【今月のトピックス④】
さらばプロ野球選手・松井秀喜と起承転結
● プロ野球ファンの私にとっては年末にビッグなニュースが飛び込んできました。それは大リーガー松井秀喜の引退です。このことはネットでもテレビでも新聞でも大きく取り上げられています。
● 私にとって「松井秀喜」という選手は長嶋茂雄からつながる系統の思い入れの強いプロ野球選手です。長嶋と王と比べれば断然長嶋茂雄が好きでした。同じ大リーガーでも松井とイチローではこれまた断然松井のファンです。
● 実績は王、イチローの方が優れているのですが、それはファンになる価値基準には入っていません。なぜか好きなのです。その根拠は上手く説明することができません。
● 松井が大リーガーとして2009年ヤンキースのワールドチャンピオンの立役者になったことは記憶に新しいところです。その後3年間で松井は選手としての成績は衰退に向かいました。
● 私はその理由を世界一になったにも関わらずヤンキースから放出されたこと。監督のジラルディが前任のトーリと違って松井に見切りをつけていたこと。つまり信頼していなかったことにあると思っています。
● 松井の立場から推測すると、彼はヤンキースに憧れ、このチームが好きでした。2003年から3年間は好調でしたが、2006年の左手首の骨折から1年おきの活躍しかできなくなりました。2007年○、08年×、09年○でした。
● ここでヤンキースは松井を放出します。08年からヤンキースの指揮をとるジラルディ監督は就任前から松井の衰えを指摘していました。ですから08年はあまりスタメンで使わなかったのです。
● 監督ジラルディの立場からすると当然の判断だったかもしれません。勝つためには打つだけではなく守備も走塁も一流の選手を求めるのが監督です。松井は打撃に比べると守備も走塁も一流ではありませんでしたから。
● これで松井の試合に出ながら調子を上げていくスタイルが崩されました。
松井選手は器用な人ではありません。エンジンがかかるまで時間がかかる弱点があります。体も硬そうです。柔軟性に欠けるのでしょう。
● それでも09年はそこそこの成績で蘇り、あのポストシーズンでの大活躍につながってMVPです。ですがジラルディは前任のトーリ監督のように松井を信頼していませんでした。(私にはテレビの画面を通してですがそう見えました)
● 2010年にエンゼルスに移りましたが09年のヤンキース時代と成績があまり変わりませんでした。おそらく松井のこころの中で何かが欠けてしまったのではないでしょうか。自分が愛するチームに貢献するのと、職業としてどこでも実力を発揮する他の外人とは違うメンタルの持ち主なのです。
● ヤンキースにずっと居たら、2010年はもっと活躍したように思えてならないのです。ただ残ってもジラルディが監督で、松井を信頼していないのなら大きな変化は望めなかったかもしれません。
● 松井は自分で言っていましたがフォア・ザ・チームの男です。それも自分が好きなチームに貢献したいのです。そこには監督との信頼関係も欠かせません。日本でも最初から巨人が好きだったかどうかもはわかりません。(もともと阪神ファンだったようですから)
● ですが、ドラフトで抽選くじを当て、その後監督として、育成を通して師弟関係にまで発展させた長嶋茂雄の存在は松井の中で大きなものだったでしょう。そこには信頼の絆ができていたはずです。
● ヤンキースに移籍してもトーリ監督という類まれなる名将との出会いが松井を助けました。トーリ監督との間にも信頼関係が構築されました。それはトーリがそうしたからです。長嶋監督もトーリ監督も松井にとってはかけがえのない存在だったのでしょう。ですから異国の地でも思う存分に力が発揮できたと思います。
● 私は松井の衰退を加速させたのは、ヤンキースというチームから見放されたこと、監督からの信頼が得られなかったことだと思います。私の思い込みですが、松井秀喜は昭和の日本人的なところがあるんじゃないでしょうか?
● ともあれずっと応援してきた「松井秀喜」は今年限りで現役生活にピリオドを打ちました。残念な思いが強いですね。ですが誰にもいつか引退の時期は訪れます。ですから「よくやった、お疲れ様、さらばプロ野球選手・松井秀喜」という言葉を20年来の1ファンとして贈りたいのです。
● 彼がこれからどのような生き方をするのかはわかりませんが、早速巨人軍の将来の監督候補として取り沙汰されています。しかし私の寿命からするとその勇姿をみることは叶わないかもしれません。ですがそうなってもぜひ成功していただきたいですね。
● 最後に松井秀喜の人生を起承転結で見ると、少年野球時代から高校野球での5打席連続四球までが<起>で巨人軍時代が<承>、そしてヤンキースを中心とした大リーガー時代が<転>ではないでしょうか?<結>はこれから期待されるであろうプロ野球の監督としての時代でしょう。
● なぜ松井秀喜の野球人生を「起承転結」で捉えたかというと、朝日新聞のスポーツ記者である西村欣也氏の12月29日朝刊の記事が見事な文章だと思ったからです。西村氏は巨人軍には厳しい目線での記事を書くので好きではありません。(例えば日本ハムの大谷選手には好意的ですが、巨人の菅野選手には辛辣です。状況に大差がないのに公平な扱いではありません。)
● ですが、文章は上手いと思っていつも参考にしています。内容は無視しても文章の構成、表現は無視できません。ただ今回は内容も見事です。記事を掲載しておきますので読んでみてください。
● 1行目から6行が<起>ですね。7行目から上段の最後までが<承>で、下段の最初から後ろから6行目までが<転>です。そして残りの5行が<結>。上手いな、このオチは秀逸です。
● この短いコラムの中身は見事に松井の大リーガーとしての引退の心情を伝え、その功績と判断を讃えるのに成功しています。プロフェッショナルの仕事ですね。今後私の参考テキストとして長く活用したいと思います。
● これで今年のコラムのアップは終了させていただきます。調べなければならないこと、読まなければならない本ができたからです。書くのは新年を迎えてからにしたいと思います。ではまた来年にお会いいたしましょう。良いお年をお迎えください!<完>
- 登録日時
- 2012/12/30(日) 11:43