【2012年12月の提案③】
主体性について考える<後編>
● 前回の続きです。次に取り上げた文献は平野耕一郎先生著の新書『「最高の自分」を創る法』(1988年PHP研究所刊)です。25年前の著書ですが人によっては今でも参考になると思います。
● 平野先生には若い頃教えを請うた経験があります。その時には私には難しいという印象でしたが、歳を重ねて理解できるようになりました。
● この本の中に「主体性とは何か」について述べられています。本書では人間力の全体像と基盤としての三つの側面を示されます。その三つとは①精神面の基盤→心の状態、②思考面の基盤→思考能力、③知識面の基盤→知識体系です。
● 体力(肉体面)については触れておらず、対人関係スキル(感情面)にはあまり踏み込まれていません。もともと平野先生は「脳力開発」という考え方と方法の普及に取り組んでおられました。その関係で「こころと頭脳」が中心となっているのでしょう。
● 精神面の基盤の柱が、「高度の主体性」です。詳細は本書をお読みいただくとして(アマゾンで中古があります)、57Pの「主体性とは何か」から抜粋して紹介していきましょう。
●「主体とは、環境に対比してこそ、その存在の意味をもってくることになるわけです。とうことは、環境から区別されうる何らかの本質がなくてはなりません。このへんをわかりやすく特徴づけて表現し直してみますと」
●「①環境に振り回されず、流されず、支配されないこと。
②環境に対して常に働きかけ、つくり変えていくこと。」
●「①は、心のあり方の本質として、支配されているか・いないかという点が、この①のことがらのいちばん根源になると理解していただいたほうが適切でしょう。」
●「これを身近にとらえ直せば『本質的な意味で、自分の心が自由であるかどうか』という問題になるかと思います。」-中略-
●「主体的に欠けるあり方においては、『自ら能動的な働きかけをすることによって、事態や状況を動かしたり突破したりしていこう』とする思考・行動に乏しいのです」-中略-
●「『まわりに頼る生き方』『依存的な姿勢』『流される姿勢』などと表示して、主体性の欠如を象徴することにしています」。-中略-
平野先生も「主体性とは」を説明するのに、主体性がある場合とない場合を対比させながら説明されています。比較するというのはわかりやすい説明の1つの方法ですね。
● 結論は・・・
「主体性とは、環境に支配されない(心の)あり方と、環境に対して常に働きかけていくあり方とから成り立つもの」とされています。
● 主体性を発揮するには、その人の心の働きによって決まると言われているんですね。
● さらに「主体にとっての環境や内外の条件というものは、決して固定しておらず、主体たる自分の側の働きによって動かされ、変えられ、つくられていく(べき)もの」
●「そして、その環境や条件を動かし、つくり変えていく主体的(主導的)因子は、主体内にあるのであって、環境因の方は主体因を通して作用するもの」と述べられています。
● 環境の捉え方も本人が主体性をもって捉えることだということですね。よくある例えで、コップの中に残り水を見て、あとこれだけしかないという捉え方とまだこれだけ残っているという捉え方があるというのがあります。
● コップの中の水の量は同じでも、見るほうの捉え方によってその状態はマイナスにもプラスにも捉えることができるというものです。
● どうやら「7つの習慣」(1996年刊)のスティーブン・R・コヴィー博士と同じような見解ですね。
● 平野先生は1980年代初めからにこの考え方を発表し実践されていました。本質を捉えたアプローチは同じところに行き着くのですね。しかもここでは詳述できませんが、このことを含め具体的な事例を交えて説明をしてくれます。
●「高度の主体性」の意味は、それだけではなく人間力の全体像と三つの基盤について解説された本書は読み応えがあります。興味を持たれた方は古い本ですがぜひご一読ください。
● 私の「主体性について」の理解は深まってきました。読者の皆様はいかがでしょうか?ご自身の生き方の参考になれば幸いです。ですが採用現場で企業がどのような視点で、物差しで、方法で評価をしているのかは私にはわかりません。これは就職活動をビジネスにしている会社が有料で教えているのでしょうかね。
● 今年の大卒就職内定率は10月1日時点で63.1%と前年よりは改善されたと言いますが、(卒業予定者55万6千人、就職希望者42万5千人、およそ13万人も就職しないんですね。内定者26万8千人)まだ16万人も決まっていないようです。(厚生労働省11月27日発表)
● もう今月から新年度の新卒就職活動が始まっている時期なんですが、コミュニケーション能力、主体性はどのように対応すれば企業とマッチングするのか、支援をしてあげる必要があると思います。
● 最近の採用現場をよく知らないので具体的なアドバイスはできませんが、就職活動をされている学生さんは大学の就職課の方に質問されてはいかがでしょう?
● 組織の中で働くビジネスパーソンにとっても、企業が重視する能力とは何かを考えるうえで参考にしてください。自分にとって必要だ、役に立つということであれば貪欲に学ぶべきです。
● そうでない場合は無視すれば良いでしょう。自分の人生にとって必要でない余計なことにエネルギーを使うのは無駄なことです。昨日、衆議院選挙で民主党から自民党への政権交代の審判がくだされました。
● しかしその結果については自社にとって、自分にとって影響のあることは何か、それのみに関心を集中させるべきです。テレビの街のインタビューで大阪のおばちゃんが、「選ぶのは難しい、だから自分にとって必要なこと1つだけに絞って、それをやってくれそうな正当に投票します。」と言っておられた。そのとおりです。
● 主体性の発揮とは、自己中心主義と表裏一体だと思います。世の中全体のことは政治家に任せておき、自分は自分の人生のために必要な分野で視野を広め、自己の目的や目標達成のために必要な能力に磨きをかければ良いのです。
● それをご自分の意思で自分のための目的や目標を設定したり、手段を選択することが健全な主体性の発揮になるでしょう。しかし、その時に「協調性」を考える必要が出てきます。それについても平野先生の著書を参考に考えてみましょう。
● というわけで、次回は3番目に企業が重視する「協調性」について考えてみます。<完>
- 登録日時
- 2012/12/17(月) 15:09