【2013年4月のトピックス②】
バレーボール 中田久美監督のリーダーシップ
●昨夜のNHKサンデースポーツ(4月21日)に元全日本バレーボール代表で、現在は久光製薬の監督の中田久美さんが出演してインタービューを受けていました。
●1週間前にVプレミアリーグで6季ぶり3度目の優勝を達成した新聞記事を切り抜いていたのを思い出し、それを見ながらこのコラムを書いています。今日も韓国の実業団の優勝チームと戦って3対0で快勝していました。
●中田監督は昨年7月から久光製薬の指揮をとるようになり、初年度で優勝に導いたのです。その要因を新聞記事と10分程度のインタービューでしたが、リーダーシップの取り方のヒントになると思うのでご紹介します。
●中田監督はそれまで優勝から遠ざかっていたチームをどのようにして改革したのでしょうか?その要因のポイントは①スポーツ選手としての基本の徹底
②優勝するという意思表示 ③厳しい指導姿勢と若い選手の登用 ④選手の自主性の重視 ⑤めざすは「世界」「世界」「世界」という高いレベルの目標設定
の5つです。
●まず①は「毎日の練習後の掃除」の徹底とスポーツ選手として身だしなみ、それは具体的には「茶髪の禁止」です。その理由としてアスリートは自分のやっているスポーツで自己主張すべしということ。(中田さんは一般的に髪の毛を染めることは否定していません)
●②はそれに向かって練習をするというリーダーとして強い意志。今年に入ってチームが2連敗した時にキレて、試合後に帰ってしまった。「許せない!」「何でああなるの」「次の試合の先発は自分たちで決めなさい!」と突き放して。
●理由はあまりにも試合内容が悪すぎたそうだからです。(私は見ていないので詳細はわかりません)但し、中田さんはこの行動には「何も根拠はなかった」と言っておられました。しかし選手たちには相当ショックを与えたようです。
●これは③にもつながるのですが、リーダーが本気で本音で怒るというのは能力のある選手たちには堪えるものだと思います。その後主将の古藤さんがチームをまとめながら中田監督と相当話し合ったそうです。
●④につながるのですが、ポイントは、このチームは調子が良い時と悪い時の差が激しいことにありました。『調子がよくなるのはどうしてなのかを考えさせた』と中田さんは言っていました。どうすればスイッチが入るのかそれを徹底して考えさせたことが連敗から脱出して、ワンランク上にチームが行けたようです。
●練習メニューを自分たちで考えさせるとか、先発を選手同士で選ばせたという手段も優れていますが、私は『』で書いた課題こそが一番重要だったと推測しています。
●古藤主将は選手たちに「言われなくても自ら考えてやる意識変化が生まれた」と述べています。中田監督もこの突き放しのあと、明確な根拠があっての行動でないため、その後のチームの動きについてはスタッフを通じて情報収集をしていたそうです。(これも素晴らしいですね。)
●きっかけは計算づくではなく感情を爆発させた中田さんですが、その後のフォローは冷静に行っています。こういうメリハリのある行動はリーダーには必要です。
●ですがこの手段は繰り返し使うことはできないでしょう。今度は冷静に「考えさせる課題を与える」必要があると思います。勝利からも敗戦からも学ぶチームになればさらに強いチームになるでしょう。
●また感情を爆発させることもあろうかと思いますが、それは今回と違った局面であってほしいと思います。その時はある程度の根拠を持って対応して欲しいですね。
●新鍋や岩坂という現在の日本代表を擁する久光製薬ですが、中田監督は21歳の長岡、石井という経験の少ない若手を起用し続けて優勝に導いています。経験を積むことで「メンタルも技術も向上した」と言っておられます。
●言って聞かせるだけでなく「行動をして身につけさせる」ということが重要だということがあらためてわかります。
●最後に⑤のリーダーとして最も大切な仕事である、未来に向かっての目標と方向を示すということを、強い信念で行っていることです。これは世界をまたにかけて活躍してきた中田久美さんだからこそ迫力があります。
●リーダーが示す未来には『その人の価値観が反映』されていないとメンバーに現実感を持って受け入れられません。
●中田さんは「私はバレーボールをやるからには世界を目指す、これしか知らない。ロンドンオリンピックで銅メダルを取ってこれで終わりではない。常に世界で強いチームであるために、自分の率いるチームから全日本に選ばれる選手を輩出したい」と言っておられます。
●中田さんならではの言葉ですね。若い時に全日本のセッターとして活躍した中田久美、オリンピックだと思いますが、負けた時に大きな瞳に涙を浮かべ悔しそうにしていたテレビ画面の姿が思い起こされます。
●負けん気と、自分が世話になった日本のバレーボールに貢献したいという思いは、新たな指導者として第一歩を踏み出されたのではないでしょうか?やがて全日本チームの監督になられるよう研鑽してもらいたいものです。期待を込めて。
●5つのポイントはビジネスパーソンにも役立つ要素です。何か1つでもヒントにしていただければと思います。<完>
- 登録日時
- 2013/04/22(月) 17:24