【今月のトピックス】 水森かおりさんがやってきた
■4月の初めにわが街「須磨ニュータウン」に演歌歌手の水森かおりさんがやってきました。新曲「安芸の宮島」の発売キャンペーンのためです。4年前の「五能線」以来2度目だそうです(ご本人の弁)
■2003年に発売された「鳥取砂丘」以来ファンになった私はそそくさと出かけてまいりました。残念ながらいままで生のコンサートに行く機会がなかったものですから歳甲斐もなくわくわくしておりました。
■野外の舞台に颯爽と水色のドレスで現れた水森さんは、さすがに舞台ではオーラが出ており想像以上に美しく見えました。歌われたのは【鳥取砂丘】【輪島朝市】そして新曲の【安芸の宮島】の3曲でした。
■無料のキャンペーンのせいか買物広場は超満員です。2月のジェロさんの時よりは少な目だそうですが(私と同行した義姉の談)中高年が多かったですね。困ったのは水森さんの歌を聴きに来ているのに横のおばさんが一緒に歌うのです。そして「これ簡単や」だって。(最後に水森さんは安芸の宮島をもう一度みんなで歌いましょうとやってくれました。)
■さて、水森かおりさんは演歌歌手ではめずらしく総合オリコンヒットチャートに名前を連ねる常連です。公演も年間100回に達する売れっ子のようです。(司会者の方の談)彼女はなぜ売れるのか?以前ランチェスター戦略の普及に尽力される福永雅文さんのメルマガに投稿したことがあります。
■http://www.sengoku-blog.biz/mt-cgi/archives/2006/04/124.html
福永さんの当時のメルマガは上記のアドレスをクリックしてください。これを読んで、我が意を得たりと投稿しました。その時の内容は忘れましたが、確かに戦略的な売込みだと感じたことを書いたと思います。
■いまあらためて、水森さんのプロモーションに参加し、新曲CDを購入し、45分も並んで握手をしていただき、「水森さん誕生日は8月31ですね?」「そうです」「実は僕も同じ日なんですよ、僕はあなたのお父さんになりたい」と声をかけたら少しびっくりした顔をされていました。一緒に並んでいた義姉を「私の家内ですから握手をしてやって下さい」と言うとさすがに水森さん「それじゃお母さんですね」と笑顔で応じてくれました。
■そんな水森さんを見ていてなぜ彼女が売れるのか、しかしこれからも売れていくのだろうか?成功の秘訣は戦略的な対応にあったと思うのと、これから30代後半に向けてどのような戦略をとるのか、ヒット曲のほとんどを作詞された木下龍太郎さんが昨年8月に逝去された影響は?と考えずにはおれませんでした。
■歌がうまいだけでなくファンとの応対を45分間見ていましたが誠実で熱心な方でした。そのうえ明るくて、少々おきゃんなところを見せられます。失恋した女性の再生の旅路を歌う歌手にしては深刻さがありません。これも戦術でしょうか?
■私はもう1人の長年のファンである都はるみさんの舞台は2回ほど見に行きましたし、握手もしましたが、彼女も歌が上手く、深刻な内容の歌も多いのにご本人は「おきゃん」なところがあります。
■水森さんの売りは「女性の失恋と明日に向かって再生する旅路を歌にする」それを日本の各地の【ご当地ソング】としてするということではないでしょうか?彼女の『生存領域が明確に設定』されています。
■歌は1年1曲、毎年4月に発売して1年間歌いこんでいく。このスタンスも変わりません。これも全国各地をコンサートやキャンペーンで回りながら地道に販売するという戦略でしょう。
■対象となる顧客は、コアになるのはカラオケファンでしょうか?作曲家の弦哲也さんは素人も覚えやすいメロディーを心がけておられるようです。しかし少し難しい、つまり練習しないと歌えない、だけど一度パターンを憶えると歌いやすい。ということではないでしょうか?
■見せ方としては、「ドレスしか着用しない」というのも他の演歌歌手との差別化になっています。着物を着ないのは売れっ子では彼女だけでしょう。これは歌の内容とも関係ありますが、イメージが統一されています。
■シングル盤のジャケットをごらんになるとわかりますが、鳥取砂丘までの彼女は「暗い表情」です。しかしこの曲のヒットから次のヒット曲「釧路湿原」のジャケットでは表情が一変します。歌の内容とは別の「明るい表情、化粧」に転換です。「失恋から立ち直って明るく生きる」という女性を体言しているかのようです。
■木下龍太郎氏が亡くなられたので今年から路線を変えるのかとお思いましたが、作詞家は変わっても弦哲也作曲、前田俊明編曲は同じで、「安芸の宮島」は同じ失恋から再生する女性、ご当地は世界遺産の宮島です。歌の調子は明るめで、やさしく覚えられるメロディーです。「輪島朝市」の日本海の重さ、暗さから瀬戸内海の軽さ、明るさというチェンジぐらいです。
■ヒットしたご当地ソングでは8曲目です。10曲、10年ぐらいの戦略でしょうか?同じパターンは「安心感」がありますが「マンネリ」という強敵が裏腹にあります。自分の生存領域を自分の実年齢と合った、失恋と再生の旅路
の物語にした歌は人々のこころに共感を得ました。
■事業でも神戸大学の三品教授は「事業の立地」の重要性を提唱さています。そして10年かけて成功させる、つまり高い利益を創出するという企業には立地を決めるという経営者の重要な任務があると仰っています。
■水森かおりさんを売る、徳間ジャパンの戦略はどのように変化していくのか興味深いところです。彼女は別途毎年秋頃には「歌謡紀行」というアルバムの発売があります。自身のヒット曲を網羅しながら、ご当地を歌ったカバー曲を収録しています。おそらくその中で今後の路線にふさわしい曲調を模索されているのではないでしょうか?
■一度見つけた立地を転換するのは容易ではありません。失敗する危険性があるからです。しかしそれを恐れていてはジリ貧になる可能性もあるわけです。思い付きではなく何年かかけて次の10年を創る立地の創造が課題でしょう。都はるみさんは一度引退してから再デビューする時には「新しい立地を選択」してこられました。彼女も転換期ですね。それともこのまま終わるか?
■自分の生存領域(立地)を見つけることは「ブルーオーシャン戦略」にも通じます。水森かおりさんは今までこの宝の山を自分たちで創り上げてこられました。これからの戦略はどうされるのかファンとしてウオッチしながらも私も考えてみたいですね。新曲「安芸の宮島」が私にとっては平凡な曲に聴こえたことに危惧をいだきながらそんなことを考えました。 <完>
- 登録日時
- 2009/04/27(月) 16:11