【2012年11月の提案③】
コミュニケーション能力を考える<中編>
● 紅葉が一段と美しくなってきました。もうすぐ散ってしまいますね。季節の移ろいを急速に感じる今日このごろです。前回の続きです。まず前回の文章の冒頭を再掲いたします。
● コミュニケーション能力とは何か、をわかりやすく説明できるようにしようという試みです。前回は私の現状での持論を展開いたしました。いかがだったでしょうか?役に立ったでしょうか。と不安を抱えつつ今回は我が家の蔵書から、コミュニケーション(能力)について述べておられる方々の論とそこからの私の学びを紹介いたします。
● ねらいは、私自身があらためて勉強するためです。このテーマに興味のある読者の方々はご自分の考えを検証するのに役立ててくだされば幸いです。知識を増やし、未知の分野に『実践でもって役立てる』ことが生きていることだと思うのです。
● 以下今回の文章です。
● まず、はじめにコミュニケーションの定義を明確にするというアプローチをされた伊藤進氏著「<聞く力>を鍛える」講談社新書(2008年刊)から。
● 伊藤氏は海外の専門家の調査によると、コミュニケーションの定義が126個もあったと紹介されています。そこで「本質を探り出す」のがいい方法だとおっしゃいます。ここで本質の定義が述べられています。それは参考になりましたので以下抜粋します。
●「 本質とは、Aという対象があったとき、それを取り除くともうAではなくなってしまうといういわばAの核になっている部分のことだ。実際にはAはさまざまな姿をしてあらわれるのだが、これは取り除いてもいいだろうという部分を削ぎ落としていき、ぎりぎり、ここを取り除いたらそれはAではなくなる・・・そういうものを探すわけである。」
● そのための方法としてさまざまな変異形の共通項を抽出するやり方があるとおっしゃるのですが、126個もあったコミュニケーションの定義から共通項を見出すのは難しいと断念されています。
● もうひとつの方法として語源をあたるということで結局、辞書で調べられたそうです。その結果コミュニケーションの語源は「分け合い」という結論を導き出されます。
● 定義は『コミュニケーションの本質は、分け合い』であるとされます。
● 私が共感したのはコミュニケーションの定義を「目的性」で語られているところです。何のためにコミュニケーションをするのかというと、それはAとBのあいだで①情報、②気持ち、③時間、場所、食事など「分け合い」がうまくいっているかということです。
● 手段、方法ではなく分け合うという目的で定義づけられるとわかりやすいですね。それに目的が明確になれば手段、方法は広がりをもって考え、選択することができます。
● それに対して中原淳、長岡健共著「ダイアローグ 対話する組織」ダイヤモンド社(2009年刊)では、『対話』という手段がコミュニケーション行為の本質であると定義されています。
● そして『対話の定義』として①共有可能なゆるやかなテーマのもとで、②聞き手と話し手で担われる、③創造的なコミュニケーション行為の3つを示されています。これらも目的性より手段、方法を強調されているように読み取れます。
● 本書は日本の比較的大きな企業の組織内のコミュニケーションのあり方について問題提起を行い、その解決策として「ダイアローグ 対話する組織」への変革を提唱されています。
● 単なる会話ではなく『対話』がもたらす効果を論証するとともにその限界にも論を進めておられます。基本的には「対話」という手段・方法からアプローチされその結果が組織の活性化、人の成長につながるという目的(問題解決)に結び付けられています。
● いずれもコミュニケーションの目的について見解を示されているのですが、焦点の当て方が違うのですね。目的から入って手段について述べる、手段に焦点を当てながら目的を示す、これらの方法は参考になります。
● 3冊目は 伊藤守著「コーチングマネジメント」ディスカヴァー(2002年刊)です。本書ではコミュニケーションとは要求(リクエスト)すること、すなわち「○○して欲しい」「○○して欲しくない」ということだと定義されています。
● コーチングはコミュニケーションスキルのひとつですが、この分野は現在も大いに発展してきています。人がひとりでは成し遂げることができない物事を達成するために、このコミュニケーションスキルも発達してきたようです。
● ここにはコーチングという手段が果たす目的が述べられています。人がひとりでは成し遂げられないものを達成するためにコミュニケーションが必要であり、その手段・方法が発達していくのだというのは私にはフィットする言葉でした。
● 今回の最後は須子はるか、松村香織共著「コミュニケーション集中治療室」
東洋経済新報社(2005年刊)です。とてもわかりやすい本です。上記の3冊は少し学術的で難しい言葉が出てきます。この本は診断やケーススタディなどで具体的な解説がなされています。
● 本書でのコミュニケーションの定義は、理想のカタチという表現で、「発信」と「受信」を通じて、相手の心と共鳴し、共感し、気持ちを通い合わせること。とあります。女性らしく感性、感情に重きを置いた定義ですね。
● 気持ちを通い合わせるというのも目的ですが、その向こうにもっと本質的な目的があるように思います。それに対してはこのことは下位の目的になるではないでしょうか。
● 課題解決、何かを成し遂げる、創造性を発揮するということではなく、男性の表現では後回しになるような分野を表に出しておられます。感情面を重視した目的設定ですね。勿論私たちは論理と、感情の両方に目を向けなくてはなりません。
● 本書の手段・方法についての記述は具体的で現実にあり得る事例が豊富です。ですから理解はしやすいと思います。ですが実践するには全く同じ状況は少ないでしょうから、やはり本質を掴んで応用できるようにされることが必要です。
● ここまでの私の学びは、本質を掴むことの重要性、目的と手段・方法の両面性、論理と感情の両面性でコミュニケーション能力を意味付けることが必要だということにあらためて気づいたことでした。
● 定義は目的性を持つこと、手段・方法の前に下位の目的を設定するのも良い。
それから手段・方法を内容(論理性の重視)と表現方法(感情面を重視)の両面で具体化すること。そして手段・方法には実践のための手順を示すことだと認識しました。
● 次回はさらにコミュニケーションのHOW TOに詳しく踏み込んだ著書を中心に取り上げながら思考を深めていきたいと思います。
● お楽しみに。<続く>
- 登録日時
- 2012/11/26(月) 14:57