【2014年02月のトピックス②】
なぜいま官兵衛なのか、プロデューサーが語る
●日曜の夜はNHK BSプレミアムで夕食前に大河ドラマ「軍師 官兵衛」を観て、食後に一息入れてから韓流ドラマ「馬医」を観ます。そして入浴して眠りにつくというリラックスした生活をしています。
●ですが仕事の癖が抜けきれず、ドラマの主題(ねらい)は何か、どういう層をねらっているのか(視聴対象)、話の構成は(全体像と流れ)、そしてなぜいまこれを取り上げたのか(理由)、どういう見せ方の工夫(手段・方法)をしているのかなど推測しながら観ることが多くなるんですね。
●今朝のネットニュースで「軍師 官兵衛」のNHKチーフプロデューサーの中村高志氏のインタビュー記事が出ていました。そのタイトルは「なぜいま官兵衛なのか」というものです。
●早速拝見しましたが、ここでは中村氏が5つの「理由」でその意図を伝えてくれています。それを紹介するとともに私の感想も述べてみたいと思います。
記事は雑誌「プレジデント」より10日に配信されています。中村氏の詳しい見解はそちらを参照してください。
●理由①
現代ビジネスマン:夢を追うだけでなく、日々の生活も重視。
官兵衛:生き残ることに必死だった。
◎官兵衛が家老をしていた播州御着の小寺家を地方の小さな会社にたとえ、戦国末期に天下統一へ苦闘を続ける織田信長の時代に、どこに付くのかから始まる(官兵衛30歳ぐらい)戦いが、亡くなる59歳までの約30年間をいかに生き残るかを描くことで、1人の人間の生き方を見せようというのがねらいですね。
◎私は自分の信条である「生き抜く」の方が適切だと思っています。私の人生でも、死が隣合わせ戦国時代とは違いますが、阪神淡路大震災との遭遇や働いていた会社の倒産という一大事がありました。それまでも人生に目的が見いだせない私は、30歳代にこの世に生まれたからには「より良く生き抜くこと」だと考えるようになっていました。
●理由②
現代ビジネスマン:家族や仲間を大事にする。
官兵衛:側室をもつことが当然な時代、妻を1人しか持たなかった。
◎中村氏は記事の中で、死の間際に官兵衛が息子の黒田長政に残した言葉を紹介しています。
「神仏に怒りを買ったら拝めばいい、主君に怒られたら謝ればいい、でも家臣や領民に見限られたら終わりだぞ」。いいですね。本質を衝いています。
◎側室を持たなかったのは奥さんを愛していたからでしょうか?岳 宏一郎さんの小説ではそのようには思えません。荒木村重の愛妾(大河ドラマでは奥さん)の「だし(たし)」に惹かれていますね。大河ドラマもそのようなスタンスで描くようです。美人のだしに村重もいる宴席で官兵衛に「私は頭の良い方が好きです」などというセリフを言わせるとは・・・、男なら心が動くはずです。(笑)
●理由③
現代ビジネスマン:肩書よりも実力を重視する。
官兵衛:中村氏は、官兵衛は「武よりも知で勝負した」とおっしゃっています。
官兵衛の知は権謀術数よりも正直で、人を裏切らない、憎まない、人は活かすものという価値観で動いていたと解釈されています。そして度胸があったとも。
これは小説とは違った見方ですが、私も中村氏の解釈に賛同します。
◎もう一つの官兵衛の特長として、徹底して現場主義であったというのも共感します。常に現場に出かけ、状況把握をして、物事の本質を見極めて手を打つという行動様式は自論とも通じます。
◎さらにその行動にスピードがあったということ。他のものと結果的に同じ答えであっても、いち早く答えに到達するという習慣があったようです。これは頭が切れる証拠でしょうが、もしかすると周りから反感を買うことになったかもしれません。
◎司馬遼太郎さんが書かれた「播磨灘物語」で司馬さんが官兵衛は「商人」であったと評されています。このあたりはどういうように描かれるのでしょうか、
商人的資質がどのように官兵衛の人生で反映されるのかも興味深いところです。
●理由④
現代ビジネスマン:大企業にいてもリストラ、給与減の可能性あり
官兵衛:不遇に耐えてそこから学んだ
◎私は官兵衛にはお人好しの一面があったと思います。自分への過信かもしれません。それは荒木村重が信長に反逆した時に1人で摂津有岡城への説得に出かけるくだりです。しかも主君、小寺政職(まさもと)に裏切られ、殺せという手紙まで持たされているのにまったく疑念を持たないというところです。
◎1年間も劣悪な環境の土牢に幽閉されて、脚や頭部に重大な傷を負うわけですが、その間に学んだというのはどうでしょう。私は必死に生き抜いただけだと思います。学んだのは救出されてからではないでしょうか。(私見です)
◎私が興味あるのは、後年それだけの仕打ちにあった荒木村重や小寺政職の息子を最後まで面倒を見たということです。これは私には真似ができませんね。
クリスチャンだったことが関係しているのでしょうか?
●理由⑤
現代ビジネスマン:定年後どう生きるかが課題
官兵衛:老いてもうひと花咲かせようとした。
◎官兵衛の人生のハイライトは秀吉の「中国大返し」でしょう。その時に果たした役割が絶頂期だと思います。大河ドラマでも8月ごろにそれを持ってくるか、6月に「本能寺の変」があったからそのあたりか、1か月(4~5回)にわたって描くのではないかと思います。
官兵衛40歳ぐらいのできごとでしょうか。
◎44歳で隠居しますがそれからの15年、このあたりの描き方も充実させるかもしれませんね。特に関ヶ原の戦いのころの九州での働きをどのように解釈するのでしょうか?愉しみです。
◎この記事はビジネスマン(男)向けの内容です。雑誌プレジデントですから幹部社員向けに書かれたものでしょう。ですが大河ドラマには女性の視聴者もおられます。官兵衛の妻、光(てる)、後の照福院は長寿だったそうです。
◎官兵衛が死んでからも23年、江戸三代将軍家光の時代まで生き抜いたそうです。息子の黒田長政より4年も長生きしました。このあたりも現代に通じるものがありますね。この人も描いて欲しいですね。演じるのは中谷美紀さんですから。
●中村高志プロデューサーはかつて大河ドラマ「風林火山」や「坂に上の雲」をプロデュースした方です。私にとってはいずれも興味深く観た作品ですから「軍師 官兵衛」も今後の展開に期待大です。<完>
- 登録日時
- 2014/02/10(月) 17:58