【2013年3月のトピックス②】
2つの言葉の違い その4『技術と技能の違い』
●中堅小売業の教育体系というのを考えて創っていたところ、能力要素で接客技術や陳列技術、販促技術などという言葉が出てきます。ところがこれを能力体系としてまとめる時に、「技術」ではなく「技能」ではないかという疑問がわきました。
●一般には接客も陳列も販促も「技能」とは言いません。「技術」ですね。なぜだろうと思って調べたのがこの2つの違いです。すでにお分かりの方にとっては「今頃何言ってんだ」ということだと思いますが、私と同様に疑問に思われた方は一緒に考えてみましょう。
●例によって「ネット検索」をすると、「技術」とは。物事を取り扱ったり処理する際の手段や方法を行う技のこととあります。これを少し掘り下げてみたいと思います。
●例えば接客技術なら、お客様が求められる要望(用件)を掴み、それを満たすための解決策として最適な商品やサービスをご提示して、納得して買っていただくこと、と定義できます。
●もう一つの視点はお客様がお気づきでないこと、ご存じないことをその必要性を提案して買い気を高め、該当する商品やサービスを納得して買っていただくこととも定義できます。
●陳列技術は業種・業態及び販売方式(セルフ販売、セルフセレクション販売、接客販売、密着販売など)によってその定義が異なります。
●販促技術も「売る前。売る時、売った後」の時々に必要な機能によって変わります。また商戦や商品のライフサイクルごとに変化します。これらは言葉の定義だけでなく、「ねらい」「手段・方法」「手順」「注意点」などを具体的にしたものを総称して「技術」と言うのです。
●では技能とは・・・、ネット検索では、あることを行うための技術的な能力、腕前のこと、とあります。能力ですから人や仕組みや機械に備わった「力量とか性能」と言えるのではないでしょうか?
●例えば、接客技術を要素に分解すると10個の機能で構成されていたとします。その10個のことを「技術」と言い、そのひとつひとつを身につけて実行できる力のレベルのことを「技能」と言えば理解しやすいのではないでしょうか?
●技術は進化し、発展もします。それは明文化することも可能です。(マニュアルやチェックリストなど)少し学術的な言葉を使えば、野中郁次郎先生らが提唱される「形式知」と言ってよいでしょう。
●技能も進歩、向上します。人の場合は10個の機能をまんべんなく満点とはいかず、その習得度合いはバラツクのが現実的だと思います。しかしある機能が突出して磨かれ、既存の技術の限界を突破することもあるのが技能の特長でしょう。
●技術は特定個人の技能の錬磨で進化、発展する場合と、複数の人間の衆知が結集して限界を突破する場合が考えられます。野中先生らの言葉では「暗黙知」と言われるものです。
●暗黙知は明文化しにくい、人やチームに備わった知識(能力)です。これは形式知化することも求められますが、どうしても経験を積んでコツを覚える(体得する)しかないものがあります。
●同じことを行っても、人によって成果、出来栄え、相手の反応が違うことが沢山あります。私たちはこのことを経験ではよく知っていますが、うまく説明できないことが多々あります。
●技能は技術のある機能をどこまで実行できる能力が身に付いているかということと、技術では明文化できない領域のこと(暗黙知)を含んだものであると理解すべきでしょう。
●それを組織の中で「能力体系」としてまとめる時には、技術と技能の違いを明確にして表現をしていくべきです。そして何よりも大事なのはまとめるだけでなく、それをベースに「実態の中で進歩、向上させる」仕組みを作り上げて、
そこから学びとり組織として伝承できるようにすることです。
●それが中堅企業のみならずあらゆる組織の教育体系(手段)というより能力開発体系(目的)を創っていく「キモ」になるのではないでしょうか?
●「技術」と「技能」の違いを考えながら思考を発展させてきました。「小さなことを掘り下げる」習慣は新たな展望を見出すことにもつながります。ぜひお試しください。<完>
- 登録日時
- 2013/03/05(火) 12:12