【2012年8月の提案③】ビジネスパーソンの能力地図づくり<7>
組織開発におけるソーシャルスキルとは⑤
グループスキル(チームマネジメント)と3つのスキル要素の関係
● 前回の続き
●「ソーシャルスキル」の特徴は『空間軸』の視点で捉えていることでした。
それは5つの要素で構成されています。その5つとは、①パーソナルスキル(本人自身) ②インターパーソナルスキル(1対1の関係) ③グループスキル(小集団の関係) ④インターグループスキル(複数のグループ間の関係) ⑤組織行動スキル(大組織全体を対象にする場合)です。
● グループスキルはチームマネジメントを行うためだとの見解で論を進めています。前回で概要は説明いたしましたが、カッツ教授の3つのスキル要素との関係について少し掘り下げておきたいと思います。
● チームマネジメントにおけるテクニカルスキルとは?ヒューマンスキルとは?コンセプチュアルスキルとは?ということを知っておかれた方が、能力開発を効果的かつ効率的に行なえるでしょう。
● まずテクニカルスキルですが、これは業務遂行能力のことでした。パーソナルスキルでは個々の仕事に関する技能のことです。それはほとんど仕事を通じて経験から学ぶものです。
● ではグループスキル(チームマネジメント)ではどのように解釈をすればよいのでしょうか?このスキルが求められるのは概ね小集団組織のリーダーの立場にある方々です。
● 業務遂行能力については一定の水準を超えた、ベテランの域に達している方が多いでしょう。新たに必要となる知識・技能は習得が必要でしょうが、毎日直接その業務をこなすことは少ないはずです。(業種・業態で違いますが・・・)
● では何が求められるのでしょうか?それは部下たちが日々の業務を間違いなくこなすよう管理することですね。そのために必要な能力は、①業務の全体系がわかっている。②業務の流れがわかっている。③個々の業務の遂行時間及び習熟時間がわかっている。④業務のツボ、コツがわかっている。⑤目標達成と仕事の質と量の関係が把握できている。などです。
● 次にヒューマンスキルです。ここではリーダーシップがその柱になります。リーダーシップ理論については当社発行の「きほんからわかる『リーダーシップ理論』」池田光他著が参考になります。
● ですが、リーダーシップというのは理論的に勉強したからといって身につくものではありません。自らが現実と格闘する中から学び、体得していくものです。その本質は部下からの支持と信頼がなければ成立しないことです。
● それを得るために何が必要となるでしょうか?筆者の経験からポイントをまとめてみました。普通の会社では目標数値は上から与えられます。それを達成することが第一の任務(役割)です。
● 手段の要素である人材、お金(経費)も殆ど自由にはなりません。与えられた条件として現有人材の活用とレベルアップが仕事です。限られたお金の使い方は一定条件のもとで任せられるでしょう。あとは「知恵とやる気」を高めて実践することです。それが第2の任務でしょう。
● リーダーがマネジメントできる領域は①目標の細分化と②課題の設定、③それを達成する手段の構築、そして④自分のチームの雰囲気づくり、⑤結果を反省してそこから学ぶことです。
● 目標の細分化とは、私の場合は小売業でしたから、売上、粗利、営業利益でした。部下にとっては売上が日々のモチベーションになります。売上目標を細分化するには、①客数&客単価 ②期間別(週間&日別)③時間帯別(午前、午後、夜)というような方法があります。
● 課題の設定はリーダーの最重要任務です。部下から衆知を集める場合も決定はリーダーの仕事です。このあたりはヒューマンスキルというよりコンセプチュアルスキルになります。
● ヒューマンスキルに限定すると「チームのやる気を高める雰囲気づくり」の方が該当します。これは上司と部下の関係だけでなく、部下同士がどれだけ「ざっくばらんに話し合っているか」とか、コミュニケーションの量が多いか、助け合いができているかなどが物差しになります。
● そのためには、個々の仕事の遂行能力の把握だけでなく、誰がチームをリードしているか、誰と誰がチームの中の小集団を形成しているか、それらがどのような影響を及ぼしあっているかなど、人間関係に精通することです。読者のみなさんも経験からお気づきのことだと思います。
● それが率いるチームにとってプラスに働いている場合は手を加える必要はないのですが、時には悪影響が出ている場合があります。それに対して放置する(見てみぬふりをする)のはリーダーとして失格です。
● いじめ問題でクローズアップされていますが、自分が責任をもって担当する集団で何が起こっているかがわからないリーダーはリーダーではありません。このあたりの感受性は普通の人間ならわかるはずです。但し問題があっても見てみぬふりをするのも人間です。
● ヒューマンスキルはインターパーソナルスキルを使って1対1で対応することが多いのですが、チームづくりのために行う手法があります。例えば接客業では「大車輪ロールプレイイング」というのをやれば、仕事をテーマにしながらお互いのコミュニケーション、人間関係が良くなります。
● 詳細は別の機会としますが、フォークダンスのように全員が参加し、お客役と販売員役を経験しながら全員と当たるというやり方です。本格的な接客ロールプレイはインストラクターとお客役、販売員役の3人が演技をして、他のメンバーは観察、評価をするというのが一般的です。
● 効果はあるのですが、緊張が伴いなかなか上達するには時間を要します。集合研修の場などでは効果的ですが、チームの雰囲気づくりには不向きです。その点「大車輪ロープレ」は盛り上がること間違いなしです。技術の向上よりお互いを理解し合うという目的でやれば、職場でやれて、短時間でできます。
● 大事なことは人間関係を良くするのには、職場の人間関係をテーマや課題にしないことです。あくまで仕事の課題を通じてその過程でお互いが気づき合うように仕掛けることです。その方法として簡単な「気持ち診断シート」などを作って、課題の管理と同時に行うのが良いでしょう。
● ではコンセプチュアルスキルとしてどういうものが必要でしょうか。基本となるのは①P・D・C・Aの仕事のサイクルマネジメント ②問題解決スキル(仕事研究スキル)③戦略的思考力の3つです。
● ①はあらゆる仕事の基本となる考え方です。Pはプラン、計画を立てるということです。これは具体的にすると、See think(観察して考える)に置き換えることができます。あらゆる計画は現場の実態を把握してから実行プランを考えるというものです。
● 前回の仕事研究集団の資料を参照してください。これをチームでやれるようにすることです。実行プランには目標、実行体制(組織=役割分担)、期限、止めることを決めます。
● 最後の止めることを決めるのが重要です。何か新しいことを行うときには、従来やっていたことで必要性、重要性が低いものを止めると確認すべきです。そうしないと思うように実行ができないのです。
● DはDo=実行することです。実行はPができていれば難しくありません。昔から「段取り7分」と言いますね。そこに止めることを明確にすれば、「集中力」が高まります。あとはタイミングを見極めることです。
● 集中力を高めることは実行の要諦です。今月、徹底してやること、あるいは今週、今日とやることを絞り込むことで達成度は上昇します。一度にあれもこれもこなすというのは、実行段階のパワーを落とします。
● 次にC=checkです。リーダーは実行の細部は部下たちに任せ、計画通りに実行が進捗しているかを管理して、修正・手直しなどコントロールを行うのが仕事です。そのポイントは「観察する」ことです。ここでも素直なこころと眼で実態を把握するから次の手が見えてくるのです。
● そしてA=Action、これを私は「反省」だと解釈しています。次の行動のための実績の把握、評価、分析です。私の経験ではここをおろそかにする人が多かったですね。反省から何が要因だったのかを明確に把握していないのです。
● 報告書だと結果の羅列であるとか、○○が不振だったなどの事実を記載するだけで、「何故なんだ」「どうしてそういう状況になったのだ」という理由や解釈がいい加減だったので、その追求に時間を要した記憶があります。そのくせ次の計画を立ててくるのですから、要注意です。
● 仕事の結果は、実績を確認し、それを目標と差異分析して、評価をします。数字の羅列ではなくそこからうまくいった要因、うまくいかなかった要因を導き出し、それから対策を考えるという「学び」が必要です。
● ②問題解決スキルと③戦略的思考力については次回へ。<続く>
- 登録日時
- 2012/08/10(金) 11:39