▲ビジネスパーソンを対象に書かれています。子供の教育や親子関係が主であったアドラー心理学のビジネス分野への適応が期待されます。しかしパワハラをするような人には見向きもされないでしょうね。(悲観的推測でスミマセン)
【2014年09月の今月読んだ本】
マンガでやさしくわかるアドラー心理学
■先月アドラー心理学の基本的な考え方を紹介しました。ですが私の中ではアドラー心理学は子供の教育には適していても、ビジネスパーソンにはそぐわないところが多々あるのではないかという問題意識がありました。
●そこでもう一度勉強をしてみようという気になっていたところ、本書に出会いました。読んでみて「これはわかりやすい」「ビジネスパーソンにも適用できるではないか」など問題意識を解消してくれるという感想を持ちました。
●アドラー心理学は心理学の古典ですから現状やこれからの未来について参考にするなら、研究を進められている岸見一郎さんや野田俊作さんの著書や本書の著者である岩井俊憲さんのものをヒントにして実践されることが良いでしょう。
●岩井さんが主宰されているヒューマンギルド社のホームページを拝見すると、随分と実践されている様子が伺えます。本書をお読みになって興味を持たれた方はぜひHPも参照されることをお勧めいたします。では本書の紹介と私の感想をお伝えしましょう。
■本書の【ねらい】はどこにあるのか、「はじめに」に3つのねらいが特徴として記述されています。それは…
①アドラー心理学の全体像がつかめる。
②アドラー心理学の実践部分(ポイント)がつかめる。
③読者を勇気づける。
特に➂の「勇気づける」というのはアドラー心理学の重要な考え方だと思います。勇気づけとは「困難を克服する活力を与えること」と定義づけられています。私の問題意識は「ビジネスの場で評価することと勇気づけることの違いを納得するように理解すること」そしてそれを「他人に説明し理解、実践してもらえるようになること」です。
●本書はその期待に十分応えてくれました。ねらいとご自分の問題意識がマッチしていそうだと思われたならぜひ手に取って読んでみてください。
●尚、アドラー心理学が目的とするのは人間が幸せに生きるための考え方と実践方法を伝えることだと思います。
●【対象】はどのような人を想定して書かれたのでしょうか?大きく捉えると、アドラー心理学に興味を持たれた初心者への入門書として書かれています。さらにマンガの部分のストーリーの人物設定からすると、若い女性のビジネスパーソンでやる気満々だが、いくつかの壁にぶつかっている人が推測できます。
●マンガによる事例の主人公はあるケーキの老舗洋菓子チェーン店のエリアマネージャーとなっています。私の住む神戸市や隣の芦屋市の店が舞台になっているので親近感が湧きます。また私自身も家電量販店のエリアマネージャーの経験がありますから共感はしやすかったですね。
●【内容についての概要】
①プロローグでアドラー心理学の全体像と主な理論が紹介されています。先月当欄でご紹介しました「アドラー心理学の5原則」と共通するものですが「現象学」が「認知論」と表現されていますが内容は同じです。他の4つは同じ表現となっています。
②以下4つのパートと「勇気づけ」の5つの項目で構成されています。
パート1は「見方を変えることで生きやすくなる」ということで『原因論から目的論へ』の解説があります。
◎これは人間を対象とした仕事の場合有効です。トヨタのようなモノづくりの現場では、ナゼナゼ」という原因追究による改善から新しい知恵が生まれてきますので対象外です。
➂パート2は「感情とライフスタイルの形成」で『理性と感情』について学ぶことができます。
④パート3は「思い込みの世界から共通感覚へ」と『認知論と共感について』
で、私たちが陥りやすい過ちに気づかされます。その処方箋も学ぶことができます。
⑤パート4は「人間関係と感情」について、次の3つが主な内容です。
1)人と人を分離させる感情と結び付ける感情
2)嫉妬の正体
3)劣等感とは
⑥最後に『勇気づけとは』について、「自分自身へ」「他者へ」「評価との違い」
の3つが解説されています。
◎この勇気づけは考え方だけでなく方法論につながります。これは意味を理解して実践をしないと身につかないでしょう。私はここを重視しています。
●【表現のための構成】
この本の特徴は「マンガ+文章」で構成されていることです。文章の中にも図表がいくつか使われています。全部で220ページですが、マンガの部分は106ページ、文章は114ページです。全てマンガで構成されているわけではありません。結構文章の部分が多く、読みごたえがあるんですよ。
●パートごとにマンガと文章で構成されているのですらすら読めるはずです。マンガではある女性のエリアマネージャーの言動がストーリー仕立てで描かれます。マンガの中にはメンター(優れた助言者)としてアドラー先生が登場します。先生は、問題行動の指摘と解決行動への導きをあくまで主人公を主体にして行っています。
●そして文章の部分ではアドラー心理学の理論を使って解説してくれるので理解はしやすいでしょう。但し理論そのものは初めてだと理解は簡単ではありません。全てを理解するには2度、3度と読み返す必要があるでしょう。
●ですが自分のヒントになることだけを探すなら、今必要なものだけを抜き出せばよいと思います。私のように「勇気づけと評価の違い」を深く知りたいならそこに焦点を当てるとよいでしょう。
●本書はさらに新しいノウハウを身に着けるために「わかる→できる→身に付く」という考え方のもとに設計されています。読み進んでも前のパートで出ていたものを繰り返し復習しながら進めてくれるので初心者にはありがたいですね。
■最後に私が得た学べるポイントを紹介しておきます。それは私に具体的な問題意識があったからです。それがない方は本書を読まれてから自己点検を行い、自分なりの課題を発見するとか、参考になる課題解決のヒントを見つけてください。
●アドラー心理学の物知りになる方以外は、自分の今の課題の参考になるものは何かを発見し、実践するのがビジネス書の活用方法の原理です。
●私の学びのポイントは、①アドラー心理学がビジネスの世界でも活用できるということが、マンガの事例を読むことで分かりました。
②アドラーの5つの原則(理論)は他の書物で知っていることでしたが、全体像を示されることで、相互の関連性や位置づけが分かりました。
➂理性と感情について新たな知識が得られました。特に一次感情と二次感情という概念が参考になりました。
また感情の定義や人と人を分離させる感情や結び付ける感情についても興味深かったですね。
④勇気づけることとほめることの違いがよく理解できました。ですがビジネスの現場で有効かそうでもないのかはまだ未消化です。
●気を付けなければならないと思ったのは、自己啓発につながる教えは概ね自己に向かいがちになります。自分だけのこころの内面や行動に焦点を当てるため、人は対人関係の中で成長するというアドラーの教えを忘れがちになります。
●私たちビジネスパーソンは、自分を自分以外の人たちのためにより良く貢献する存在となるために、自己を成長させるのだという目的を見失わないことです。本書はそのために多くの示唆に富んだアドラー心理学の入門書だと言えます。ぜひご一読をお勧めいたします。<完>
- 登録日時
- 2014/09/02(火) 10:20