【2012年11月の提案②】
コミュニケーション能力を考える<前編>
● 企業が大学生の新卒採用選考で特に重視した点という、経団連の調査結果を新聞で読んだことは、10月29日に本欄に記事をアップしました。(10月のトピックス④をご参照ください)
● 新聞記事の内容では採用で重視した要素のベスト3は、第1位:コミュニケーション能力、第2位:主体性、第3位:協調性です。
● しかし、これでは学生側は具体的に何を準備すれば良いのかがわかりにくいという指摘をしました。特に義憤に駆られたというわけではなく、では自分ならこれらの要素をどのように説明するのかという自問自答をしてみました。
● なかなか簡潔にうまく説明できません。これは少し掘り下げてみようという個人的な興味から本欄で取り上げることにしました。別に採用だけでなくビジネスパーソンにとって、あるいは人間全体にとって必要な能力、資質ですからね。
● 最初は、コミュニケーション能力を取り上げます。ちなみにベスト10のうちスキルに関するものはコミュニケーション能力の他には論理性と専門性しかなく、他は資質に関するものばかりです。新卒ですから可能性を探り当てるのが重要だからでしょうか。
● 例によって何かを文章で具体化する時の私のフォーマットに従って書く事にします。それは①言葉の意味を具体化する ②このことは何を目的(ねらい)にしているのかを考える ③それを達成するための手段・方法(時には手順まで)について明らかにする ④それを行う上での注意点やタブー ⑤事例の提示という構成です。
● 今回はまず現状での私の見解を書きます。あと中編、後編では我が家の蔵書から何人かの識者の見解をご紹介します。コミュニケーション関係の本はとても多くて10人くらい取り上げたいと思います。それを行うことであらためて私自身の勉強にもなるからです。
● では私の現時点での見解からご紹介しましょう。3部作が終わったあとの気づきが自分でも楽しみです。尚、この前編・後編などの書き方はコミック「ゴルゴ13」から思いついた真似です。(笑)
● まずコミュニケーション能力の意味ですが、AとB(または複数のBたち)という人の間の意思疎通をはかり、お互いの目的とするものを達成するための能力です。
● そのねらい(目的)は、その時々のお互いの目的をよりよく達成することです。
● そのための手段・方法は、『知って、掴んで、動かす(動く)』という言動が基本でしょう。他にも「積極的傾聴」で学んだ「たずね、聴く、答える」というのがあります。
● これらの手段・方法を使うには、状況によって変わってくるということを知っておく必要があります。例えば、個人対個人のコミュニケーションもあれば、個人対複数の人間(講義やグループワークなど)があります。
● さらに具体化すれば、上司と部下、同僚、得意先(仕入先)、お客様、家族(夫婦、親子)、友人、近隣の住人、セールスマン、ミーティング、会議などによってその状況にふさわしいコミュニケーションの仕方に変化させなければなりません。
● それぞれの状況別に効果的なやり方があるからこそ、世の中にはコミュニケーションに関する書物が出版され、セミナーや研修が行われているのでしょう。ここでは私の持論であるほとんどの状況に対応できる『知って、掴んで、動かす(動く)』という言動を提唱いたします。
● お互いの目的を効果的に達成するためには、現状の実態や問題点、やりたいことを知る必要があります。知るためには片方が積極的に働きかけなければ始まりません。そのうえで、重要なポイントは何かを共有し、それから動かす、または動くための具体策が必要になります。
● このステップを踏まないと、思い込みや独りよがりの言動でお互いの目的は達成できないどころか、気分まで悪くなり、関係がこじれることにもなりかねません。みなさんも自問自答してみてください。
● それぞれの段階での注意点は、まず知るためには「質問力」が必要です。質問は訊問ではありません。まず尋ねやすい場づくりが必要ですね。そして質問というより尋ねることです。(詳細は積極的傾聴のスキルを参照してください。ネットで検索できます。)
● また言葉以外にも「観察する」「調べる」という手段・方法があります。人間は五感を使って生きている動物ですから、「話す」「聞く」(聴覚)だけでなく、「見る、観る、診る」(視覚)ことができます。
● 触る、触れ合う(触覚)、味わう(味覚)、臭う(嗅覚)でも相手を知ることができます。私たちは実際にはやっていますね。それを意識的に行うべきです。
● 次に「掴む」というのは、相手が何を望んでいるのか、何をしたいのか、何ならできるのか、何は嫌なのか、考える時間を必要としているのかなどを把握したうえで、それぞれの「重要ポイント」をつかまなければなりません。
● 動かす(動く)とは、目標達成への具体的手段・方法で行動することです。そこには手段・方法(手順)の論理性だけでなく意欲や感情面に着目しなければならないでしょう。
● 動かすには正しい動機付け理論(当社発刊の「きほんからわかるモチベーション理論」に詳細あり)の活用が必要です。ですが一般的にはアメとムチとか恐怖の動機づけ、(脅し)などが使われています。直近の尼崎事件などにも見られる現象です。
●「動く」の方は自分自身で動くわけですから「動かす」より容易でしょう。しかし、相手の反応をよく確認しながら動かないと失敗する場合があります。
また、自分は何によって動機づけられるか、目的・目標なのか、それとも価値観なのか、いずれを重視するのかを知っておくことも大切です。
● 以上が私のコミュニケーション能力に対する現時点での解釈です。具体的な事例をお示しすることはできませんでしたが、おわかりいただけたでしょうか?ぜひ「知って、掴んで、動かす」と「尋ね、聴く、答える」を意識して実践してみてください。
● 私自身の実践度、能力は自己採点で70点ぐらいです。上記のことは意識していますが、ついつい自分がしゃべりたくなります。仕事ではまだしもプライベートになると、人の話を聴いているようで聞いていません。
● 家内との会話ではイラついて感情的になることがあります。自分が正しいことをしているつもりなのに間違いだと指摘されると腹が立ち、余計な言葉を吐いてしまうものです。(笑)何年たっても上手くできないからこそ人間らしいとは思うのですが・・・。
● ですがビジネスの場や会社ではそうはいかないですからね。やはり勉強し、練習する必要があります。コミュニケーション能力というのは知識ではなく使いこなせることです。頑張って実践しましょう!
● 次回は本を書かれている方々の考え方、手段・方法をご紹介しながら私もあらためて勉強をしていきたいと思います。2回に分けて(中編、後編)ご紹介する予定です。
<続く>
- 登録日時
- 2012/11/21(水) 11:29