▲再び薔薇の花。知人からの贈り物ですが、こんなところを歩いてみたいと思っています。
【2014年11月の提案①】
手段(対策)は目的と現状に従う<後篇>
■先月の提案では「手段は現状に従う」という視点で自論を述べました。現状実態を把握し、重要なポイントを掴んで(要因や決め手)から手段(対策)を考える必要があるというものでした。
●その根拠は、私たちが思い込み(先入観)で判断をして対策を考え失敗をすることが多いからです。テレビの刑事ドラマで犯人を捜すのに実態を捜査するのは定石です。また医療ドラマでも医者は診断をしないで処方箋を出すとか、手術をすることはありません。
●原理は同じなのですが、私たちの日常ではコトの重要度の違いからでしょうか短絡思考に陥りがちです。「こんなことをするのはあなたでしょ」「お前がやったんだろう」「売れないのは品ぞろえが悪いからだろう」とか、推測、憶測で判断をして追及するなどよく行われています。
●余談:人は自分の思い込み、先入観で対策(手段)を考えるというのは本欄でも紹介しました映画、「12人の怒れる男」やイラン映画の傑作「別離」をご覧になると客観的に観ることができます。
●こうして重要ポイントが見つからないまま安易な対策(手段)が取られがちです。これでは効果的な対策(手段)は生み出せません。それに理不尽な追及を受けた者は心理的なダメージが大きくなります。
●『目的を考えてから手段を選ぶ』とともに、『実態を把握し重要ポイントを見つけてから対策(手段)を考える』ことの重要性はお分かりいただけたでしょうか?
●それに、良い手段を見つけたとしても、実態を把握していないと「実行ができにくい」という現象が起こります。
●例えば小売業で効果的な陳列方法(手段)を見つけても、売場面積という限界があるので何かを止めるとかしないと場所を確保できません。効果的と思われるPOP広告を制作しても、掲出する場所を確保しないと使えません。
●また良い手段を学んでも実行できる人がいない、時間が取れないでは実現をするには難しくなります。そういうことも「現状を把握してから考える」必要性の条件です。
●分かっていながらやらないのか、分かっていてもできない理由があるのか、仕事の手段については人の心理の動き、内容の効果性、コストなどの現状を把握することも必要です。特にマネジメント層にとっては重要な任務です。
■最後に『手段を考え出す切り口』についていくつかの視点をお伝えしましょう。これら以外の視点にお気づきになれば実践してください。以下の事例は主に小売業の現場を想定しています。
●①要素別に手段を考える
・戦略、戦術、戦技のレベルで考えます。小売業の戦略レベルとはビジネスモデル、出店立地、規模などです。戦術レベルでは集客手段、販売力強化(売場づくりや接客力)、顧客のファン化などです。戦技とは個々人の接客能力や販売ツール(POP広告も含む)の内容と表現方法の質などです。
●②時間軸でとらえる。「売る前(買う前)、売る時(買う時)、売った後(買った後)」のそれぞれの状況に最もふさわしい手段を考えることです。それぞれの状況における売り手、買い手の目的(ねらい)を考えれば効果的な手段が創り出せるでしょう。
●➂手段を「改善・強化・付加」の3つに分けて考える。手段を実行し、目的に対して結果を検証したなら、次に考えるのは「拙いところを改善する」「上手くいった事をさらに強化する」「今までやっていない新しい試みを付加する(この場合止めることも同時に考える)」という視点で考えることです。
●④手段は「質×量×タイミング×集中力」で組み立てることです。質とは内容であり与える影響力の強度です。量は1回当たりの投入量と頻度(多箇所と時間的な繰り返しの2つの視点があります)。タイミングはまさに必要な時行うことです。集中力は、実行段階では優先順位をつけて、大事なものに集中することです。一度に多くの手段を行っても、人は効果を上げにくいということを知るべきです。特にマネジメント層に必要な能力です。
●⑤計画は「5W2H」でチェックすることです。Why(なぜは目的、理由です)、What(何を行うのか=手段です)、When(いつ=タイミングです)、Where(場所=どこで)、Who(誰がとか誰にということです)、How(いかにして=方法です)最後にHow Much(いくらで=コスト)手段にはコスト(費用)がつきものです。特に「お金と時間」は手段の選択に重要な要素です。
●⑥手段は「方法と手順」にまで具体化する必要がある。仕事には手段の提示で方法、手順は任せるというやり方もありますが、成功する手段が見つかれば「方法と手順」までを明示して、組織のだれもが共有するようにすることも必要です。マニュアル化などがその事例です。
●⑦手段の選択には目的に対する効果を判断するのに、「重要度×緊急性」、「金×時間」というマトリックス図で分類して判断材料にするという方法があります。
●⑧優先順位に対して劣後順位を決めることです。本欄でもドラッカー教授の言葉として何度か紹介しました。以前に書きました「仕事ができる人の5つの習慣」を参照してください。
●⑨手段のツリーを創っておく。空間発想で考えると大分類、中分類、小分類、細分類という具体性のレベルで手段を分類することができます。いくつかのアイデア、実行した手段をロジックツリーで保存しておくと、思考の助けになります。ただ単に手段を保存するだけでなく、分類してレベル別に保存すると使いやすいですよ。
●⑩手段は数値目標との関連で考える。小売業では売上高を客数×客単価に分類して手段を考える習慣があります。客数は来店客数と買い上げ客数に分解されます。客単価は1点当たりの商品単価と買い上げ点数に分解されます。
●一般の営業でも客数は新規客数、既存客数(購入客数と休眠客数)、流出客数、それに買い上げ頻度に分解できます。客単価は商品単価と買い上げ点数などです。これらの分解された数値目標ごとに手段を考えるのは定石です。
●売上高を分解することで、売上高という数値目標に目的性を持たすことができます。
新規客の獲得と既存客の購入促進は自ずととるべき手段が違ってくるからです。
これらを他の9つの視点とミックスして考えれば手段はいくらでも発想できます。(「いくらでも」とは言い過ぎでしょうか?‐笑)
■以上3回にわたって「目的と現状把握と手段の関係」について自論を紹介してきました。手段については業種・業態別にさまざまなものが創出されています。世の中ではノウハウと言われるテクニックもたくさん紹介されています。
●どこかで上手くいったやり方(手段)は、そのまま真似をしても上手くいかないことがあります。それは繰り返しになりますが、目的(ねらい)を把握し、それを自社では適用できる現状実態か否かの見極めが必要なんですね。
●ぜひそのことを踏まえて、手段の開発はできる限り自力で実態を調べ、ポイントを掴んでからどうするかという知恵を絞ってください。
●自力と言っても1人ですべてを考えよとは申しません。1人1人が知恵を絞るという前提ですが、共に働くメンバーの衆知を結集するということも大切です。
●私はリーダーが目的と課題を示し、メンバーがそれについての実態を調べ、把握して、その情報をもとにメンバーが知恵を絞って手段を考えるというマネジメントを推奨しています。<完>
◆政治の世界では今日、衆議院が解散されました。何のためにという目的があいまいです。「なぜ今なんだ」というのが率直な感想です。国民にはわからないところでそれなりの目的があって行われるのでしょう。
●「デフレからの脱却」は経済目標であって「消費税増税」も「成長戦略」も手段です。目的はこの国の未来をどのように築いていくのかということですが、メッセージが希薄なため伝わりません。私の認識不足かもしれませんが、どこかで語っておられるのでしょうか?以前の時は超抽象的な「美しい国日本」でした。
- 登録日時
- 2014/11/21(金) 16:58