などと呼ばれてきました。そのため、非常に高い期待を背負っています。小売業界の誰もが新たな動向を見守っているでしょう。あなたに注目しているすべての人に対して、何を言われますか?」
● この2つの質問に対するジョンソン氏の回答は秀逸です。私にとってはとても参考になりました。自分ならどうするという自問自答に役立ちます。<完>
● 次回は、同インタビュー記事に対する島田陽介先生の読後感を先生のメルマガから転載してコラムを書きます。
- 登録日時
- 2012/06/22(金) 11:18