買う前、買う時、買った後のお客様の立場に立つとは?
●小売業の現場で商売をしておりますと「お客様の立場に立つ」ことの重要性が問われます。私が提案する「販売のストーリー化3つの視点」の3つめも「お客様の立場でチェックしましょう」というものです。
●ところがこの言葉ほどなるほどと思いやすいのですが、いざ実行しようとすると決して易しいことではありません。その理由には2つあると思います。一つに本質的に私たちは自分のことが一番重要ですから、どうしても意識は自分の方に向いて相手と対面する事が多いため相手の立場になりにくいからです。ですが「意識」を相手に向ける「方法」と「習慣化」は簡単ではありません。技術が必要です。精神論ではできないのですね。
●もうひとつ易しくない理由は、多くの場合お客様の立場をお客様が「買う時」に限定して言われることが多いからです。実は商売ではお客様の「買う時」だけを考えていたのでは本当にお客様の立場に立つことは難しいからです。
●ではお客様の立場に立つにはどうすればよいのでしょうか?
お客様が買う時には自分に向きがちな意識を瞬時に相手に向けて対応する。
その基本的な態度はお客様の役に立つ、満足や喜びを実現する手伝いをするという目的意識を持つことです。
●そして手段・方法は技術です。「お尋ね」し「聴く」それから「お伝えする」あるいは、「知って」「掴んで」から「提案する」という流れで五感を使って接客を行います。
●間違えやすいのは売りたいためにという意識が先立ち、自分の知っていることを伝えようとすることで、喋りすぎて相手(お客様)のことが見えにくくなることです。
●人には好奇心があるが保守的な心もあり、依存心があるが自尊心もある、そして買物をする時には打算心があるということを知っておれば、意識はお客様へと向きます。
●接客しない商売ならお客様の状態や心理を推測して品揃え、売場づくり、販売ツールなどを準備し、在庫コントロールや受発注を行います。商品によっては鮮度管理や配達やメンテナンスまで考えねばなりません。
●また人がモノやサービスなどを購入する場合、「買う時」以外に「買う前」と「買った後」という「時間軸」があります。この時間軸を想定してお客様の満足につながる仕組みや仕掛け、行動が必要です。これらの時間軸におけるお客様の買物への時間のかけ方や行動内容は、対象となるものの商品特性や価格によって違いがあります。
●例えば昼ごはんを外で食べる場合、今日の昼ごはんは何にしようか、ラーメンかうどんか蕎麦かなどと考えて出かけるのが「買う前」です。そんなに時間をかけて考えるわけではありませんね。そのうち店選びは簡単に決まります。店に入って何を食べるかを選ぶ場合も時間はあまりかかりません。しかし何らかの情報でもって短時間で決断します。これが「買う時」です。食べ終わってそのお店のことはすぐ忘れる場合と、初めての店なら「評価」をするのが普通です。また来ようか、もう行かないかを決めてしまいます。これが「買った後」です。
●一方、自動車や大型の液晶テレビや旅行などの高額なものを購入する場合は
「買う前」の検討時間は比較的長くなります。意外と「買う時」の時間が短い場合があります。事前によく検討しているとそうなりやすいようです。「買った後」も自動車やテレビなどの機器類は「使って得られる満足」を味わい確認する時間が長くなります。
●このようにお客様の立場に立つ目的は、「買う時」の満足以外に「買う前」「買った後」にも必要な場合があるいうことがわかります。そのことを認識したうえで優れた行動をとる店は、お客様の「買う時」の満足をより充実した内容にすることも可能になります。
● もうひとつ、商売ではお客様の立場に立つことの重要な目的があります。
●それは、それぞれの過去のお客様の購買行動の「必要となった動機」や「店や商品を選んだ理由」「決断をした要素」などを把握し、同じような動機のお客様に対する提供価値を導き出すヒントをつかむことで、その後の商売でよりよい価値提案をしていくということです。
●このように「言葉の意味」をその「目的」から定義づけをするとどのようにしなければならないかという「手段」が考えやすくなります。そうするとお客様の立場に立つというのは、「買う時」の満足を本当に充実するということと共に、「買う前」「買った後」まで「価値提供」を考えなければならなくなります。
●またお客様がその商品を必要とするようになった動機や購入を自店で行おう決められた動機を「知って」それを分類し、分析することで、その後の特定多数の類似したお客様への「価値提案」を考えやすくなるということにもなります。
●「時間軸における3つの状態の想定」とそれぞれの状態に対する売り手の意識をお客様に向けるということ、そこから得られるお客様の情報を収集しそれを他の類似するお客様のための価値提案のヒントにさせていただくということが商売をするものにとって重要な課題だとお気づきいただけるのではないでしょうか?(すでに気づいて実践されている企業も沢山あります)
●このことはこのあとどのような価値提案をしていくかということが難しいのです。具体的な仕掛けや仕組みを開発しないと続きません。仮説思考やインサイトマーケティングも重要です。しかしそのヒントになるのはお客様の立場に立った顧客接点での受信機能だといえます。
- 登録日時
- 2009/02/05(木) 11:01