【2012年7月の提案④】ビジネスパーソンの能力地図づくり<4>
組織開発における「ソーシャルスキル」とは?②
『パーソナルスキル』について
● 前回の続き
◎ いよいよロンドンオリンピックの開幕ですね。北京から4年間、個人競技もチーム競技も「チームマネジメント」で準備されたものと思います。ただ発揮するのが個人競技かチーム競技かの違いだけです。関わった人々の思いが込められたいくつかの人間ドラマが展開されるでしょう。各選手が実力を発揮できることを祈ります。
●「ソーシャルスキル」の特徴は『空間軸』の視点で捉えていることでした。
それは5つの要素で構成されています。その5つとは、①パーソナルスキル(本人自身) ②インターパーソナルスキル(1対1の関係) ③グループスキル(小集団の関係) ④インターグループスキル(複数のグループ間の関係) ⑤組織行動スキル(大組織全体を対象にする場合)です。
● 自分を最小単位にして対象との距離が少しずつ大きくなっていく状況で、必要とされるスキルは違うという前提で構成されています。
● それぞれの意味を私なりの解釈でご説明していきましょう。まず①パーソナルスキルです。これは自己の現在の能力をできるだけ客観的に把握して、自分の強みや弱みがわかること。そのうえで、強みを核とした自己の能力を発揮して成果につなげる力。またその能力に磨きをかけていくことができる力。以上3つに加えて、目的や目標を自らの力で持つことができる。そして様々な経験から学び自分の地力にしていける力の2つを加えた5つをポイントにします。
● また組織開発の実習では「自己概念の拡大」という考え方が印象的でした。少し紹介しますと「パーソナリティ」は、自分の認識している自分と、認識していない自分とで個をなす。同質のものが入ってきてもそれは自己認識を増やすものではない。自己認識を増やすのは、異質のものが認識された時である。ただしこれは、これまでの自己概念と「統合」されてのはなしである。統合されずに、無条件・無抵抗に脅威に屈服していたのでは、自分というものがなくなる。
● 従来の延長線上で安穏と生きていくのではなく、積極的に新しい経験をしてみて、そこから自分の今までの価値観にとらわれず、異質なもので吸収できるものは吸収するという姿勢が自己を大きくしていくという考え方です。
● 人間が成長していく要素には、能力の幅と深さがあります。幅は知識や知恵が増えていくことですが、私はさらに自己概念の拡大が必要だと思います。これは年齢を重ねれば重ねるほど難しくなるというのが実感です。
● 一方深さとは1つ1つの能力の専門性が深まることです。それを深めるにも自己概念の拡大という考え方は役に立つでしょう。それは「専門バカ」になることを防止する手段にもなります。
●5つのポイントについて簡単に触れておきましょう。自己の能力を客観的に把握するには、診断ツールを使う。他の人の評価を受ける。自己洞察を行う。の3つの方法があります。以前にご紹介したストレングスファインダーや当社のカラータイプ診断なども診断ツールの一つです。
● 他の人の評価は、公式の人事評価だけでなく身近な人からの忌憚ないフィードバック(理由付き)を貰えれば幸せです。但し素直な心で受け入れないと話してはもらえません。
● 組織開発における行動科学の理論に基づく手法では「ジョハリの窓」の考え方による体験実習が効果的です。この方法はマーケティングにも応用できますのでぜひ勉強してください。
● 自分の「強みを活かし」それを「伸ばして成果を挙げる」についても以前に当コラムで書いています。影響を受けたのはドラッカー教授の教えです。
● 目的や目標を自ら設定して能動的に動いている人はビジネスパーソンの2割にも満たないと言われています。殆どの人は何らかの組織に属するサラリーマンですから、目的や目標は与えられてその範疇で最善を尽くすという習慣に慣らされています。
● それを否定する気はありませんが、これからの日本社会を元気にするには自ら目的を持ち、目標設定して動ける人材が必要です。それと、これができると手段・方法は適切なものを考え出すとか、選ぶことが可能になります。
● スポーツ選手や芸術家は子供の頃から目的・目標が明確ですからそれを達成する手段の実践(主に鍛錬)には、5年で約1万時間、10年で 約2万時間を費やすことに集中できます。それで初めて素質が開花し、プロレベルになる人が生まれるのです。
● 組織で働くビジネスパーソン(サラリーマン)でも同じように考えることができます。何か人生の目的、目標が持てればそれに向かって日々努力することにブレがなくなり、能力は開発されやすくなります。
● 最後に経験から学び、地力を付けていく習慣と能力が大切です。「賢者は歴史に学び愚者は経験に学ぶ」という言葉があるようですが、私は両方から学ぶのが真の賢者だと思います。そのウェイトは30対70で経験から学ぶことを推奨します。(注:ビスマルクの言葉だそうですが、本人がそのように言ったかは明確ではありません)
● 以上がパーソナルスキルの5つのポイントです。読者のみなさんも興味を持たれたならば独自で考えてみてください。
● さて、カッツ教授の「3つのスキル」の多くはパーソナルスキルに含まれるのではないでしょうか。そして多くの自己啓発書は個人に属するヒューマンスキルやコンセプチュアルスキルについて書かれたものです。私が再読している「7つの習慣」という本もこれらに属します。(著者が先日お亡くなりになったそうです。ご冥福をお祈りいたします)
● セミナーや資格講座、ノウハウ学習なども個人を対象にしたパーソナルスキル開発を目的にしたものが多いようです。
● テクニカルスキルは本で学ぶより仕事を通じて身につけていくものです。教科書があるとすればそれぞれの会社のテキスト、マニュアル、チェックリストなどがそれに当たるものです。それをもとに仕事を通じて学ぶという姿勢が重要でしょう。
● それを生きたものにするには、経験から学んだことでテキストやマニュアル、チェックリストを更新していく仕組みにすることです。パートのみなさんの現場からの提案で改訂していく「しまむら」のマニュアルなどは好例です。
● 日本には世阿弥さんが言われたように「守・破・離」という教えがあります。これも昨年7月に当コラムで書いています。ご笑覧いただければ幸いです。
要約すれば先達の教えを素直に学び、そこに自分なりの創意工夫を加え、やがて独自のものを創り上げるといことです。
● 以上でひとまずパーソナルスキルについての私の見解は終えます。書きながら考えをまとめていますのでついつい長くなってきます。私の未熟さゆえの冗長な文章になっています。以降は次回にさせていただきます。<続く>
- 登録日時
- 2012/07/27(金) 10:57