【2012年8月の提案②】ビジネスパーソンの能力地図づくり<6>
組織開発における「ソーシャルスキル」とは?④
『チームマネジメント(グループスキル)について』
● 前回の続き
●「ソーシャルスキル」の特徴は『空間軸』の視点で捉えていることでした。
それは5つの要素で構成されています。その5つとは、①パーソナルスキル(本人自身) ②インターパーソナルスキル(1対1の関係) ③グループスキル(小集団の関係) ④インターグループスキル(複数のグループ間の関係) ⑤組織行動スキル(大組織全体を対象にする場合)です。
● ここまで①と②の紹介をいたしました。今回は③のグループスキルについて話を進めましょう。グループスキルとは小集団をマネジメントするスキルのことです。私の解釈では『チームマネジメント』と表現したほうが適切だと考えています。
● ビジネス組織では、リーダー、主査、店長などの呼称の方々が1つの小集団を率いて目標達成と役割遂行に向かっています。そういう立場にある人々にとっては、リーダーシップとともに重要なスキルがチームマネジメントです。
● 私が学習した資料には、「グループの中に起こっているいろいろな動きや、解決しなければならない問題点に気づき、他のメンバーと協働して、生産的(目的にかなった、効果的)なチームを創り上げていくために貢献できる能力」とあります。
● この意味付は私のお気に入りです。上手いなと思います。チームマネジメントという言葉はこれも今から30年前くらいに、元ソニーの厚木工場長だった小林茂先生の「チームマネジメント」という著書に触れて、とても感銘して参考にしていました。今では入手困難でしょうが、とても役に立ちます。
● その後、伊櫻淑親先生(故人)の「仕事研究集団」という著書と、実際に埼玉県秩父市での公開研修を受け、その後企業内研修にお招きし薫陶を受けて大いに取り組んだものです。その概要は資料をアップしておきますのでクリックしてご覧ください。
● 今でもとても役に立つ内容です。実践をしなければその醍醐味は味わえませんが、伊櫻先生はすでにお亡くなりになっています。著書は古本で入手できると思いますので、興味が湧かれた方はぜひご一読ください。
● ビジネスパーソンとして、仕事で一番充実した時代を送れるのは小集団の長の時ではないでしょうか?私の場合はそうでした。(それ以上の組織を担った時は荷が重いと感じていました)。
● それは企業内組織の場合であれ、起業家として自立した場合であれ、メンバーと目的・目標に向かって協働している時こそ我を忘れて取り組めるからだと思います。
● そしてそこには口に出さずとも上司である自分と部下との間には信頼関係があると信じられたからです。
● ですが、後年チームマネジメントという考え方に触れたとき、そうか、もっとこうすれば良かったのにと反省させられました。リーダーとして真面目に真剣に取り組むだけでなく、部下に想いを寄せてどうすれば1人1人がイキイキと働け、それが競争だけでなく「協働」になるかというのはリーダーとして学ばなければなりません。
● 自分と部下の間に信頼関係はあると信じ込み、それで安心するのではなく、部下同士の信頼関係はどうであったか、本当にひとりひとりは充実していたのか?と反省すれば未熟だった自分が想像できます。
● チームマネジメントには2大機能があります。1つは組織内では与えられた目標の達成を任務として、その手段の開発と実行、必要な課題の解決、そのために必要な役割設定やルールを決めるなどの組織のハード面に目配りし、改善実行することです。
● 2つは、チーム内の人に対する動機付け、こころのメンテナンス、評価、能力開発、お互いの協働状態などの組織のソフト面です。
● ここでもパーソナルスキル、インターパーソナルスキルを駆使しなければなりません。加えてチームマネジメントとして「会合、ミーティング、会議」という複数の部下を巻き込んでの「場の運営」スキルが求められます。
● 近年、これを上手にやる手法として「ファシリテーション」がクローズアップされています。上意下達の一方通行や過去の報告だけでそこから何らかの課題を見つけ、「改善・強化・付加」という対策を行わない会議などが問題視されて生まれてきたものです。
● 先にあげた「チームマネジメント」や「仕事研究集団」の中にもこの「会合、ミーティング、会議」の本質的な問題点と処方箋が書かれています。目からウロコは間違いないと思います。
● 最近の著書では山田豊著「会議で事件を起こせ」新潮新書(2006年)がとても参考になります。議論の進め方の基本として①導入 ②情報共有 ③課題設定 ④発散 ⑤収束 ⑥意思決定(合意)⑦行動化のパターンが示され、90分でできる会議を詳しく教えてくれます。ぜひ参考にしてください。
● 私の経験からのチームマネジメントの教訓は次のとおりです。
①リーダーには必要な課題(仕事)を見つける力が必要である。
②すぐに対策を考えないでできるだけ実態を把握してから考える。
③われわれは先入観の虜である。自分の見たいように実態を把握するクセがある。
④事実と意見を聞き分けよ。意見なら理由を問え。
⑤会議の枠組みを示しコントロールせよ。アイデアの拡散の時はそのことに集中する。収束の時もまたそのことに集中する。
⑥安易に多数決をとらない。もつれたら最後は自分が決断して理由をのべる。
⑦実行体制を確立する。納期を明確にしてシビアに守る。
⑧反省から学ぶ習慣を持つ。後悔は公式の場には持ち込まない。
⑨こころのメンテナンスは1対1で行う。
⑩緩やかな競争を持ち込み、(男女で変える)賞賛は大げさにする。
● 最後に故伊櫻先生の言葉から、「頑張るから成果が上がるのではない、成果が上がるから頑張れる」。人はそんなに強くはないという趣旨からのご発言だったと思います。チームマネジメントにおけるリーダーは部下に任せっぱなしでやれるものではありません。「成果が上がるように」マネジメントするのが役割です。
● 先ほどオリンピックの最後の競技、男女400メートルメドレーリレーを見ました。4人のチームワークが結実して、男子=銀メダル、女子=銅メダルを獲得しました。4人がそれぞれの力を存分に発揮し、予想以上の成果をあげたことを日本人として共に喜び、賞賛したいと思います。
● 水泳競技の日本代表27人がチームだと宣言し、一体となって取り組んだ選手たちに拍手、喝采です。入江選手の言葉は別項で取り上げたいと思います。
1人1人が力を発揮できるよう、チームで戦うという考え方は、ビジネスパーソンにも必要なことだと思います。
● 次回はグループスキルとカッツ教授の3つのスキルの関係について述べます。<続く>
- 登録日時
- 2012/08/05(日) 12:11