■4年ほど前になりますが、クライアントの皆様とあるお店を訪問したときのことです。お店を拝見し、店長さんのお話を伺うことができました。当時そのお店は激戦と言われる競合の中で勝ち抜いておられました。
■店長さんのお話で今も印象に残っているのが、いくつかの施策のうち「販売スタッフにお客様からたずねられたこと、クレームを言われたこと、自分が気づいたことを毎日メモにしてもらいそれを活用して対策ミーティングを行っている」ということでした。
■現場で発生している日々のできごとを記録し、毎日店長がそれを見て即対応すべきことを除いてとりまとめを行い、週間ミーティングでデータを前にして販売スタッフと対策を考えるというものです。
■このような仕事の仕方が仕組みとなって定着し、習慣となって継続されていたのです。その結果、良い対策がうまれるというメリットだけでなく、販売スタッフが日々の仕事の中で意識してお客様の声を聴くという習慣が身についてきたとも仰っていました。まさに売るだけではなくマーケターとしての役割を果たすように動機付けされていたのです。
■わたしは当時この店長さんのお話にいたく感銘したことを覚えております。ところが私自身と言えば、そのような良いお話を伺いながらなかなか実践が覚束ないのです。エンドユーザーと接する機会がめっきり減ったがゆえに、そのような立場におられる方と接する時は、相手の話をよく聴いて、実態に迫るという努力が必要なはずなのですが。
■コンサルティングや研修講師をしていると、ついつい何かをお教えしなければ役に立たないという意識が働き、聴くより話す方が多くなりがちです。
昨年あたりからかなり意識をしていたのですが、先日あるクライアントの販売スタッフの方々と他店視察をしていて、あらためて「聴くことの重要性」に気づきました。そのいきさつとは・・・・
■ある販売スタッフの方と電車で移動中の話です。例によって私は最近自分が気づいたこと、アイデアなどを交え、相手の役に立ちそうなことを話していました。相手はしばらく黙って聞いてくれていましたが、そのうち相手もご自分の体験や意見を話されるようになりました。
■そこで私は咄嗟に気づいて、自分の意識を相手に向けるようにしました。それからは「聴くこと」に徹しました。あいづち、質問を交えて聴いていると、それまで私が喋っていたときに比べ、2人の会話はとても活気がおびてきました。
■それは相手の話す内容が私にとって興味深い内容だったので、聴く態度に真剣味があったからだと思います。毎日お客様と接しているからこそ気づかれている見識や実態を次から次へと話していただきました。また私が聴く姿勢に徹し、適切な質問をしたことも会話が弾んだ要因でしょう。
■例えば、どうしてそのようなことに気づいたの?
なぜそれが大事だと思うの?
お客様はどのようなことに興味や関心が多いの?
など質問することで、私が普段知りえない実態(勿論、その販売スタッフのおかれている状況とものの見方というフィルターはありますが。)をいくつも学ぶことができました。
■その学びの中からいくつかのアイデアが浮かびました。あるいは自分でさらに調べてみる着眼点が見えてきました。これはちょっと他の人にも確かめてみる必要があるなという意見も聴きました。相手の方も私との会話のなかから気づかれたこともあるでしょう。
■この体験をふりかえりながら冒頭の出来事を思い出しました。そして、直接エンドユーザーと接しておられない営業部門の方、部門長の方で、そういえば現場のスタッフの声を聴いているようで聴いていないかもと思われる方は、ぜひとも私の体験を参考に「しっかり聴く」マネジメントを実践してみていただきたいと思います。
- 登録日時
- 2008/03/08(土) 17:11