▲ヤマ紫陽花は6月から8月にかけて咲く花。花言葉は「乙女の愛」「切実な愛」です。
近所の方々に癌になったことを報告した時、一つ上の階段の先輩(私より10歳以上)から「頑張って治してください」と励まされたのに、その1週間後に急逝されました。葬儀に参列しながら自分の終活を考えずにはおられませんでした。
【2015年8月の雑感①】
私家版しくじり先生<直腸がんになりました>その2:入院・手術編
■自分ががんに罹るとがんに関する情報に敏感になります。がん検診の受診率の向上をめざす神戸市の情報誌には以下のような記述がありました。
●がんは私たちのおよそ2人1人がかかり、3人に1人が命を落とす病気です。しかし、医学の進歩などにより、がんは、現在、約50%の人が治るようになりました。喫煙(受動喫煙を含む)、食生活、運動などの生活習慣の見直しと併せて、定期的にがん検診を受診して、がんの早期発見、早期治療に結び付けることが重要です。
●市では、胃がん、肺がん、大腸がん、子宮頚がん、乳がん検診を実施していますが、受診率は概ね35~40%と国が目標としている50%よりも低い状況です。
<以下略>
●この情報だけでも推測ですが、若い人が罹る確率は低いはずですから60歳以上だと3人に2人はかかるのではないでしょうか?また罹った人の3人に1人が命を落とすという確率はとても高いということです。
●50%の人は治るそうですが、これには早期発見、早期治療をした人が含まれています。がんのステージが進行した人の生存確率は限りなく治らない50%に含まれ、死亡の確率は治らない人の60%ぐらいになるのではないでしょうか?
■入院・手術をするとなった時、私は比較的元気でしたし、患部を切ってしまえば術後は一時的に苦しいだろうが、かなりの確率で治るのではないかという楽観視するようなところがありました。
●ですが入院・手術を終え、主治医の先生の診察結果を聴きながら、「がんは手強い」、「試練は続く」と強く感じるようになりました。このことは本文その3に譲り、今回は初めての入院・手術で体験した「しくじり」について私の体験を述べておきます。
●「しくじり体験」には2つの側面がありました。1つは「術後生活における肉体、こころのダメージの大きさ」です。もうひとつは「4人部屋の病室生活の難しさ」です。
●私の病気は「直腸がん」です。先生から腹腔鏡手術で患部の上10㎝、下2㎝の12㎝を切除します。同時に周辺のリンパ腺を切除します。手術の時間は約5時間ということでした。
●当日午後0時30分から手術は始まりました。麻酔医の先生と「この酸素マスクは匂いが良くないですね、北海道のラベンダーの香りがするようにしてくれればいいのに」という無駄口をたたいているうちに眠りに落ちたようです。
●突然パチっ目が覚めました。家内と息子の顔が見え、しばらくして執刀医の先生が視界にあらわれました。家内に今何時と聞いたら「午後10時半」というではないですか。実に倍の10時間もかかったようです。
●その要因は3つあったそうです。1つは私の内臓には脂肪が多くて簡単に切除できなかった。2つに私の結腸(腸の一部で唯一ブラブラと可動する部分)が一般的な人より短かったため、患部を切除した後の腸と腸をつなぐことが難しく、本来、体に固定されている大腸の部分を外し、斜めにしてつながるようにした、そして外した大腸を固定しなければならなかった。3つに事前に印をつけた直腸の位置が見つかりにくく、再度機械を入れて患部を明確にするのに時間がかかったということでした。
●そういうことは事前の検査では掌握できなかったのかという疑問が湧きましたが、問いただすことはやめました。手術には想定外の出来事が起こるものだとテレビドラマで観たことがあります。
●執刀医を始めスタッフの方々が10時間も頑張って手術して下さったことへの感謝の気持ちが強く、無事終わったのだからそれでよしと思いました。
●集中治療室に1泊して病室に帰るのですが、ほとんど眠れなかったですね。帰る前には下半身を2人の看護師さんが拭いてくれるのですが、恥ずかしいやら申し訳ないやらで謝ってばかりいました。
●ここまでは殆ど麻酔で眠っていたし、痛み止めの麻薬を3日分も入れてくれていたので、比較的元気に病室へ戻ることができました。ところがここから私の心身はダメージを受けるようになったのです。
■最初のダメージは、①仰向けにしか寝られないこと ②1日で尿管をはずされたのですが、小尿が出なくなって、再度チューブを差し込まれたことです。ほとんど左下横向きに寝る習慣の私には、仰向けで睡眠ができないことが苦痛でした。(後に仰向けで数時間は眠れるようになりました)
●小尿を自力でしなければならなくなったのに、もよおすが出ないこと。そのため再度、麻酔なしで差し込まれるチューブの痛いこと。激痛でした。
●次に麻薬が切れると下腹部に痛みが生じたことです。しかも喉が痛くて咳をすると腹部に激痛が走るのです。さらに腹筋が弱っていてベッドから降りる力がなくなっていたため、滑り落ちるように降りなければならなかったこと。
●切除した腸の接続部を守るため、お尻にチューブを差し込まれたため、ベッドにも座れないほど痛かったこと、おむつをしなければならなかったこと、その始末を自分一人でトイレに行ってしなければならなかったのです。
●数日後、再び尿管のチューブを抜くと、自力で小尿をすることができるようになったのですが、1日15回強の頻度のため苦しかった。特に夜中の小尿は1時間に1回ぐらいで目覚めるので睡眠不足になりました。
●1週間ほどで重湯が食べられるようになったのですが、点滴の時と違ってお尻のチューブから大便が出るようになったのです。自力で便所に行って便を出すことができず、おむつにこぼれるのです。
●最初は少量でしたが、お尻のチューブを取ってもらったあとスッキリとしたのもつかの間、大量の下痢便を放出してしまったのです。トイレに行って後始末をしたときの情けなさは、私の自尊心のせいかもしれません。
●赤ちゃんのおむつを替えるのは可愛いのでしょうが、大の大人が、拭いても拭いてもきれいにならない自分の体に、「なんてこった、こんなことになるなんて」と落ち込みました。(恥ずかしいので看護師さんは一切呼ばなかったのです)
●2日ほどで下痢も治まり、硬い便をトイレですることができるようになりました。しかし1日に何度もしたくなるのです。つまり1回当たりの出る量が少ないからです。
●術後12日目まで痛みは和らぎませんでした。先生からは早くから歩いて運動をするように言われましたが、器具を付けての散歩は限られます。しかも歩けば痛いのです。ついつい横になります。ですが私はベッドの昇り降りだけでかなりのエネルギーを費やしていましたから体力は使っていました。
■教訓1:日ごろから体を鍛えていないと術後には耐えきれないことが多々あるので、運動はすごく大事です。
教訓2:仰向けに寝る習慣を身に着けていないと眠れません。日頃から仰向けに寝る習慣も身に着けておきましょう。
教訓3:精神的な耐性も必要です。ですが自分の体の状態は何と思われようとも正直に先生に伝えることです。私の場合は看護師さんやサポートをしてくださった研修医の先生(この方が美人で優しくて救われました。-笑)にちょっとしたことでも伝えました。(先生はナーバスですねとおっしゃっていましたが)
教訓4:がんと判明してから毎日、中村天風先生の『力の誦句』を唱えています。精神的な支えとなる言葉は有効だと思います。(力の誦句は6月の本欄に書いています)
■もうひとつの側面である「4人部屋の病院生活の難しさ」についてしくじったことがあります。それは・・・
●自宅ではずっと1人で寝ていた日常から4人部屋になると、①他の人のいびきで眠れなくなること。②みんな病名は違っても手術をしている人たちなので、夜中に起きて何度もトイレに行かれるのでその都度目が覚めること。➂室温に対する適温が違うため、人によって冷房が寒く感じること。④話好きの人が居て、その話を聴かねばならないこと。(病人の話題は本人の病気体験のことに偏りやすい)
⑤最後の2日間に新たに入室してきた人が真夜中に奇声を発するので眠れなくなったこと。ご本人は悪びれる様子もないので耐えるしかありませんでした。
●対人関係で苦労することはなかったのですが、眠れない出来事は苦痛でした。冷房が効いているのでゆっくり退院したかったのですが、眠りを妨げる人からは一刻も早く逃げたいと思いました。
●教訓5:お金はかかるができれば個室に入る方が良い病気もある。私の場合は肉体面、精神面からも個室を選択すべきでした。10万から15万は余分に費用がいりますが、それも考えて最新の「がん保険」には入っておくべきだと思います。
●教訓6:入院手術費用は国民健康保険の限度額適用認定証をもらえば格安で治療を受けられるので必ず保険料を納め、万一の時は利用しましょう。
■私の場合入院から18日目で退院しました。退院時に主治医の先生から診断結果を聴かされました。がんのステージは3.5のBで0から4までの5段階の上から2つ目で、4に近いということでした。ショックでした。
●がんの患部は切除されましたが、同時に切除したリンパから14リンパ幹のうち4つからがん細胞が見つかったようです。転移の可能性は15から35%だそうです。多くは肝臓、肺、手術した直腸の接合部に発生しやすいとのこと。
●これから抗がん剤による治療を6か月行うことが可能だそうで、35%の転移の可能性を10%ほど下げることができるそうですが、副作用があるとのことです。8月11日に先生と相談のうえ決定します。
●次回その3では退院後のリハビリで悩まされている後遺症とこれからのがん克服生活への不安について、「しくじりをしないための」生活について書きます。それでもって今回の私家版しくじり先生は終了の予定です。
●本文を書くことで私自身の気持ちが落ち着いてきたのは事実です。読者には関係のないことが多くて申し訳ありません。ご容赦ください。<続く>
- 登録日時
- 2015/08/09(日) 09:35