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【2012年9月の提案①】ビジネスパーソンの能力地図づくり<8>
組織開発におけるソーシャルスキルとは⑥
チームマネジメントにおける問題解決能力<仕事研究集団>に学ぶ
● 前回の続き
●「ソーシャルスキル」の特徴は『空間軸』の視点で捉えていることでした。
それは5つの要素で構成されています。その5つとは、①パーソナルスキル(本人自身) ②インターパーソナルスキル(1対1の関係) ③グループスキル(小集団の関係) ④インターグループスキル(複数のグループ間の関係) ⑤組織行動スキル(大組織全体を対象にする場合)です。
● ここではグループスキル=チームマネジメント能力として論を進めています。今回はカッツ教授の3つのスキル要素との関係を述べる中で、グループスキルとコンセプチュアルスキルとの関係について掘り下げています。
● 前回はテクニカルスキルとの関係、ヒューマンスキルとの関係について書きました。コンセプチュアルスキルとの関係では3つに分類しています。①がP・D・C・Aについて ②が今回の問題解決スキル(仕事研究スキル)③戦略的思考力についてです。前回はコンセプチュアルスキルの①まで言及しました。今回は②について書きます。
■ 問題解決スキルとしての仕事研究スキルについて述べる前に、広く知れ渡っている問題解決スキルについて概要を述べておきます。
● 私の経験では社会人となって10年近くは問題解決にスキルがあるとは知りませんでした。今から思えば仕事そのものが問題解決の連続です。小売業におりましたから、①売上アップ(粗利確保)②商品ロスの撲滅 ③仕入れ交渉 ④売場づくり ⑤部下育成・評価、管理 ⑥苦情対応 ⑦広告宣伝の原稿作成などの任務がありました。
● ⑤部下の管理と⑥苦情対応以外は会社から任命された「目標を達成するための問題解決行動」です。部下の管理のうち部下同士の揉め事、退職への対応と店で発生する苦情のお客様への対応が「発生する問題への解決行動」でした。
● 問題にはこの2つの分野があるというのは薄々気付いていました。ですが、それぞれの問題に対する解決行動にパターン化された方法があることは知りませんでした。いわゆる我流での対応をしていました。別に好き好んで入った小売業の世界ではありませんでしたので、随分大変だなという思いのほうが強かったですね。
● 特に苦情対応は現場に出ていた20代と40代に沢山経験しました。なんとか乗り切ったという思いです。20代は無我夢中で対応。40代では30代に学んだ問題解決スキルや仕事研究スキルのおかげで論理的な対応は可能になりました。
● しかし、苦情対応は論理的な対応だけでは上手くいきません。人を相手にするわけですから「感情を収めていただく」という対応が必要です。これは事例によっても相手の思惑によっても対応が変わってきます。従って今回述べます「問題解決スキル」からは外しておきたいと思います。(また別の機会に書くかもしれません。ですがあまり思い出したくもないんですね)。
● では問題解決スキルについて。まず問題とは何かという言葉の意味付が必要です。(定義とも言いますね)
ここは問題解決の名著から引用します。「問題発見プロフェッショナル」齋藤嘉則著、ダイヤモンド社(2001年)
そこには『問題解決とは「あるべき姿」と「現状」の「ギャップ」である』と書かれています。
● ちなみに斎藤氏の「問題解決プロフェッショナル<思考と技術>」ダイヤモンド社(1997年)の2冊は問題解決スキルを学ぶ基本中の基本テキストです。この2冊を読んで使いこなせば問題解決スキルの向上には役立つでしょう。推奨します。
● 初めて読む順番は後年書かれた「問題発見プロフェッショナル」のほうを先にされるとよいでしょう。問題は与えられるものもあるが、発見することの方が重要であるという至極もっともな指摘です。現実には難しいことなのでぜひ「問題発見力」に磨きをかけていただきたいと思います。
● 詳細は斎藤氏のテキストに委ねるとして、私が共感し、気づいたことを述べておきます。ひとつは「問題」と「課題」の区分けです。問題とは当事者が認識した、取り組まねばならないことと、不都合な出来事だという解釈です。
● それに対して課題とは、問題の中から当事者が取り組もうと決めたことだということです。問題はいくつも認識することはできますが、全てに取り組むことは困難です。また一度に取り組むのは限度があります。戦略的思考力のところで述べますが、「優先順位付け」は問題の中から重要な課題を選ぶことです。
● もうひとつは、問題(以降課題と表記します)にはあるべき姿と現状のギャップと言った時に、①未来のビジョン、目的であるあるべき姿に挑む時に必要な課題と、②通常当たり前にできていなければいけないことが、当たり前にできないために発生する不都合を解消する課題の2つがあるということです。
● 例えば先にも述べました私の仕事の経験では、未来の売上・利益を上げるという目的に対する手段の選択は課題の種類では①です。苦情への対応のように発生してくる課題は②ですね。①と②では対処の考え方、方法・技術に違いがあります。
● あとは斎藤氏の著書を参照してください。その後に出版された同系列の著書も沢山あるでしょうが、私はあまり目を通していません。本質的なことは同書に全て書かれていると思います。
(沢山の種類の本を読むより、この2冊を読み込むことが効果的だと思います)。
● では実際に大きな影響を受け、実践でも活用した『仕事研究』の方法について、私が気づいた重要なポイントを紹介しましょう。この仕事研究についてのまとめは、『8月の提案②にまとめを書いたPDFをアップ』してありますので参照してください。
● この方法に惹かれたのは、シートの欄外に書いている「事実を掴む前に、すぐ対策を考えないこと。対策を思いつくと、事実を知ろうとしなくなる」ということと、「事実を思い込み(先入観)を捨ててありのままに見る」という言葉でした。
● 後年、作家の塩野七生さんが何かの本で「人は事実を自分の見たいように見る」という警鐘を書かれていたように思います。このことは故伊桜先生の研修を通じて痛切に実感しました。また実際に自分たちの仕事が、いかに事実に基づかないで自分の考え、意見で会議をするとか、手段を実施しているのかを目の当たりにしました。
● それらはほとんど上手くいかず、失敗の要因になっていたのですが、当人はそれに気づきません。直近の北海道の漬物会社のO-157による死亡事件も、以前に保健所から指摘を受けながら、実態を確かめずに安易に対応していた結果が取り返しのつかない事件になってしまいました。
● 次は、図表の目的のところに書いた2項目です。組織の活性化、働きがいの実現に志を持っていた私は、この仕事研究という方法が救世主のように思えました。実際に体験研修で確かめ、これならやれるのではないかと思いました。
● 具体的な方法は、リーダーが「課題によるマネジメント」を行うこと。そしてそのプロセスは②の図表のとおりです。課題について私が経験したミスは、課題を大きく設定しすぎることでした。○○店の活性化、日本一の○○を実現するなどとビジョン的な内容が多かったことです。
● ④に良い課題の条件というのがあります。これはとても役に立った条件でした。ここでちょっとここまで書いていて、この図表に違和感を持ちました。番号を打つ順番がおかしいと。正しくは④は②、②は③、⑤は④、③は⑤ですね。印刷をされた方は修正をしてください。左右、左右で上から下へZ視線で見るのが正しい順番です。すみません。
● ⑤は職場ミーティングの進め方です。これは準備をうまくやれば45分から60分でできるミーティング方法です。会議・ミーティングについては先般のコラムで新書「会議で事件を起こせ」山田豊著を紹介しました。
● そこでは「拡散」と「収束」という方法を紹介しましたが、実態を把握する、事実を掴むという視点はなかったように記憶しています。ぜひ仕事研究の実態を掴むプロセスと対策を考えるプロセスに「拡散」と「収束」という方法を取り入れて頂ければ有効だと思います。
● 最後に仕事研究(仕事に知恵を込めるチーム)ができるようになったのかという評価の物差しが4つ示されています。これは課題解決という仕事を、メンバーで研究的に行うことで①課題そのものを解決する ②メンバーに科学的(ロジカルでラテラルかつクリティカル)な思考法が身につき ③さらに元気に仕事ができるようになるという目的の達成度を計る物差しになっています。
● では実際に私がこの方法を実践して、当時の組織が活性化したかというとその評価は5点満点の3点ぐらいでした。その一つの要因は、みんなの衆知を結集したからといって、『メンバーの持っている情報、知識、知恵以上のものは出ない』という現実です。
● お客様と直接に対応している小売業では、お客様の先を行くアイデア、提案力、そしてお客様から学ぶ質問力や観察力が必要だったと思います。今から思えばそこの掘り下げが不十分だったと思います。
● 逆に定型的な仕事の不具合の発生などの方が適切な手法かもしれません。小売業では品切れの防止、ロスの削減などの課題ですね。現在振り返ってみての反省です。手段(道具)は対象と使い方を見誤ってはいけませんね。
● 先の②については「3分でわかるクリティカルシンキングの基本」小川進、平井孝志共著(2009 年、日本実業出版社)を参照してください。この本も問題解決能力を深めるのにとても役立つ情報が含まれています。
● この3つの思考法については別の機会にご紹介いたします。<完>
- 登録日時
- 2012/09/04(火) 11:27