【今月読んだ本①】
小説『犯罪者 上・下』で共感した記述から学ぶ<1>
●今年になって読んだ2冊目の小説、太田愛さんが書かれた『犯罪者 上・下』はとても面白かったです。上下2冊で800ページ余のクライムサスペンス小説です。著者はこれがデビュー作のテレビドラマなどの脚本家です。紹介ではテレビドラマ「相棒シリーズ」の脚本もいくつか手がけられているようですね。
●小説の面白さはアマゾンの書評などに譲るとして、私はこの小説を読みながら「そうだそのとおり」と思ったことや「なるほどそういうこともあるな」と共感したことについて書きます。
●私はビジネス書を読む時は必ず付箋をそばに置いて読みます。参考になる個所には付箋を添付します。あとで読む時に便利だからです。小説ではそういう習慣がなかったのですが、十数年まえから気に入った記述やセリフにであうと付箋を添付するようになりました。
●今回は作者の太田愛さんが小説の中で再現された見識、意見をもとに、私が共感した記述及びセリフを取り上げ、ビジネスライフにおいて役に立つと思うものを紹介します。全部で10個ありましたが、そのうち5個を2回に分けて取り上げます。
■最初は、上巻153ページより。小説の部分は『 』で表示します。セリフは「 」表示です。
●『人間は被説教者が反論をしたり周囲が止めようとしたりしない限り、1人でそう長くは怒り続けられない生き物だ。次第に語彙が尽き、「そうだろう?」とか「なんでそんな事をしたんだ?」など、相手に同意を求めたり質問をするなどしてコミュニケーションを図ろうとし始める。
●この段階に至れば、説教者が酔っ払っていない限り終わりは近い。酔っぱらいはこの過程を力尽きるまで何度も最初からひとりで繰り返すことができる。』
●クレーム対応をされた方ならお分かりだと思います。私の経験では40歳から約10年間、現場のマネージャー経験でお客様からのクレームで幾度となく記述のような場面に出くわしました。
●また54歳の時には会社が民事再生法を申請したため、その後の対応で取引先に伺った時に何人かの社長さんに罵倒されました。
●最初は怖かったのですが、仕事ですから逃げ出すわけにいきません。何度か対応しているうちに上記のことがわかるようになりました。反論せずに誠意をこめて聴いていると普通のお客様は矛先をおさめていただけました。
●ところが全てがそういう方々ではありません。こちらが攻撃に耐えられず根負けすることもあります。屈辱に涙を流したこともありました。相手が天才的な交渉人で長きにわたり弄ばれたこともあります。
●例外を除いては上記の記述は正しいでしょう。逆に先輩の録音テープで最初から反論をして相手を激昂させた事例も何度か聞きました。「おっしゃることはわかります。ですけどね・・・」で相手は爆発です。(笑)
●しかし、何でもかんでも黙って聴いていればOKではありません。相手が論理的な人の場合、たまに感情に走って主旨とは違う個人の人格攻撃をした場合には、一発ガツンと反論すべきです。相手が「それは失礼」などと言えば体制を立て直すきっかけにはなります。
●相手ののど元に噛みつくような真似は厳禁ですが、手先をちょこっと噛むぐらいは時に必要な対応です。
■上巻224ページより。
●『鑓水(登場人物のひとり)は人から話を聞く時には最初に手渡す菓子折りとは別に、必ずその場で一緒に食べられる気軽なお菓子を持参する。途中で雰囲気を変える小道具だが、これが意外と役に立つ。ことに包みが可愛らしい信玄餅などは大方の老若男女を和ませる。』
●これはやったことがありませんでした。なんとなく効果があるような気がします。クレーム対応ではなく普通の商談や関係維持の訪問、プライベートな人間関係では役に立つでしょう。
●私の経験では手土産を持って訪問した先で、相手の方が女性の場合一緒にいただきましょうと言ってお茶を出していただくことがあります。状況によりますが、この手は試される価値はあると思います。
●これも先のクレーム対応の経験ですが、私を弄ばれた方の常套手段を紹介しておきます。最初の頃、「これはつまらないものですがお納め下さい」と言って差し出したとたん、「つまらんものなら持って帰れ!」と大喝されます。その迫力で「びびってしまい、頭が真っ白になりました」。
●負い目のある方は最初の一喝で動転してしまいます。そこからは相手のペースです。この場合は手土産の菓子折りが場を和ませてくれる効果は望めません。
この手口は手土産以外にも「おじゃまします」と入っていくと「邪魔なら帰れ!」というのがありました。
●今となっては懐かしい思い出です。(笑)小心で善人(?)な私は弄ばれたのでしょう。しかしその経験で私は鍛えられました。そうでなければ一度ぐらいは病気になっていたかもしれません。なんとか切り抜けてきたのは「どんなことがあっても生き抜く」という決心・覚悟があったからだと思っています。(笑)<明日に続く>
- 登録日時
- 2013/02/19(火) 13:41