▲チョコレートコスモスの花。花言葉は「恋の終わり」、「恋の思い出」、「移り変わらぬ気持」です。晩秋にふさわしいかな。でももう今日から師走ですね。
【⒓月のトピックス①】
神戸大学 小川 進教授のマーケティング基礎講座の講義映像<第3講座>
●ブックマークしている神戸大学経営学部のホームページを閲覧していた時に見つけました。「ディマンドチェーン」や「クリティカルシンキング」の著書を読んだことのある小川先生の記事がありました。今回は第3講座の紹介と解説です。
●動画URL【神戸大学のホームページより】
本研究科の小川進教授がマーケティングの基礎について5回シリーズで講義されている動画を更新されました。YouTubeにて下記の各URLより無料で視聴できます。
第3回 https://www.youtube.com/watch?v=KHYz0ZgZ1pE
第4回 https://www.youtube.com/watch?v=VZh1_UDvaAE
第5回 https://www.youtube.com/watch?v=7K4rPt35j2U
●こういう基礎講座を学ぶ意義は売れる販売方法等の手段(打つ手)を考える時に、①その目的(ねらい)は何かを考えることの重要性を知ること。②実行するときは1つの手段に集中することが必要ですが、その場合も全体像(関連する要素)を知っておくこといついて理解することです。なぜなら具体策は自分で考えるしかないからです。
■最初に小川教授からこの講義で目指すものが第1講座で4つの項目で話されています。これが本講座のねらいにあたります。それを再度掲げておきましょう。
●この講座がめざすものは(ねらい=目的)
①マーケティングの基礎(マーケティングの教科書ならどの本にも書いてあること)を学ぶ。
②テクニックではなく本質的な考え方を学ぶ。
➂経営現象の本質を解像度高く理解する見方を身につける。
④マーケティングの専門家になっても、いつでも戻ってこられる思考の原点になる考え方を学ぶ。(これは初心者だけでなく経験十分な方にも学ぶ価値があるとおっしゃっているようです)
●次に本講座の内容の構成は全5回を通じて次の3つを学ぶことです。(学ぶ内容)
①マーケティングの原点
②マーケティングで大切なこと
➂マーケティングの打ち手
■第3講座では②のマーケティングで大切なことについて学びます。(映像は約22分です)
第1、第2講座で「マーケティングの原点」としてマーケティングの目的と役割は何かということを明らかにされました。それはマーケティングとは何なのかというという問いに答えることでもあります。
●新しい概念を学ぶ時に、まずその『言葉の意味は何なのか』を知らねば前に進みません。ここをおろそかにすると、手段・方法ばかりに目が向いて自分で考えるよりも何か良いアイデアはないかと探す癖が身に付きます。その結果、自分の状況に最適の手段が導き出せなくなることが多くなります。
●前回までに、マーケティングとは『顧客創造』と『需要の拡大再生産』を目的に、マーケティングの諸活動に『イノベーション(革新)』を起こすことだと要約しました。それを前提にマーケティングにとって【大切なこと】は何なのかを学びましょう。
●大切なこととは、「マーケティングで一番高い優先順位になることは何だろう」ということを知ることです。それを小川先生は『方向性である』と言われます。ではその方向性とは何か?マトリックス図表で提示されます。(この図表は映像でご確認ください)
●横軸は「顧客が望むことか」、縦軸は「上手にできるか」です。それぞれに望むこと○、望まないこと×をつけると4つのゾーン(マス目)ができます。縦横両方○のゾーンが①、その下が②、①の横が④、②の横が➂です。(ご自分で図表を作成してみてください)
●①のゾーンは問題ありません。まず多くの人が失敗するのは④のゾーンです。顧客が望んでいないことを上手に行うことです。これはかつて成功したことが時代に合わなくなっているとか、ライバルに負けているのに執着することなどがあげられます。国内某メーカーの液晶事業やテレビ事業が事例で紹介されます。
●また小川先生の関係先メーカーの事例で「歯ブラシの3本セット」の話が紹介されます。(これも映像でご確認ください)
●重要なのは②のゾーンです。下手でも正しいことを行うことです。但し経験を積むことで上手になっていくという創意工夫の積み重ねが必要です。事例ではアマゾンのネット通販が取り上げられています。日本に上陸した当初に比べて現在の隆盛ぶりを見ると、同社の方向性は正しくて、その分野での改善・強化・付加の創意工夫は見事ですね。(利用されている方は実感されていると思います)
■ここでマーケティングから『競争戦略』の話に展開が移ります。競争戦略は企業活動においてはマーケティング戦略の上位概念にあたります。企業活動全般が競争相手との競争です。ですからあらゆる機能が「競争戦略」に包含されるのです。
●また競争戦略は企業戦略もしくは経営戦略と言ってもよいでしょう。小川先生はここでは競争戦略上この企業の方向性を決めるためには『もやしでも勝てる土俵を探す』ことが必要だと言われます。
●事業は「儲かる分野を探す」ことが優先されるということです。ヤンキースの黒田の事例をあげられますが、黒田投手はヤンキースに在籍すれば15億から20億円もらえる価値があるが、広島カープへ戻れば4億円、もし仮に黒田選手がホッケーチームに行けばその価値は無いということになります。
●儲けるということで「直近の業界別純利益率」の図表が提示されます。(これも映像でご覧ください)、銀行など金融業界の利益率がこんなに高いとは知りませんでした。給料が高いはずです。(笑)
●次に競争戦略で有名な米国のマイケル・ポーター教授の「5つの競争要因図」が出てきます。(これも映像をご覧ください)
●この5つの競争要因は、同一業界内のライバル対決だけが競争要因ではないということを教えてくれます。ぜひ別途学習されることをお勧めいたします。多面思考の参考になるでしょう。
●儲かる冷蔵事業の事例も紹介されますが、小川先生はここで、企業は『儲かればいいのか?』『儲かるからあなたはその会社で働くのか?』と問いかけられます。
●マーケティングでは『儲ける以外に価値観を見出す人がいる』という方向に導かれます。
つまり「儲ける分野を探す」という方向性だけでは事業が成功するとは限らない、儲けることは必要条件だが十分条件ではないということですね。
●事業者のビジョン、働く人々の働きがいは儲けとは別の価値が必要だということでしょう。現在テレビドラマで放映されている人気の「下町ロケット」の中でも、そのことが「夢」という言葉で語られています。
●小川先生はマーケティングの方向性というこのセッションのしめくくりとして、米国の故セオドア・レビット教授の『マーケティング近視眼』を紹介されます。近視眼とはマーケティングは業界内のライバル対決だけに目を向けていたのではいけないという警鐘です。
●この講座で紹介されるのは『事業の定義=方向性』がその企業の未来を規定するというものです。
●事業の定義とは市場に対して『いかなる分野でどのような役割を果たすか』を決めることです。事例では鉄道事業とするか輸送事業とするかによってその企業の未来は変わったと。日本の小売業の悲劇の事例として総合生活産業を標榜して何でも屋になったダイエー、セゾン、マイカルの衰退(事実上の倒産)があげられます。
●また「ホンダはなぜロボットを開発するのか?」というという問いを立て、ホンダが二輪車から自動車メーカーという事業の定義から「モビリティ=移動性という価値観」にもとづく事業の定義を見直したからロボット産業の開発に向かっていると紹介されています。
●セオドア・レビット教授の著書では旧い著書ですが「有能な経営者」という本が印象に残っています。経営者の方には勿論、仕事を主体的に進めたいという方にも参考になるのではと思います。(珠玉の言葉が散りばめられています)
■マーケティングで『大切なこと』とは、事業の方向性を決めることである。それは「儲かる分野に進出する」ということと共に「事業者や従業員の働く価値観に基づくビジョン(夢)の実現」に向かうものであるということですね。
●読者の皆さんの働く会社、仕事ではそれは何なのかを考えてみてください。それを文章化することです。将来変更しても構いませんから、今の自分はこう考えるということを残すことが、ご自身の成長にとって必要です。では次回からマーケティングの打つ手を2回にわたって学びましょう。<完>
■寒くなってきました。風邪などひかぬようご自愛ください。私も薬で免疫力が下がっていますから、体力の低下を防ぐ「運動」「食事」「睡眠」+「体を温める」を習慣化しています。
- 登録日時
- 2015/12/01(火) 10:18