【今月のトピックス②】
『資質とは?』について考える
● 今月はコミュニケーション能力や主体性、協調性などについて考え、提案をしています。その過程で「資質」や「価値観」などの言葉の意味について考えるようになりました。それは私自身がよくわかっていないことに気づいたからです。
● これらの言葉は普段、何気なく使っているのですが、いざその意味はなんだっけと引っかかると自問自答します。そうするとなかなか簡潔に上手く説明できないことがわかります。
● そうすると調べるというのが私の信条です。テレビドラマ「相棒」の杉下右京警部ではないのですが、「細かいことが気になる悪い癖」が出てきます。杉下警部と違って、先を読むための疑問ではないのですが・・・。(笑)
● 早速「資質」についてネットや自宅にあるいくつかの著書を参考に調べてみました。調べれば調べるほどいろんな解釈があり迷ってしまいます。筆者はどういう意味を前提に使用されているのかがわからなくなることがあります。
それは後ほど事例で示します。
● 尚これを読んだからといって「商売に役立つ」ことはありません。ビジネスや商売のヒントを求めておられる方は読まない方が良いでしょう。時間の無駄になりますから・・・。この事に興味のある方はお付き合いください。
● まずはネットのYAHOO辞書から。辞書には「生まれつきの性質や才能、人間が先天的に持つ才能、または性質」とあります。生まれつきや先天的というのは分かるのですが、性質や才能と言われるとそれは「何ぞや」と新たな疑問が湧きます。
● そこで「性質」を調べると、「持って生まれた気質。人となり。たち」とあります。今度は「気質」か、とわからない表現です。気質とは、「言動に表れるその人に身に備わった性質」だと。これじゃ堂々巡りですね。
● ここでクレッチマー博士の「気質分類」に出会います。クレッチマー先生は人間の気質を3つに分類して、いずれかのひとつが特徴的に表れると言っておられます。その3つとは・・・。
●①循環型気質
社交的なときと静かなときが交互に出る。
②分裂型気質
非社交的、気づかないところと気づくところが両方出る。
③粘着型気質
几帳面、やることは凝る。
● さらに篠 秀夫さんという方がネットで解説してくれています。
「気質とは性格をつくる以前の刺激に対する反応の仕方です。これは体の状態との結びつきが強く、生まれつき1人1人違います。ですから同じように育てられても兄弟(姉妹)の間でも性格が違うのです。泣き方、おっぱいの吸い方、歩き始める時期、話し始める時期なども違います。」以下略
● 篠さんは4つの体の状態を示してそれぞれの特長を具体的に紹介されています。その4つとは①胆汁質(たんじゅう)<行動的・意志> ②多血質(たけつ)<社交的・感情> ③憂鬱質(ゆううつ)<内省的・思考> ④粘液質(ねんえき)<傍観的・感覚>です。
● これではわかりにくいと思いますので、詳細は篠さんのホームページをご覧下さい。細かい特長を読んでいくと自分がどこに該当するかはわかります。しかしこれが気質で、性質につながり資質へと結びつけるには難しいと思いました。
● 次に思いついたのが以前にも当欄で紹介しました「ストレングス・ファインダー」について書かれた本、『さあ才能に目覚めよう!』の中に「資質」について記述があったことです。以下再掲しますと・・・
●「人の才能の基になるのが資質である。才能とは、無意識に繰り返される思考、感情及び行動のパターンであり、何かを生み出す力を持つ資質である。」
●「例えば競争心、愛嬌、根気強さ、責任感、知識欲など34の資質がある。」
●「これらの資質は一生を通じてまず変わることはない。新たな知識や技術を身につけた結果、意欲的に取り組める新たな分野が見つかる可能性はおおいにある。」
● ここでは34もの資質が紹介され、診断の結果、上位5つの特徴となる資質が詳しくフィードバックされます。それは基本的には生涯を通じて変わることはないとされています。非常にポジティブな内容なので勇気づけられます。
私は手帳にコピーを貼り付け、時々読み返しています。
● クレッチマー教授が3つの分類、篠さん紹介では4つの分類、ここでは5つの資質で個人の特徴が示されることが分かりました。性質、才能、気質という表現をも含んで「資質」というのが説明されているんですね。そのひとつひとつの違いにまで踏み込むとこんがらがって嫌になります。
● そこで具体的な事例を探してみました。コンビニエンスストア業界について書かれた本、「スーパーバイザー革命」岩本浩治著(2000年)に「スーパーバイザーに求められる資質とは」という記述がありました。
● 同書41Pより「資質とは業務を遂行するに当たっての『職務適性』のことをいう。ある人の、その道での成功を占うポテンシャル(潜在能力)の部分といってよい。-中略- あらゆる職務には向き不向きがある。」以下略。
●「資質とは、①素養 ②才能 ③気質の3つで構成されたものである。(スーパーバイザーを対象にしての見解)
● ①素養とは、専門スキルを習得するための土台となる基礎能力(言語能力と算数の力)と社会体験の質である。
● ②才能とは、職務遂行のキーとなる要素(知覚)に関する先天的な量である。それがセンスでもある。
● ③気質とは、その人の持つ価値観、性格、個性と職務の相性のことである。」
例として、創造力、決断力、責任感、バランス感覚、人間オタク、能動的体質、掘り下げ癖(凝り性、しつこい奴、粘着性)などがあげられている。
● こうなると著者の思いは伝わるのですが、いろいろな言葉が出てきて困ってしまいます。素養、才能、気質の分類は氏の独自の分類でしょう。この本だけを読んでいると分かった気になるのですが、他の解釈を知ると困ってしまいます。
● 要は、岩本氏は「適性検査」の必要性を説いておられます。「意欲は資質より偽装しやすい」という言葉は岩本氏の経験から導き出された実感なのでしょう。印象に残りました。「資質とは」についてはひとつの意見として読みました。
● 最後に最近拝見した2つの事例から。ひとつはハーバートビジネスレビュー(ネット情報)にコラムに、次のようなものがありました。
●「次世代経営者に求められている『資質とは』、『戦略提言力』と『リーダーシップ』の2つであろう」という内容です。これを資質と言うのでしょうか?これは一般的には『能力』と表現したほうが良いのではないでしょうかね。
● 二つ目は「週刊ポスト12月14日号」から、新総理の条件:櫻井よしこ氏(ジャーナリスト)の記述からです。
●「日本の新総理に求められる最大の『資質』とは何か。それは何よりもまず、大局的見地に立って世界情勢を俯瞰し、地政学を把握したうえで日本国の針路を見極めること。そして日本国の未来への舵取りに強い責任と意志を持っていることだと思います。」
● これは①大局的見地を持つ【能力】②地政学を把握する【知識】③日本国の針路を見極める【能力】④強い責任と意志を持つ【資質】に分類されるのではないでしょうか?
● で、結局「資質とは何か」についての結論はどうなったんだ、とオチが必要になりますね。杉下警部のように見事に解決とはまいりませんでした。私の調査では迷宮入りかもしれませんね。ですが、あえて結論づけておきます。それは・・・
● 仕事をしていく上での、基礎となる能力の土台にあるもの。持って生まれたもので後天的には容易に変えられない人の性質のようなもの。現在の私が信じるのは「ストレングスファインダー」の上位5つの資質です。なぜなら私の気分を心地よくしてくれるからです。それを活かして、後天的に進化させることが可能な能力開発に注力することが賢明な生き方だと思います。<完>
- 登録日時
- 2012/12/22(土) 11:52