【09年4月の提案】 新任店長講座:その1
『店長に求められる仕事の分野と役割、必要な能力』とは?
■春は人事異動の季節です。新しく店長になられた方を対象に「店長のマネジメント」について筆者の見解をお伝えしましょう。
■店長といってもいろんな業種・業態におられます。コンビニの店長と大型量販店の店長では規模の差から求められる役割は違ってきます。またファッション専門店の店長とスーパーマーケットの店長では業態の違いで求められる役割が違うでしょう。
■ここでは、筆者が比較的多くお手伝いしている家電店、カー用品店、携帯電話ショップなどハードグッズを扱う業種・業態の店長を念頭において筆をすすめてまいります。
■最初に筆者が小売業の現場で働いていた頃の体験談からお話しましょう。30年以上も前のことです。20代半ばで店長に抜擢されたのですが、その頃自分は何を拠りどころに頑張っていたのか記憶をたどってみました。
■まず、最初に浮かぶのは数値目標の達成に向かって、率先垂範して店頭に立つことでした。朝早くから夜遅くまで週1回の休みで働くことでした。繁忙期には2、3ヶ月無休で頑張ることを秘かな誇りにしていました。
■当時は販売だけでなく仕入れも担当していましたから商品知識は豊富になりました。独自の「商品知識ノート」を創って勉強しました。勤め先が電子部品の専門販売店でしたから、お客様にはプロもおられます。商品知識はかけがえのないものでした。
■お客様の質問に答えると共に、部下が尋ねてくるのに答えなければならなかったので必要に迫られたのでしょう。お客様にも教えていただきました。それらをお客様に伝えるためのハンドブックも編集して発行しました。
■沢山の種類の商品の品揃えと値入、品切れ防止は重要な任務でした。手づくりの単品管理表を創ったりしたものです。発注量は経験で学ぶしかありません。セールスさんとの協力関係をつくることも必要でした。
■やがて部下にその仕事を任せるようになるとそのチェックが必要でした。
在庫過剰になることと、商品ロスが重要課題でした。それにより粗利益が決まるからです。毎月の棚卸しを間違いなく行うことにも必死でした。
■また、お客様友の会をつくり、バスでメーカーの工場見学にお連れをしたり、お客さま参加の競技イベントも開催しました。今思い返してもいろんなことを任せられやったものです。仕事というのはやはり体験から学ぶことが多いと思いますね。
■もうひとつ印象に残っているのが、部下のマネジメントです。今から思えばよく行動を観察していたものです。拙いと思ったとことを指摘するのにエネルギーを使いました。ずけずけモノを言えるタイプでなかったので努力が要りました。
■それに何度となくあった若い部下たちが辞めたいと言ってきた時の相談、弱気になる部下への励まし、喧嘩する部下同士の仲裁など人間の問題は難しいなと思いました。具体的にどのように対応したかは憶えていません。今となって反省するのは、当時は業績目標の達成を第一に考え、部下の成長を手助けするという意識は低かったのではないかということです。
■もうひとつ反省するのは部下の中の女性に好意を持つことです。独身で若いので健康なことですが、特定の女性に恋をするとそちらに関心が行きます。みんなが認める公然の中になるまでは、嫉妬心が目をくらませます。できれば恋愛は職場外ですべきでしょう。
■インフォーマルな会合も毎月やりました。給料日のあとの飲み会は楽しみでした。男同士の場合はいかがわしい小屋にも出入りしたこともあります。それは仕事をうまくやるための潤滑油というような計算はなく、ただ職場仲間と遊ぶということでした。それでも共通体験は人間関係を良好にする効果はあると思います。
■繰り返しになりますが、店長という立場になっても今そこで一緒に働く仲間と、目標に向かって頑張るという体験の中からいろいろ学ぶものだと思います。当時は集合研修で助けられたという記憶はありません。本を読んで解決できたのは商品知識だけでした。それでも5年間ほど店長は続けられ、少しは成長して行ったのだと思います。それはなぜなのか?
■数値目標の達成を基軸において、率先垂範すること以外に何をしたのだろうか?環境の影響も大きかったのでしょう。それに当時一緒に働いていた部下たちがいい子だったかもしれません。私の頼りになるとはいえないリーダーシップのもとに頑張ってくれたのは、あえていうなら、私の中にあった「誠実な心」と「責任感の強さ」ではなかったかと憶測します。
■それが仕事を覚え、創意工夫していくという「努力する態度」へとつながったのではないか、それが部下の方々に伝染し皆さんも頑張っていただいたのだということだと思います。20代、30代前半で店長になられる方には私よりずっと能力のある方々が沢山おられると思いますが、少し不安に思っておられる方には、①目標達成への執念②率先垂範③誠実な心④責任感⑤努力を継続するという5つのキーワードを贈りたいと思います。
■ここには現在、自分中で体系化した店長の仕事の分野、役割、必要な能力の一部しかありません。それをご提示するのを後回しにしたのは、人間は誰かが確立した体系を知識として学んでも、一度に、すぐに実践できるものでは無いと考えるからです。
■人の成長には「時間」が必要だと思います。しかも現時点では自分というものの強みを意識し、自分の置かれた環境の中で(環境を自分で変えるという行為も肯定したうえですが)体験を通じて学んでいくことを中心にすべきだと思います。私にとってそれは、意識と行動と心構えとなって表現されます。読者の皆様には、ご自身の手で現時点でのご自分の信条としてまとめられて実践を通じて学ばれる拠りどころにされることをお勧めいたします。
■このあと私は、30代に本社に移り10年間ほど教育担当として仕事をすることになります。そこではマネジメントを理論的に学び、実践に役立てるにはどのようにしていけばよいのかいう問題意識に目覚めて行きます。
■次回は30代で何に目覚め、何を行い、何に気づいたかを書いてみようと思います。
- 登録日時
- 2009/04/02(木) 10:54