【8月のトピックス④】
オリンピック女子チーム監督に学ぶ
● アフターオリンピックのテレビ番組はメダル獲得者の凱旋インタビュー番組が花盛りです。たまに見ますが、インタビュアーの質問内容のせいか、選手たちの瀬戸際勝負での心境などなかなか聴けません。プライベートなことも良いんですが、やはりアスリートにふさわしい勝負のあや、決め手になったことなどを聴き出してもらいたいですね。(見逃しているかもしれません)。
● MBSの昼番組「ひるおび」で過日(もう10日ほど前ですか)オリンピックでの活躍が著しい女子選手、チームの3人の監督を取り上げてそのリーダーシップの取り方を比較してくれていました。
● 20分ぐらいの放送なので掘り下げは浅いのですが、女性に対する男性監督(リーダー)のスタイルにもいろいろあるということがわかります。総じて結論も想定内ことなので、違和感なく受け入れられると思います。ちょっとご紹介しておきます。自分のことを考えるヒントにしてください。
● 取り上げられたのは女子レスリングの栄和人監督(52歳)、なでしこジャパンの佐々木則夫監督(54歳)、女子バレーの真鍋政義監督(48歳)の3人でした。いずれも金メダル、銀メダル、銅メダルの輝いた「功労者」たちです。
● まず栄監督のタイプ分類は、「四六時中型」、選手のために4,000万円で一軒家を購入し、四六時中一緒に生活をして選手個々に合った指導法を確立していくというものです。モットーは「選手全員を好きになる」ということだそうです。
● 選手の声は、「ただ厳しいだけではついていけない。みんなを大事にしてくれるから頑張れる」というものでした。
● コメンテーターの元体操選手の池谷幸雄氏によれば、「女子にはえこひいきをしないで平等に声をかける必要がある。またずっと見てあげないと生理的本能からか、男子に比べると手を抜くところがある」という指摘をされていました。元バレーボール日本代表の吉原知子さんも肯いていましたね。
● 佐々木監督のタイプは「自主性尊重型」。現在のなでしこは佐々木監督になって5年になるので、チームとしての基本はできあがっている。だから細かいことを指導するのではなく、課題を与えて選手たちの考える力、工夫する力を伸ばしてこられたようです。
● 世界の強豪たちはいろんなパターンで攻めてくる。そこで自分たちの強みを活かして、巧みな試合運びができる「自立したチーム」へ育つように方向づけしてきたつもりだとおっしゃっています。
● 宮間キャプテンの「私たちに何が必要なのかを察して、臨機応変に導いてくれる」というコメントを紹介されていました。監督がチームや自分たちのことを察してくれていると気づいている宮間さんも素晴らしいキャプテンです。
● 選手個人に対しては個別に親近感を出すようにされているとのこと。怪我で入院していた丸山選手へのお見舞いエピソードもほのぼのとしたものです。
● 今回のオリンピックで目立ったのは、予選を2位通過するという選択です。フランスとは準々決勝ではなく準決勝で当たるようにと考え、一部の選手の不満(マスコミが伝えているので事実かどうかは不明)を、自分から謝っていたことです。目的達成のためには手段は選ばなければ監督の存在価値はありませんからね。
● 真鍋監督のタイプは「個別指導型」。代表に招集した選手とは1週間かけて面談をする。特に自分の長所、短所を詳しく語らせて、自分で自分をどれだけ把握しているかを確認するそうです。これがいい加減な人は伸びないという評価の物差しをお持ちのようです。
● また1人1人に対する気配りを重視し、女性の細かな変化に気づいてあげ、声をかけるということをするそうです。但し、本人はほとんど気づかないので女性マネージャーにリサーチを頼み、その情報をもとに行動するということでした。
● これは大事なことです。苦手なことは他の人の手を借りるという発想です。女性の細かな変化に気を配るというのは二次的なことです。選手は髪の形を変えたことに気づいて欲しいのは心を寄せる相手だけではないでしょうか。それより選手としての力量の変化や試合での成果を認めてもらうほうがやる気になるでしょう。
● ビジネスでは仕事の遂行能力や成果を認め、励ますことですね。別の番組で日本のエース木村沙織選手は髪の分ける位置などをよく変えるそうですが、「監督に気づいてもらうとやる気になりますか?」と尋ねられ「いいえ」と答えていました。(笑)
● それより「試合に出ている選手にも出ていない選手にも分け隔てなく声をかけてくれる」ことが良いと答えていました。
● 真鍋監督の真骨頂はそれよりも、「IDバレーの導入」です。データを駆使して、試合中にも直感と理性を活用してジャッジをするそのスタイルにあります。
● また8月7日の準々決勝の中国戦に焦点をあてそこにピークを持ってくるという戦略は佐々木監督に通ずるものがあります。今回はここを突破しないとメダルはありえなかったわけです。木村選手と江畑選手の活躍は見事でしたが、ここで精力を使い果たした両選手がその後いまひとつ冴えなかったのは見逃してはなりません。
● 幸い3位決定戦で、迫田さおり選手を起用した采配は見事にはまりました。ここでは木村選手もイマイチでしたから、この選択もデータ采配の賜物です。
韓国戦に強く、エネルギー十分の迫田の起用は賞賛されるものです。しかし実質上の銅メダル決定戦は中国戦だったでしょう。もういちど見てみたいフルセットです。
● 番組の最後にスポーツ評論家の二宮清純氏が総括していました。昔の「俺について来いから、コミュニケーションを重んじた対話重視型の指導者が成功している」と。
● オチは予定調和ですが、オリンピックは選手との対話重視だけで勝てる選手、チームにはなりません。内部に対するリーダーシップの方法としてはあたりまえだということです。それよりも監督と選手の間に「信頼関係」を築いたという事実が注目されるべきでしょう。
● ご自分に置き換える時、どのようなスタイルをとるかは、これらの事例を参考にしながらも自分の価値観、強みを活かすしかありません。対象となる状況(この場合はスポーツの種類と部下となる選手たち)に合わせて柔軟に対応できるようになりましょう。
● そして勝つためには他にも必要な大事なことがあります。それは・・・
● ①「戦略」②「勝つ仕組み」と選手を育てる「仕組み」③直感と理性にもとづく采配力だと思います。成熟したチームづくりは果てしなく続くものです。スポーツでもビジネスでも『成果を出し続けられチームを創る』のがリーダーの役割でしょう。<完>
- 登録日時
- 2012/08/22(水) 11:05