▲チューリップの原種
【今月の提案②】:部門経営者のための「仕事ができる人になるための習慣」
ドラッカー教授の『経営者の条件』を素材にして導き出す
このまとめは経営コンサルタントの吉田繁治氏がドラッカー教授の古典的名著である「経営者の条件」をベースに著述されたメルマガを要約したものです。
原文は7回シリーズで書かれていてA4用紙で100枚近くあります。
同社のホームページ「ビジネス知識源」で無料版として公開されています。
格調高い文章で記述されていますので興味と時間のある方はそちらを参照してください。(2005年12月から2006年1月で検索すれば容易に見つかります。)
尚、本文は大幅に編集して要約しています。文責は私にあります。
今回は第2回目です。習慣②と➂を取り上げます。
■【習慣②】自分以外の外部に役立つことに焦点をあてること。
成果をあげるエグゼクティブは「貢献」に焦点を当てる。自分の仕事から目を上げて目標を見上げるとドラッカーは言います。
仕事は、外部の顧客、そして組織の中の他者や組織への貢献だと定義します。
自分の仕事を果たせばいいという姿勢と方法は、組織の仕事として「必要な条件」であっても「十分な条件」ではない。
自分がどういう仕事を行えば、何を行えば「組織の業績に貢献できるか」ということを中心に据えねば、仕事は十分なものにならない。
成果への貢献は「業績の向上」です。組織においては「努力」と「成果」の価値は等しくありません。実行の努力は手段であって、目的は成果をあげることです。
■ 責任のプロセス
賃金をもらう仕事においての責任は「コミットメント」→「レスポンシビリティ」→「アカウンタビリティ」のプロセスとして捉えなければなりません。
コミットメント:成果目標に対し、実行(達成すること)を契約すること。
レスポンシビリティ:実行計画を立て仕事の手順を決め、実行すること。
アカウンタビリティ:実行した結果の報告と反省の義務
報告=計画と実行結果の差異と、差異が生じた原因(要因)を言葉と数字で説明することを言う。
反省=原因(要因)の把握と対策を立案することを言う。
条件①成果目標に合意できないときは、対案を出す義務がある。
条件②原因(要因)の把握と対策の立案・実行こそが「責任をとる」ことの意味である。責任をとることは、辞めることではない。
●多くの組織では成果目標(業績目標)は無条件で受け入れなければならないことが多いでしょう。対案など出せることはできませんね。この条件①は筆者の経験では理解できませんでした。手段なら対案は出せると思うのですが・・・。
■【習慣③】自分ができること、すなわち強みの上に仕事を組み上げること。
エグゼクティブに求められる成果の3つの領域は冒頭に述べました。この成果への貢献の重点は人によって異なりますが、大切なことは「自分の強みとすることで貢献」しなければならないということです。
成果を上げるエグゼクティブは、人の強みを活かし、生産的なものにする。彼は、人の弱みに焦点を当て、弱みによって組織を組み上げてはならないことを知っている。成果を生むには、同僚の強み、上司の強み、そして自分自身の強みを使わねばならない。
ドラッカーはさらに、大きな強みを持つ人間は、ほとんど大きな弱みを持つといいます。山が高ければ、谷も深い。あらゆる領域で強みを持つ人は居ない。
過去の仕事で成功し、今は権限をもつ立場にある人が、しばしば陥る誤りは、部下よりあらゆる面で、自分が優れていると思ってしまうことです。
■ 部下は限られた権限の範囲で仕事をしていますので手段に制約条件があります。他方、権限を与えられた立場にある人は、より大きな裁量権を持ちます。
それだけ成果への責任も大きくなります。ここで、権限が与える選択の範囲の広さと手段の多さと使える予算を、自分の問題解決能力と勘違いしてしまいます。
■ 原因はどこにあるか?
部下の強みを発見し、引き出す能力がないことです。自分自身については、強みと弱みは裏腹だと認識していながら、他人については弱みから見てしまい、折角の強みを消してしまいます。
人を評価するとき、できないことに焦点を当て、出来ることを見ないエグゼクティブは、人の弱みに着目し、(強みを活かすのではなく)弱みを避けるための人員配置をする。こうした傾向をもつエグゼクティブは、彼自身が弱い人間である。そのため強みを持つ人間に(内心では)自分の地位を脅かす脅威を感じているのかもしれない。
こうした上司の共通の傾向は、部下は自分に忠誠を誓い、自分を喜ばせるために仕事をすべきだと暗黙に考えています。
勿論、そうしたことを言葉で表明はしない。しかし人事の権限を持つときは、自分に忠実な人を登用します。
ドラッカーは、成果を上げるエグゼクティブは、部下が自分を喜ばせるためではなく、(仕事を通じて)成果を上げることによって給料が支払われていることを認識していると喝破しています。
また人を活かすには、何ができないかから考えるのではなく、何がよくできるのかから考えねばならないとも言います。
組織の成果を達成するには、人の強みを組み合わせる人員配置によって決まります。われわれの大部分は独力で成果を上げられるだけの強みを持っていない
と認識すべきです。
●私はこの「強みを生かす」という習慣にもっとも共鳴を受けました。振り返ってみれば、話として分かっていてもなかなか実践ができないと思うからです。
よくよく考えれば我々が仕事で成功した時を思い起こせば自分の強みを使っていたことに気づきます。弱みを使って成功などしたことがないはずです。
●サラリーマン時代にドラッカー教授の教えは学ばなかったのですが、このことには気づきませんでした。そして、部下に対しては弱みの矯正の方に関心が高かったように思います。
●何人かはその強みを生かし弱みに目をつぶった人もいました。私が信頼をしたことでその方はそれまでの周りの評価を覆し、自分の強みを発揮し大いに助けてくれたことがありました。
■ 品性と誠実さは例外
人間性や品性と、誠実や首尾一貫についてドラッカーは興味深いことを言っています。
品性と誠実さだけでは、何の成果も上げることはできない。しかし(能力があっても)品性と誠実さが欠けていれば、他の能力のすべてが台無しになる。従って、人間性と誠実さに係わる欠陥は、仕事上の能力や強みの制約条件であるだけではない。それらの欠陥は、弱みということではなく、人を(職業から)失格させる。
人間性、品性、誠実、首尾一貫は、成果を上げるための能力の、欠かせない必要条件であるということです。それらに大きな弱みを持つ人は、いかに能力が優れていても登用はできない。
●このことも共鳴します。ドラッカーは「真摯であれ」と言っていましたね。
●ここまで習慣①②③を解説してきました。ドラッカーの言葉はマネジメントの本質的なことを述べています。これをご自分の仕事人生に生かすには、実践が必要です。現状を点検してこれはやってみようと思うことを1つでも見つけて習慣にしてください。
●頭で理解するだけでは成果に貢献することはできません。
●それは1つずつ階段を上るように実践しないと身に付きません。すでに行っていることの微調整ならすぐにできるでしょうが、新しく始めることはそうはいきません。何かを体得するには時間が必要だということを認識しながら、始める必要があります。いつやるか、それは「今でしょ!」。春は芽が吹くチャンスです。
<続く>
- 登録日時
- 2014/03/27(木) 10:48