【2014年02月の提案①】
経営の心・技・体とは:その1
●大相撲初場所は横綱白鵬の28回目の優勝で終わりました。先月綱取りを目指した大関稀瀬の里について本欄に書きました。たしか綱取りが絶望的になった9日目(1月20日)にアップしています。
●今後の精進を期待しての励ましの一文でした。しかし結果は23日(木)に関脇に陥落した琴欧州に投げ飛ばされて足を怪我してしまいました。挙句の果てに千秋楽は休場で今場所の負け越しが決まったのです。
●来場所は一転して大関陥落のカド番となりました。早く怪我を治して再起してもらいたいものです。「人間万事塞翁が馬」ということわざがあります。今年は「ウマ年」です。この故事にちなんでポジティブに取り組んで欲しいですね。
ただし反省を忘れずに、課題を見出して克服に取り組んでもらいたいな。
●稀瀬の里の心・技・体を書いた後、経営にも心・技・体で表現することがあるのではないかと思い付き本文を書き始めました。経営というものを擬人化したときに何があるのかという思いで書きました。経営者や経営陣の心・技・体ではありません。ですがちょっと参考にはなるのではないかと思います。
●少し長くなりそうなので2回か3回に分けてアップします。
まず経営における「心=こころ」とは何か、そこから考えてみましょう。
みなさんは何を思いつかれるでしょうか?
●ちょっと考えてみてください・・・・・。
●わたしは最初に「理念」ではないかと思いつきました。ですがこの理念というのと「企業ビジョン」との違いが曖昧なところがあります。
いくつかの会社を訪れましたが、この経営理念や企業ビジョンが明確に区別されて記述されているところは少なかったですね。
●それは私の視点の問題であって、それぞれの会社で理解され、社内に浸透していればそれはそれで良いのですが。
●私の中では、企業ビジョンが企業の目的・目標であり、理念はそれをどのような価値観、行動基準で実現していくのかを明示したものだという解釈をしています。
●企業というのは創業者の志(こころざし)と価値観(重視する考え方)によって「こころ」の部分が形成されていくものでしょう。しかし起業したての時は「これはいける」「自分がぜひやりたい」などという起業家の個人的な動機から始まるものだと思います。
●それを最初から明文化する人もおれば、そんなことはお構いなしに日々、必死に働くことで道を切り開いていく人も多いと思います。
●やがて起業したものが生き残り、企業として形成されていくにつれて企業ビジョンや経営理念が設定されるのが現実の姿ではないでしょうか。
●ですから経営理念は企業の創業時からの『過去の経験』によって導き出されることになります。経験における成功体験がその企業の経営理念として明文化されることが多いのでしょう。
●それに対して企業ビジョンは『未来に向かっての意思表示』です。それは過去の成功体験の延長線上に描かれるものが多くなります。しかし未来は不確かなものですし、政治、経済、見えざる競争相手、ユーザーの変化など必ずしも予測可能なものではありません。
●そんな中で自社の進むべき未来は、過去の延長線上にあると考えるだけでなく、その中身は変化に対応しながら未来にとって「価値あるもの」にしていかねばなりません。その時に価値判断基準となるのが経営理念でしょう。
●そこで過去とらわれ過ぎない未来への視野(広さ)、視座(高さ)、視点(目の付けどころ)が必要になります。このあたりが経営陣の重要な仕事になるのです。理念に従いつつ新しい未来を創造する、「言うは易し、行うは難し」の最重要任務です。
●「理念」と「企業ビジョン」は車の両輪のようであり、数年ごとにリニューアルされる必要があります。
●人のこころをマインド(知性)、ハート(感情)、スピリット(精神)に分解して認識することを、私はコトラー著書「マーケティング3.0」2010年朝日新聞出版刊で学びました。
●同書には経営理念という概念は出てきません。ミッション(なぜ)、ビジョン(何を)、価値(どのようにして)というのを縦軸に、ユーザーのマインド、ハート、精神を横軸に9つのボックスで構成された価値ベースのマトリックス(VBM)モデルが提示されています。
●本欄でも2013年3月にこのことに関するコラムをアップしていますので、興味のある方は参照ください。(タイトルはハートとスピリットの違いです。)
●私の中ではミッションとビジョンは一体のものであって、経営理念は別のものだという認識があります。このあたりは読者各位の見識もあるでしょうから、ご自分の見解を吟味いただければと思います。
●ここでのまとめとして、ミッションは企業の精神(スピリット)とマインド(知性)に重点をおいて構築されるべきだと提言しておきます。それに対して
経営理念はマインド(知性)とハート(感情)に重きをおいて明文化されるべきだと思います。
●なぜなら未来に向かっての構想は、チャレンジ精神旺盛なスピリットを元にそれをマインド(知性)で冷静に裏付けを取りながら可能な限り実現性の高いものにしていかねばならないからです。単なる言葉遊びの夢物語ではなく、次の経営戦略、事業戦略の構築に反映しなければならないからです。
●それに対して過去の経験から学び設定する経営理念は、働く人々のこころを動かす感情に訴えるものを、知性でわかりやすく、行動の規範、価値判断基準となるようなものにしないと、お題目になりかねないからです。
●尚、創業の精神(起業の精神)という創業者の思いや成功談、苦労話は物語として別に作ればよいと考えます。そこから各人が何を学ぶかは従業員1人ひとりの主体性にゆだねるべきでしょう。時代は常に変わっているというのが私の見解です。
●以上で「心」の部分は終わり、次回は「技」「体」について私見を書いてみたいと思っています。<完>
- 登録日時
- 2014/02/05(水) 11:36