【2013年2月の提案①】
マーケティングストーリーとマーチャンダイジングストーリー
●先日当コラムで「売上アップ法7つの視点」の連載を開始するとしてプロローグ編をアップしました。毎月1つの視点をこなしても7カ月かかります。私の気ままなコラムですからそれはそれでいいんですが、読者のことを考えると春商戦を前に販売企画を考えておられる方もおられると思います。
●別に当欄に期待はされているとは限りませんが、少しでも役に立てればと思いますので、今回から3回ほど私の得意分野のことを書きます。もしかしたら5回ぐらいになるかもしれません。(笑)
●今回のテーマは表題のとおりです。本来「売上アップ法7つの視点」の4番目に当たる『販売(購入)のストーリー化の視点』に含まれるものです。英語を翻訳しますと前者は「お客様の生活視点で考える物語」、後者は「商品の特長・利点・便益(効用)で考える物語」ということです。
●たとえば明日2月3日の節分の日の「恵方巻き」の拡売キャンペーンですがこれはどちらに当たるでしょうか?・・・。
●これはマーチャンダイジングストーリーです。「恵方巻き」という商品をいかに拡大販売するか、という発想から商品開発に焦点をあてて、各業種・業態がこぞって品揃えを充実させて訴求しています。
●本来は昔からある「巻きずし」が主流ですが、現状はある百貨店で100種類超の恵方巻きを開発して販売するそうです。そこには「商品を開発し」それを「不特定多数の顧客に」訴求して販売しようという意図があります。
●購入するお客様像を想定しているのかいないのかはわかりませんが、概ね考えていないでしょう。節分には恵方巻きというブームを創り(最初に目を付けたのは数年前のコンビニです)、それに乗っかるために主流の商品プラス亜流の商品開発を行ったのです。
●これによって「節分の日」をクリスマスのように家族のイベントにしようというたくらみです。クリスマスケーキと同じ位置づけですね。商品でもって既存の生活シーンに切り込んでいくのがマーチャンダイジングストーリーです。そこには商品の大量販売という意図があります。
●この後のバレンタインデーのチョコレートも同じような発想で開発されたものです。だれかが火をつけたイベントを発展させ様々なデザインと味のチョコを開発しているからです。
●他にも2012年のヒット商品「マルちゃん正麺」シリーズ(東洋水産)などもこれに属します。インスタントの袋麺ながらも生麵の感覚で食べられるラーメンを開発して、消費者のこころを掴み動かせました。
●内食傾向を読み、1人暮らしも、ファミリーも対象にして本物志向のインスタントラーメンで実質販売価格は1食80円前後。この分野での松竹梅クラスの松商品のポジションを取ったのです。見事な成功例ですね。
●ではマーケティングストーリーの事例はなんでしょう?先の節分の日にはそのような試みはまだ見られません。(広いこの日本のどこかでやっておられるかもしれませんが)
●ですが、近年バレンタインのチョコをお客様の状態を想定(顧客像の想定とも言います)して、「本命チョコ」と「義理チョコ」と「友チョコ」に分けたのはマーケティングストーリーでしょう。お客様の用途を考えています。
●また恋人たちを想定して、その日に「食事を楽しんだり」「デートを楽しむ」生活シーンを想定して、そのパーツとして豪華なチョコを売り出すのはマーケティングストーリーです。消費者にとってチョコレートはその楽しみをバージョンアップするツールでもあります。
●そこにどのようなメッセージを添えるか、本命だけに対する付加価値は何を
持って行えば効果的かなどの選択肢を提案することができます。そこには売り手の価値観が反映されます。「この日をどのように素晴らしいものにしていただくか」という思いが、想定したお客様像別に考えられるはずです。
●ただ数をさばけば良いという発想ではできません。先の「義理チョコ」でも数を売るというだけでなく、それを買い求めるお客様の状態を想定すれば、会社の人間関係、友人関係、家族関係、ビジネスで使われる方向け(昔スナックで貰いました)など用途によって適したものを分類してお勧めすることができます。
●結果的には売上拡大を目論むのですが、そこには単品の大量販売という発想ではなく、1人の想定したお客様からより多くの金額をいただくという結果を期待されています。
●春商戦は、昔から「新入居」「転居」「結婚」「出産」「独り立ち」「転勤」「入進学」などの人生のイベントが盛んな時期です。この時期にはお客様の状態を考えたマーケティングストーリーが売上アップ(必要性に気づかせて売る)につながります。
●そこには、生活上のメリット(利点)、ベネフィット(便益・効用)を先に立て、最適な商品やサービスの選択肢を提案していくというストーリーが必要なのです。
●この2つのストーリーづくりをどのように行うかについては「販売のストーリー化」のところでもう一度ご紹介します。今回はその違いを知っていただいて、春商戦ではマーケティングストーリーの出番だということをお伝えしておきます。
●尚念のためマーチャンダイジングストーリーは、ビジネスの基本中の基本ですからこちらの方が7割ぐらいのウェイトで重要だと思っています。なぜなら世の中の需要を創るのは「商品開発」が出発点になっているからです。
●よく言われていますが、「お客様の声で商品は開発されない、誰かが開発して提供された商品に対して顧客は商品を評価し、選択するものだ」というのは真理です。ラーメンから家電、車まであらゆる分野で商品を開発する人、単品の価値を見出し調達する人にとって、マーチャンダイジングストーリーは欠かせません。
●最後にマーチャンダイジングストーリーの注意点は、いい加減なストーリーだと「低価格競争」にしかその価値が見出せないということです。多くのお客様が熟知商品はより低価格を求めるという現実があります。
●それはそれで対応するしかないのですが、何もかも同じように考えないことです。民間のビジネス事業者がそれしかないと考えるならデフレからの脱却も難しいでしょう。
●それを防ぐ手段・方法としてマーケティングストーリーと両刀使いでこの春商戦の「必要性の喚起から販売」に挑戦してください。
●マーケティングの基本の「き」は①「何を」「誰に」、②「誰に」「何を」③「いかにして」売るかということを考えることです。①がマーチャンダイジングストーリー、②がマーケティングストーリーの出発点です。いずれにも③が必要です。それを考えるのがビジネスに携わる人間の簡単ではありませんが、価値のある仕事です。ぜひチャレンジを!<完>
- 登録日時
- 2013/02/02(土) 10:01