【2013年2月の提案②】
チラシのパターン化<その2>
●2012年7月に<その1>をアップして忘却しておりました。期待されていた方には申し訳なく思います。すいません。冬商戦前の11月に書くべきでした。まもなく春商戦の開始です。そこに合わせて「チラシ制作の企画」にあたられる方を想定して書きます。
●春商戦でなくともスーパーマーケットと家電量販店の新聞折り込みチラシは毎週のように投入されています。この時期に多くなるのは、自動車ディーラーと携帯電話ショップと学習塾です。
●新聞に折り込まれるチラシはプロが制作されているので「表現方法」のデザイン・配色などには大きな問題点はありません。ですがその「内容面」「要素の配置」「キャッチコピー」などをチェックいたしますと、これで本当に成果があるのだろうかと思われるものも多々あります。
●今回はチラシの目的である「見込み客の集客」をねらいとして、手作りチラシも想定しながら、現場でチラシ企画を担当される方に役立つ【内容面】の企画の手段・方法について述べます。
●タイトルは前回との関連から<その2>としましたが、正しくはチラシ制作のパターン化とした方が適切です。
●先般の「不易流行」のコラムに書きましたように、「不易」の部分にあたることを書きますので、各業種・業態ごとにはご自身の業界の状況に合わせて「流行」の部分を考えてください。
●まず企画する思考法の基本から。それは①ねらい(目的と目標)の確認および明文化 ②現状の実態把握と分析 ③課題の抽出 それから④手段・方法を考えるという手順を踏むことです。(それ以外の方法でも構いませんが・・)
●まず「ねらい」のうち目的には2つの側面があります。中長期に追い求めるのは会社のビジョンや理念が具体化されたものです。短期にはそのチラシの投入で【何を誰に伝えてどのような反応を得ようとする】のかを明確にすることです。
●前者は会社として顧客にわかるように具体化して訴求し続けるという方針が必要です。後者は今回の企画内容で何を得たいのかを数値目標以外の要素で明らかにすることです。
●そして目標は数値目標(予算)として何とかしなければならないものを設定します。ところが数値目標のみを前提とした企画にはどこかで成功したものや、従来と変わらない手段・方法を求めたり発想するという弱点があります。
●そこで目的を目標と整合させて【ねらい】を定めなければなりません。そこには企業(店)側の価値観が表現されます。特に短期の目的は中長期の目的の影響を受けます。
●ここのところは大事なところです。よくお考えください。そしてねらいを決めたなら、自分たちの置かれている状況の実態把握が必要になります。
●目標とする予算数値にとらわれていきなり対策手段を考えていないかという自問自答が必要です。実態を無視した思い込み(先入観)を廃して、謙虚に現状を見つめることから始めなければなりません。
●見るのはお客様の反応(商品と提供手段・方法が主な対象)、商品の動向、競合の動向です。それは実績数字をも交えて見る必要があります。そしてそこから何が要因で現在の結果があるのかを掴む(洞察する)ことです。
●但しそこから必ずしも決め手となる要因が見つからない場合があります。その場合は、こうではないかという仮説を立てることです。この時は自分の経験や見識からくる思い込み(先入観)が入るのはやむを得ません。
●ですが、ここで思い込みに捉われないために多面的に推測するという思考が必要です。いろんな立場に立って考える「立場思考」と、様々な角度から考える「多面思考」を意識して、過去の成功が必ずしも未来の成功を約束するものではないという注意が必要です。
●そしてねらいと現状実態を見極めた中から「課題」を見出し、それから対策となる「手段・方法」の構築に取り掛かります。今回はそれを効果的に行う「手順」の一例をお伝えしましょう。
●チラシの目的は繰り返しになりますが「わが社(店)が期待する見込み客数の集客」です。このことを前提に考えていかねばなりません。まず行うのは・・・
●①期待する見込み客の顧客像を想定して明文化することです。
どのような状態の顧客像を対象に想定するかによって、その後の手段・方法が具体的かつ的確なものになります。これが大事です。
●拙いのは「地域の住民全般」と考えることです。もしそれしかない場合は人気商品の低価格政策と品揃えの豊富さしか訴求するものがなくなります。総合量販店やスーパーマーケットや家電量販店ならそれでもやむを得ないでしょうが、それは多くの小売業にとって得策ではありません。
●②対象とする顧客像が抱えている問題意識(悩みや達成したい欲求)を明らかにします。これはチラシの『キャッチコピー』を開発するのに必要になります。これを「問題提起・解決型」のパターンといいます。
●問題提起・解決型のキャッチコピーのコツは「問いかける」ことです。悩みは「○○で困っておられませんか」、達成したい欲求は「○○になりたい、○○を実現したいと思いませんか?」と問いかけて、それを解決するのはこれです。それはこのような○○(効用のこと)ができるからです。その理由(証拠)は・・・と続けます。
●他にもお馴染みの「低価格訴求、割引訴求型」と商品の特長がもたらすメリット、ベネフィットを訴求する「商品の価値提案型」あるいは「売り手の主張型」パターンなどがあります。ですがこの春商戦で必要なのは問題提起・解決型だと考えます。
●③訴求したい手段・方法となる要素を最低7つ考えます。「7・5・3の法則」と言って1回のチラシで訴求する要素を7つか5つか3つにすると読者は記憶しやすいという経験則です。要素とは商品の訴求であるとか、買いやすさ、買った後のサービスのことなどです。
●この内容のうち7つなら3つは他社に勝るという「特長」であるべきです。この場合の特長はマーケティング用語で「USP」ユニーク・セリング・プロポジションといいます。他と差別化する優位的な顧客にとってのメリットとなる要素です。(5つと3つなら2つは必要です)
●これが平凡だと読者へのインパクトは弱まります。提供できる要素を自分たちなりに「強度レベル」1から5で評価しておくことも必要です。強度4、5レベルのものを創っていかないと生き残れないでしょう。
●④もう一つの視点が、訴求する内容(要素)が対象とする顧客に対して市場における最大のメリットとなっているかということです。競合との相対比較が必要です。
②で述べた対象顧客の問題意識の解決策を提供しているのであるということが伝わらないと、顧客のこころや行動を動かすまでにはいたりません。
●またそれは簡単に真似をされないものである方が強いでしょう。これは現場だけではできない企業レベルで考えた仕組みである方か良いのは言うまでもありません。
●メリットは利点ですが、これが顧客のベネフィットに翻訳されていれば申し分ありません。ベネフィットとは特長となるメリットがもたらす便益(効用)です。それはお客様が実現できた状態で表現されることが望ましでしょう。
●これが「キャッチコピー」と一対で表現されなければなりません。問題提起型のキャッチコピーにプラス解決策としてメリット、ベネフィットを表現するのがチラシの中核部分です。
●⑤最大のメリットを実現されるために何か「保証されるもの」はあるかということです。証拠を示すといっても良いでしょう。それなら読者から期待できる、安心できると思われるものが必要です。
●家電量販店が行っている「価格保証」「返品保証」「修理保証」などの制度はこれにあたります。これらは買った後の懸念を解消するというメリットを保証するものです。
●⑥対象顧客に行動に移してもらう「オファー」は何か。オファーとはマーケティング用語で、顧客に購入への第一歩を踏み出させる仕掛けのことです。
●たとえば「割引クーポン券」「無料体験会」「初めての方のための購入ガイドプレゼント」など、対象とする顧客が試してみようと心を動かし、行動につなげるように仕向けるものです。申込みがしやすく顧客にとってリスクの低いものを考える必要があります。
●⑦それでも来店や問い合わせをためらう人を想定して、背中を後押しする「特典」はないかを考えることです。
コストとの相談がありますから、少ない費用でテストをできるものを考え出し、試すしかありません。
●以上、7つのポイントにまとめました。ポイントといってもバラバラの要素ではなく、①から⑦の手順でストーリーを考えてください。そうすればあなたの企画に芯が(軸でもいいですね)できるでしょう。
●最後にチラシの目的は「期待する見込み客を集客すること」です。これを目標に置き換えると、①目標とする見込み客数を集める ②ゴミ箱に捨てられない ③内容を読んでもらえる ④読者の期待を高める ⑤読者に行動してもらうということになります。
●これらの目標を課題として、手段・方法を考えれば効果的なチラシ制作が可能になるでしょう。お試しください。それを繰り返しテストするしか有効な答えは見いだせません。その場合ストーリーがあれば、どこの部分を修正すれば良いかがわかりやすくなります。
●ストーリーづくりのパターンを持つだけで思考の生産性はアップします。仕事の基本を学ぶことは明日への展望が開けます。今壁にぶつかっている人もあきらめないで!(真矢みきさんのCMから-ちょっと古いか・・・笑)
●これを書いていた2月4日、5日に近隣の学習塾のチラシが8社分投入されました。今が旬なのでしょう。急ぎ今回の手順をベースに簡単な実態把握と分析をしています。明日にはアップしますので参考にしてください。<完>
- 登録日時
- 2013/02/06(水) 11:48