【9月に読んだ新聞・本・見たビデオ②】
慶応大学ビジネススクールでの『選択の科学』前編
● コロンビア大学ビジネススクールのシーナ・アイエンガー教授が7月に来日し、慶応大学ビジネススクールで白熱教室を開催されました。その模様は8月27日午前0時から午前1時までNHK Eテレで前編が放映され、後編の放映は9月3日の同時刻でした。
● 今回は8月27日放送の前編から、そのポイントを文章で紹介します。すでに4回に亘って同教授の講義の内容を本欄コラムで紹介していますので、重複しないように気を配りながら、「選択の科学」の真髄を探りたいと思います。
● 今回の受講対象者は慶応大学ビジネススクールでMBAをめざして頑張る学生(社会人学生も多い)たちです。2回に共通するテーマは「グローバルリーダーをめざす人たちのための選択の技術」です。そして前編のテーマは「人生の選択の極意を伝授する」でした。
● 講義の形式はビデオで見る限りコロンビア大学での白熱教室と同じです。アイエンガー教授は時折受講生に質問を投げかけ、知識や考えを引き出しながら自説を展開していきます。盲目の教授は何も見ることはできませんが、スラスラと講義内容を話されます。
● 誰かの言葉を引用するときも一字一句、間違いなく話されるのはプロとはいえ見事です。
● 今回の重要ポイントは、①リーダーにとって『選択』という行為は強力な武器である。それを上手に行い良い結果を出すことによって最終的な評価を受けるということです。
● ②は、リーダーは数ある選択肢をいかに絞り込んで、集中力を高めるか。なぜなら私たちには誰しも限界がある。大事なものを見極め未来に向かって可能性を見出すことが役割だからということです。
● 講義の内容は、1)なぜ選択が重要なのか?というテーマでその必要性が説かれます。受講生にも過去の困難な選択を振り返えさせます。教授はその時の気持ちを尋ねますが、あまりいい答えは出なかったように思います。
● 教授のまとめは、「一度選択をすると後には戻れない。未来に向かうしかない。過去を振り返るとき、未来に役立つ選択肢を探ることだ」。と、要は可能性を見出すことが重要だとおっしゃっているのです。これは極意でしょう。
● また「有能なリーダーはメンバーを歯車のように扱うのではなく、選択の機会を与えることだ」とも。グーグルの事例で勤務時間の20%は自分の好きな仕事に使って良いというのは、その成果とともに注目すべきことですね。
● 2)は選択について意見が別れるのはなぜ?というテーマです。これは国の文化的背景によってちがってくるというものです。前回までにも紹介していますのでここでは省略します。
● 3)のあふれる選択肢をどう絞るか?というテーマについては、前回までのコラムで紹介していないことがありましたのでそれを記載します。(ビデオを上から録画してしまって消えていたのです-汗)
● 多すぎる選択肢は障害になるというのがアイエンガー教授の提言です。それをどのようにして絞るかというのを実習で行っています。米国のCEOの行動調査で、1週間の決定事項で、およそ50%は9分以内で処理をし、12%に1時間以上をかけているという事例を紹介されます。(そのほかは不明です)
● 要は重要なことと、そうでもないことを区分けして重要なことに時間を割くのが賢明なリーダーの選択であるということです。これも極意ですね。
● 実習のステップは以下のとおりです。
①1週間の課題をすべて書き出す。
②課題リストを半分に削る。(自分でたいしたことがないと思うものを削ります)。
③必要な労力と得られる報酬に見合うものとそうでないものとの2つに分類します。(労力<報酬=1時間以上かけて決める課題)
④1時間以上の時間をかける課題で、自分でやることによって自分にも組織にも有意義なものを上位3つに絞る。
● テレビではある学生の事例がモデルとして紹介されます。重要でない課題は解決を人に依存するとか、後回しですね。要は多くの人が本当に重要な課題は何か、意外と把握できていないという警鐘なんです。
● また課題は大きく捉えないで、できるだけ具体的にすることを提言されます。これも簡単なようでできない人が多いのです。仕事研究のコラムのところで私も指摘しています。これも極意でしょう。
● この作業を半年に1回は続けるよう推奨されます。選択日記といい、この課題の分類にしても難しいことではないのですが、やりきる人は少ないでしょうね。こういう積み重ねが大きな力になるんです。私はそう思います。
● 今回のテーマは「人生の選択の極意を伝授する」でした。極意とは大切な核心となることです。みなさんはどう読み取られましたか?この文章にはアイエンガー教授の教えを要約した部分と私の感想・見解(意見)を述べた部分が混ざっています。8対2ぐらいの比率を意識して書きました。
● 読者のみなさんご自身で「選択の極意」と思われるものを読み取り、記憶して実践してみてください。極意には「考え方」と「手段・方法・手順」があったと思います。2つに分けて覚えると良いというのが私の意見です。
● 特に「手段・方法・手順」が示されていないものは「行動」につながりにくいと言えるでしょう。人は行動して成果につながらないものは「継続」しません。そういう意味からも、『選択日記』や『選択肢(課題)の絞込み』は実践的な教えだと言えます。
● 今回の選択の極意のまとめは・・・
①選択こそチカラなりと信じること。【考え方】
②選択肢を4つのステップを使って絞り込むこと。それは半年に1度行うと良い。というものでした。【手段・方法・手順】
<後編に続く>
- 登録日時
- 2012/09/10(月) 14:44