【今月読んだ本①】 2013年7月23日
半年で職場の星になる! 働くためのコミュニケーション力
山田ズーニー著 ちくま文庫 640円+税
●著者の山田ズーニーさんは私の独学の師匠の1人です。特に「伝わる・揺さぶる!文章を書く」(PHP新書2001年)には長らくお世話になっています。そんな山田さんが今回2010年に書かれた同書の元になる「新人諸君、半年黙って仕事をせよ」を改訂され、今年4月に一般社会人向けに出版されました。
●ちょうど5月に仕事の基本についてまとめをしていたので手に取りました。
内容は私の期待を上回るものでした。同時にこれで新入社員向けとはレベルが高いのではというのが率直な感想です。ま、私のレベルが低いのかもしれませんが・・・。
●出版社が広く一般社会人(といっても組織で働く人々が対象ですが)向けに、「一生通用する本物の基礎が身につく!」と本の帯に書くのがわかる内容です。1回読むだけでなく、手元において自分が現実に直面する課題ごとに参考にされると良いでしょう。
●本書のねらいはタイトルに表現されています。『半年で職場の星になる』が目的で、その手段が『働くためのコミュニケーション能力』です。長いタイトルですが、目的と手段が同時に表現されています。
●半年で職場の星になるでは意味が曖昧ですが、著者はそれを『半年で「一緒に働きたい」「できる!」と思ってもらえる仕事人になること』と意味づけをしてくれています。
●内容は3章で構成されていて、第1章が自分のメディア力を持つことを提唱されています。ポイントは上司から信頼される話の聴き方、報告、説得について類書にない視点で書かれています。
●第2章は人をわかるチカラ・伝える技術です。ポイントは意見を通すための翻訳力、社会に通用するお詫びの仕方、企画書、メールの書き方、クレーム対応です。ここでも山田さんの実体験からまとめられたノウハウは実践的です。
●第3章は一緒に働きたいと思われる・人を動かす表現力です。ポイントは人を動かす技術、目標設定の4つの視点です。いずれもなるほどと思わせてくれます。
●本書の特長は「なるほどと思える内容」を「リアルな事例で学ばせてくれる」ところです。たとえば、一発で信頼される聴く技術のところでは、「3人の新人」を登場させ、それぞれの聴き方を具体的に会話文章で提示して、あなたが上司だったら誰を信頼するか?誰と一緒に仕事をしたいかという問いを立てて考えさせます。
●それから3人の対応を解説して誰の聴き方が優れているのかを解説してくれます。これは著者がベネッセ進研ゼミの編集長をされていただけにお手のものでしょうが、問題を創る難しさを感じている私などはおおいに参考になります。
●この方法は読者に結論を伝える前に「自分の頭で考える」セッションを自然と随所に設定していることで、「読みながら自分の状況を想像しながら考える」いうことができるメリットがあります。
●以下、内容で私の印象に残ったものを7項目あげておきます。詳細は本書をお読みになって確かめてください。全部で11項目メモをしましたがその中の7つを選びました。仕事の基本になる項目ばかりです。
●①人を説得する力とは、人を変える力ではない。「人を認める力」だ。新人よ、上司を説得するな!いまあなたにとって「説得力=人を変える力」ではない。「人を認める力」だ。上司を理解しろ、そして認めろ。(いいですね)
●②「説明・指示・報告」、求められたら、はやる心を抑え、深呼吸してまず、自分の頭に全体像を思い浮かべよう。そして、もっとも大きい面積を占めることから順に伝えていくことだ。(練習すべし)
●③意味・流れ・関係を語る。これが社会人には鉄則だ。(ぜひ本文を・・・)
●④大人のお詫びの三要素は、「反省」「謝罪」「償い」だ。プラス「原因究明」「今後の対策」で五要素となる。お詫びの主役は相手である。自分が悪いんですという「自虐おわび」は、無自覚に人からパワーをもらおうとするから始末が悪い。(これは奥が深い)
●⑤わかりやすい企画書の書き方。分かりやすい文章にするためには、
1、主語を明らかにすること
2、しかも人間を主語にすること
3、主語を曖昧にすると怪しい受動態が出現するので要注意。(そのとおり)
●⑥相手に「なるほど!」と思わせる技術。
説得力は事実→考察→意見の三段構造で話せ。(練習すべし)
●⑦目標設定の4つの視点。
1、仕事理解(会社の方針と自分の担当の仕事の理解)
2、社会理解(業界をめぐる社会背景や顧客の理解)
3、自己理解(自分の能力、経験、資質の理解)
1と2と3のつながりをよーく考えて
4、目標設定(将来の展望) (これは本文で確認を!)
●最後に私が最も共感した言葉を「文庫のためのあとがき」に著者は書いておられます。抜粋して紹介いたします。サラリーマン時代に実践し、なかなかやりきれなかったのですが、こころの支えにしていた考え方です。
●『会社員の自由』
「会社を選んだ以上、分業を選んだのだ。分業を選んだ以上、他の持ち場と分かり合うために、コミュニケーションに骨身を砕くのは当たり前だ。なぜそうまでしてチームで仕事をするのか。それは個人では一生かかっても出来ない規模で社会に働きかけるためだ」。
●という考え方を読み返して、ここに会社員の自由はあると気づいた。-中略-働く自由は、いま職場で、目の前の1人の人間と通じ合うコミュニケーションにある。その人間を本気でわかろうとし、骨身を砕いて自分の意志を伝えようとする人間こそが、職場を自由に動き回り、組織を自由に動き回り、この社会を自由に動き回って働きかけることができる。
職場の星とはそういう人のことだと思う。
●ぜひ一読し手元に1冊おいておかれると役に立つ本だと思います。<完>
- 登録日時
- 2013/07/23(火) 15:12