▲12月19日付け朝日新聞の全面広告
【2013年12月のトピックス④】
素晴らしいドコモの商品紹介の新聞広告
●久しぶりにドコモの商品紹介広告に感銘を受けました。その理由を分析しながら紹介します。
●その前に同日(12月19日)の記事の中に作家の高橋源一郎さんが書かれたものが掲載されていました。そこでは朝日新聞が反対キャンペーンを展開する秘密保護法についての見解がのべられています。
●高橋さんは我が国の秘密保護法とツワネ原則について比較されています。その中で私が注目したのは「内容」ではなく「言葉の意味のわかりやすさ」について言及されていることでした。高橋さんは日本の秘密保護法の全文を読んでも分からない言葉が多いと指摘されています。
●それに比べてツワネ原則は書かれていることの意味がわかりやすいという指摘です。意味が分かりやすいか分かりにくいかは読み手にとって重要であり、分かりにくさのうえに運用でどうにでも解釈できるのは怖いという主旨です。
●私は両方ともネットやテレビの要約版の比較表を読んだだけですので、どちらも言わんとすることはよく分かりました。ですが全文となると読めていませんので、そこはプロの作家である高橋さんの指摘が正しいと判断します。
●そこで今回のドコモの広告に感銘を受けた理由を述べます。それはキャッチコピーから商品の説明コピーまでいつになく『分かりやすい』ということです。それはかねてからの私の主張に近いと共感するからかもしれません。
●以下の解説を読みながら読者のみなさんはどのように思われるか、ジャッジしてください。そしてドコモショップや量販店で働かれている読者がおられましたらぜひ店頭のPOP広告、販売ツールに反映させていただくとともに、接客応対でお客様へのセールストークに活用していただきたいと思います。
●まずキャッチコピーの『これほどの高性能が、これほど手になじむなんて。』についてです。素晴らしいと指摘したいのは「高機能ではなく高性能」という表現をされていることです。
●私は過去の研修で幾度となく機能は多いか少ないかで表現するものであり、ひとつひとつの機能は性能で表現するのが正しいと訴えてきました。ですがマスコミではしばしば高機能ケータイや高機能スマホという言葉が使われています。
●機能とは何ができるかということを表すもので、性能とはその品質を表すことばです。ですからすでに普遍している機能は新製品の発売ごとにその性能がアップされるのです。過去の商品にない機能が付加された時にのみ新機能搭載とすべきです。
●これは機械だけでなく組織でも言えることです。目的・目標に対する役割分担を表す組織図の各部門はひとつの機能です。機能の集合体が組織ですね。その機能がどのような能力を備えているかは性能で表現されるものです。
●横道にそれましたが、機能と性能の使い分けについてはお分かりいただけたのではないでしょうか?くどいようですが、スマートフォンでは機能は「多機能スマホ」と使うのが正しいのです。機能が付加されていないなら「高性能スマホ」ですね。
●次に7つの機能の特長を分かりやすい言葉で表現されています。7つにしたところも良いですね。「7・5・3の原則」というのがあって、商品の特徴や特典の数を訴求する時に使われます。それは人の脳が覚えやすい数だからです。
●ではひとつひとつ見て行きましょう。
●①『4.3インチは、手のひらがいちばんよろこぶ、大画面です。』4.3インチ=大画面ではわかりにくいのを、「手のひらがいちばんよろこぶ」と抽象的な表現にしたことです。
●抽象的な表現は読者のイメージをふくらませる効果があります。しかも「・・・いちばんもよろこぶ」も平仮名にして4.3インチと大画面という固い表現を和らげています。これによって読者が4.3インチ=大画面&手のひらに合うがイメージしやすくなっています。
●そしてその下にややフォントを小さめに薄くして書かれているコピーで、主張していることの「理由」が述べられています。ここでも機能と性能との表現が正しく使われています。
●②『カメラのついたスマホではない。ソニー製カメラのついたスマホである。』
これはソニーのブランドイメージが高いという自信の表れですね。
●その理由も納得性があります。2070万画素という専門用語ははじめてここで使用されています。
●③『たった1台で、9つの世界が手に入るカメラ。』サブコピーで撮影する時に9つのエフェクトが楽しめるとあります。「ピクチャーエフェクト」とは専門用語でよくわかりません。が、写真でどれか9つのシーンを選べるということがなんとなくわかります。あとは店頭で確認すればよいことです。
●④『最高の一瞬は、狙うより、選ぶ方がカンタンだ。』サブコピーで30枚の連写ができるので撮影後にお気に入りの1枚が選べるというということのようです。ゴルフのスイング写真の撮影にはぴったりだなと思いました。
●ここまで②③④については「カメラ機能の性能アップ」について掘り下げた特徴なので「カメラ機能」として1つととらえることができます。ですから最終的には5つの機能の性能アップを伝えていることになりますね。
●⑤『2泊3日の出張だって、充電いらず。』スマホの利用者の最大の懸念である電池の持ち時間についてサブコピーでも解説してくれています。とてもわかりやすい文章で書かれています。ここだけでも店頭でクローズアップすれば良いでしょう。
●⑥『寒い日は、手ぶくろと、手ぶくろモードを忘れずに。』時節柄必要性の高い機能です。手袋をつけたままで操作ができる、とても分かりやすい内容ですからどなたも納得ですね。
●⑦『このスマホ、音楽プレーヤーとしても一流です。』ウォークマンで一世を風靡したソニーならではの自信の表現です。個人的にはこの機能が私のお気に入りです。これもブランド効果でしょう。
●そして最後に『しあわせは、ことし最後にやってくる。』とあります。素晴らしい締めです。
●さらに商品写真の配列がいいですね。左右の端にブラックとピンク、真ん中にイエローとホワイトです。端に濃い色の商品、それを挟むように薄い色、サンドイッチ陳列の効果です。これが各色を目だ立たせる最善の方法です。
●そしてブラックとイエロー、ホワイトとピンクというように無彩色と有彩色を交互に配列しています。これによってすべての色が引き立つようにしています。店頭では無彩色のブラックとホワイト、有彩色のイエローとピンクを並べる配列も行われます。どちらの方が効果的かは試してみてください。
●今回の新聞広告は私の言う「商品発想」からのストーリーで展開されています。ですがそこには「顧客発想」を意識した商品の特長(メリット)がコピーとして表現されています。それが読み手に「分かりやすさ」として伝わってきます。
●この広告のねらいは新製品「XPERIA Z1f」の発売を告知して、ドコモショップや量販店への動員をめざしているものです。商品の価値は十分に伝わっていると思われます。来店して確かめてみようという気にはさせているでしょう。そう意味では成功している広告と言えます。しかしお客様はiPhoneやGALAXY、シャープ、富士通製品との比較検討もされます。
●店頭ではXPERIAの価値訴求だけでなく、それらの商品との比べて選ぶ手助け情報が必要です。そこのところの創意工夫をしていただければお客様にとっては助かります。
●それに加えて、購入動機の刺激と購入後の安心感を伝えるのが販売店の役割です。そのヒントもこの広告の中に含まれています。それを引き出し訴求する、そういう努力こそお店の機能の性能アップにつながるのです。
実現していただければ幸いです。<完>
●腰痛の方も少しましになってきました。年内完治を目指します。(笑)
- 登録日時
- 2013/12/20(金) 11:35