【2012年7月の提案③】ビジネスパーソンの能力地図づくり<3>
組織開発における「ソーシャルスキル」とは?①
● 6月にビジネスパーソンのための能力地図づくりについて試論をまとめると提案いたしました。まだまだ各論は曖昧なのですが、全体の構成は以下の5つの能力大分類をもとに地図をつくるつもりです。
● その5つとは①カッツ教授の『スキル3要素理論』 ②組織開発における『ソーシャルスキル』 ③実践の価値を再認識する『行動力』 ④社会で働くための『基礎能力』 ⑤こころと体の『資質』です。
● 前回は①のカッツ教授の『スキル3要素理論』についてご紹介しました。
今回は、2つ目の組織開発における『ソーシャルスキル』を取り上げます。
● まず組織開発とは何なのか?ネットでYahoo百科を参照しますと以下のような記述がありました。
● organizational development 行動科学の知識を利用しながら、トップの管理のもとで計画的に、組織全体にわたり、組織の有効性(目的達成度)と健全性(人間の満足度)を増大させるために行う組織の変革をいう。略称OD。利用する行動科学の知識は、リーダーシップの型、動機づけ、コミュニケーションなどである。ODが必要になった理由は、組織環境(市場(しじょう)、技術など)の変動性と複雑性が増大し、硬直的組織ではそれに適応できなくなったため、有機的組織への変革が不可欠になったことにある。有機的組織とは、伸縮的構造、開放的組織風土、相互信頼の態度、支持的リーダーシップなどの特性を備えた組織である。ODの具体的手法には、感受性訓練sensitivity training(ST)、アクション・リサーチ、対決集会confrontation meeting、マネジリアル・グリッドmanagerial grid、小集団活動、目標による管理、組織動態化、能力主義人事などがある。
[ 執筆者:森本三男 ]
● ではソーシャルスキルとは何なのかをネットの組織開発の関連で調べると出てこなくて、単独の用語としての記述がありました。
●「はてなキーワード」では『対人関係をマネジメントする能力。人間関係を上手くやっていく能力』
● 大辞泉では『社会の中で自立し、主体的であるとともに他の人との強調を保って生きるために必要である、生活上の能力。社会技能。』とあります。
● これらの記述が最適、最善なのかは断定できませんが、私の経験から判断し引用させていただきました。補足すると、組織開発が当初(約30年前)焦点にしていたのは組織風土(文化)の変革であったと思います。
● その要素として組織機構、組織内の諸制度、ヒューマンスキル、そして戦略並びに課題があげられていました。ウェイトは組織内部に目を向けることが80%ぐらいはあったようです。1990年代初頭のバブル崩壊から『経営戦略』『マーケティング』『ビジネスシステム』等が重要視されてきました。したがって現在の組織開発というのは、組織内部にのみ目を向けるのではなく、市場(顧客)や競争相手との関係の中で、組織の有効性や健全度を進化させる改革だと定義づけられるでしょう。
● また非正規社員の増大により、組織の生産性が重視されコストダウンが優先する状況も増えているのではないでしょうか。そのため家族主義的な組織や生活共同体としての組織のあり方は衰退しているのではないかと推測されます。
● 私の経験では、バブル崩壊までは随分と全社運動として組織活性化の事務局を担当させていただきました。しかし残念ながら「組織開発による成功」を体験するには至りませんでした。
● 従ってここでは、組織開発について多くを語ることはいたしません。ただ個人としてコンサルタント会社の体験学習で学んだソーシャルスキルとそこから関連して学んだスキルは、その後のビジネス人生に役立ちましたのでそれを紹介していきたいと思います。
● ただ組織開発に関する書籍は多数出版されています。書名は「開発」から「変革」というのが多いようです。例えばD・A・ナドラー教授の「組織変革チャンピオン」やジョン・コッター教授の「企業変革力」などは参考になると思います。日本人では神戸大学の金井壽宏教授の著書が参考になります。
● ソーシャルスキルの意味については、今日ネットで紹介されているものと私が学んだものとは少し違うようです。ネットの表現はどちらかと言えばヒューマンスキルに近いものですね。
● 私が学んだ『ソーシャルスキル』は5つで構成されていました。この5つの分類は今日でも役に立つと考えます。その5つとは、①パーソナルスキル ②インターパーソナルスキル ③グループスキル ④インターグループスキル ⑤組織行動スキルです。
● このスキルの分類の特長は『空間軸』を想定していることです。①は自分のこと ②は1対1の状況のこと ③は小集団のチームの状況のこと ④は複数のチームを率いる状況のこと ⑤は事業部や会社を率いる状況のことというように、小→中→大と組織内の対象空間を分けて捉えていることです。
● ちなみに『スキル3要素理論』は平面的に能力を定義しています。わずかに組織の中で役割、地位が向上するにつれて3つのスキルのウェイトが変わるという『時間軸』の発想が取り入れられています。
●『時間軸』と『空間軸』は私たちが生きている状況を把握するのに適切な2大要素だと思います。
●『時間軸』の話へ少し脱線しますが、組織開発の勉強をしていた時に学んだ考え方で今でも通用すると思うことをひとつ紹介します。それは私たちがある新しい組織に属する時にこのように考えて行動すべきだというものです。
● 人間のライフステージと組織への適応を対比させた喩えです。私たちはこの世に生まれた時は赤ん坊です。赤ん坊の時代は1人で生きていけませんから他人に「依存して」生き抜きます。そのための手段は「笑顔」と「泣き声」です。この場合他人は親にあたりますからそれらが少なくても面倒を見てくれます。
● 人には新しい組織に属したとき、適応力に差があります。すんなり馴染める人と、時間がかかる人が居ます。私なんかは後者でした。ではすんなり馴染める人の能力は何なのでしょうか?
● 私は自ら働きかけ、聴く耳をもった謙虚な心の持ち主だと思います。そのうえで愛嬌があると鬼に金棒です。(笑)ここであなた自身、もしくはあなたの周りの人を思い浮かべてみてください。
●・・・・・沈思黙考。・・・・・何か他の要素が見つかりましたか?新しい環境への適応力が高いのもビジネスパーソンとしての重要な能力です。
● 次に、赤ん坊から子供になると学びの時代にはいります。教えを請うことに躊躇がない、感謝のこころを持ち、積極的に挑む。学んだことを素直にやってみる。それから自分の工夫を加える。そうやって学ぶ姿勢によって受け入れられることから始める。それが学生時代です。
● 新しい組織に属したら最初から自分の考え方ややり方を押し付けないことです。つまらない抵抗に会うか、お手並み拝見と冷ややかな対応をされることがあります。それより状況を観察するとか、教えを請うことの方が有効です。
● そして社会に出て働くようになると、仕事ができる(成果を出す)ことが求められる時代です。学びを終えたらその組織に成果で貢献することです。ビジネスパーソンにとってここが最も重要な時代です。現在の状況に置き換えるならできるだけ早くこの状態になることが求められますね。
● そこで認められ、受け入れられることで新しい組織に根付いたと言えるでしょう。そうすると周りからの協力も得やすく、協働もしやすくなるでしょう。
● 最後は「人に影響を与える時代」です。リーダーや専門家となり、自分以外の人々に良い影響を与えることが望まれます。それは仕事ができるだけでなく人間味の豊かさが求められるでしょう。
● こうして新しい組織に属した時はこの4つのライフステージに対応した動きをしたほうが、スムースに適応できるという教えです。
● 私にも経験があります。同じ組織内での転勤、転職などをした時にこの考え方を知っていたおかげで、素早い適応が苦手な私が何とかストレスを少なく生き抜けました。
● このようにビジネスパーソンとしての能力を俯瞰する時に、平面的にあるべき姿を捉えるだけではなく、『空間軸』『時間軸』で捉えられることをオススメいたします。
●『時間軸』の話から脱線してしまいましたが、『空間軸』の視点で捉えられた『ソーシャルスキル』に戻りましょう。ちょっと長くなりましたので今回はこの辺にしてこの続きはその②として次回に書きます。ではまた。<完>
- 登録日時
- 2012/07/20(金) 14:29