▲昨日は久方ぶりに台風が私の住む兵庫県南部を直撃しました。凄まじい風雨でしたが、それ以外の蝉の声や近所の女児の元気な声も聞こえず、読書に集中できました。あれだけの風雨の中、蝉は木から吹き飛ばされないのかと気になりました。今朝は台風一過、蝉たちは元気に啼いています。生き抜く力を持っているのですね。
【2014年08月の今月読んだ本とDVD】
映画『12人の怒れる男』とリーダーシップ入門
■今月のお勧めは映画「12人の怒れる男」と神戸大学教授の金井壽宏先生の新書本「リーダーシップ入門」日経文庫(2005年刊)です。実は本書は随分と前に読んだものでしたが、今年8月に映画「12人の怒れる男」のDVDが2種類再発売されたのをきっかけに再読しました。
●本書に中で金井先生はDVD「12人の怒れる男」を取り上げ、『集団の相互作用過程』について紹介されています。ビジネスパーソンの皆様も会社の会議やミーティング、プロジェクト活動などで経験されていることを理論的に説明してくれます。
●それはリーダーシップの2大機能である「課題達成行動」と「集団維持行動」について分析的にわかるようにしてくれるものです。課題達成行動とは多くの方が関心のある、いまそこで当面している課題についての内容です。
●売り上げを上げる手段・方法とは、商品開発をどうするか、お客様のファン化の手段・方法などが課題ですね。このことについて喧々諤々、ワイワイがやがやとやることもあるでしょう。もっと論理的に課題解決の手法を使って検討されているかもしれません。
●もうひとつの「集団維持行動」は私の経験では、意外と無意識に行われていることが多いと思います。会合の場の緊張を和らげるジョークを入れるとか、発言者に同意(うなずきやいいねェなどの言葉)を示すとか、逆に反発(そっぽを向くとか内職をするなど)を示すとかという行為です。
●集団の討議の生産性を上げるにはこの2つの機能について知っていて、意図的にコントロールできるようにするのが優れたリーダーシップを発揮する能力なのです。
●金井先生はこの「集団の相互作用過程」を学ぶ教材として映画「12人の怒れる男」を紹介され、この映画を観るうえでのエクササイズ(練習問題)を紹介してくれています。夏休みのひと時、このエクササイズを紹介しておきますので、興味のある方はぜひこのDVD映画をご覧ください。(レンタルショップにもあると思います)。私は見るたびにこの陪審員たちによるこの法廷サスペンスに引き込まれています。
●そして以前に観た時よりも、金井先生のエクササイズを念頭にこれらを解くのには苦労しました。1度では無理でした。同じ映画を2度観るのはつらいので、ヘンリー・フォンダ主演の古典的名画(モノクロです)だけでなく、ジャック・レモン主演のテレビ映画「12人の怒れる男/評決の行方」(カラーです)を観ました。
●このテレビ映画版も2度目でしたがなかなか見ごたえがあります。ぜひチャレンジしてみてください。映画のストーリーを愉しむとともに、そこから学びを得るという2大機能を実践するのも愉しいものです。では以下、金井先生のエクササイズを紹介しておきます。
■①司会役をしているアメフトのコーチ(陪審員番号1)の議論の進め方をどのように評価されますか。
②全体の議論のプロセスにおける建築家(陪審員番号8)=ヘンリー・フォンダもしくはジャック・レモンの役割、意見の出し方、質問の仕方にはいろんな特徴があります。どのような特徴が重要だと思われますか。
➂議論のプロセスで、個人的な経験、1人ひとりが抱く感情、ある種の偏見は、どのような影響を与えていると思われますか。
④「根拠ある疑問」とか「納得のいく疑問」とかという言葉(元の英語はreasonable doubt)が何度も出てきますが、これはどのようなタイプの疑問のことを言うのでしょうか。
⑤集団のメンバーが異質、多様であることはどのような意味を持っていますか。議論のなかでの具体的な場面を念頭にお考えください。
⑥少数意見とそれに対する集団の圧力が存在するときに、皆さんが他のメンバーと異なる意見について議論したいと思えば、どのような点に注意すべきでしょうか。
⑦集団で意思決定をするときに、つい「事実を見よう」ということになるが、いったい事実とはなんなのでしょうか。「揺るぎない事実」というのは存在するのでしょうか。<以上>
■関連情報として。神戸大学大学院経営学研究科のホームページには同大学の研究資源が公開されています。その中に金井教授が指導された映画「12人の怒れる男」(ヘンリー・フォンダ主演版)を含むハリウッドの映画作品を教材にした論文があります。
●同ホームページの研究資源2009年11月のディスカッションペーパー、「ポジティブ心理学とポジティブ組織行動論に寄与する映像教材」では13作品の紹介と学習ポイントを見ることができます。
●112ページの大作ですが、「12人の怒れる男」は76ページから数枚で紹介されています。そこにはリーダーシップ入門とは違ったエクササイズが提示されています。頭の体操にはとても効果的ですから興味のある方はそちらも参照してください。映画好きの方は他の作品もご覧になれば新たな視点で学べるでしょう。
●尚、同ホームページのアドレスは下記の記号を参照してください。
<完>
http://www.b.kobe-u.ac.jp/
- 登録日時
- 2014/08/11(月) 11:02