【2017年2月のトピックス①】
▲白熊の親子。日本列島もまたまた寒波襲来ですね。今日から今週末にかけて大雪になりそうです。気を付けてください。毎朝、赤ちゃんや動物の動画を見て癒されています。先週、今週のTVドラマ「相棒」もDVがテーマになっていました。男が持つ独善性と攻撃性の弊害でしょう。久しぶりに脚本は太田愛さん。彼女の小説「犯罪者」が角川文庫の新刊で発売中です。2~3年前に単行本で読みましたが面白かったですね。
事実の使い方<その1>
■明日、われらが安倍総理とアメリカのトランプ新大統領との公式の初日米首脳会談が開催されます。どのような成果を生み出すかは結果を待つしかありませんが、それはお任せするとして、ネットで拝見した記事から『事実の使い方』について思うところがありましたので書きます。
●私の仕事の進め方の中核となるものに「知って・掴んで・動かす(動く)」という問題(課題)解決の基本的な考え方があります。その中で知るというステップでは『事実を把握する』ということを重視しています。
●この事実(ファクト)についてトランプ大統領の言動がアメリカでも議論を呼び起こしているそうです。まずはAERAの記者が書いた記事の抜粋を転載しますのでお読みください。
■気にくわない事実は「オルタナティブ・ファクト(もう一つの事実)」にすり替えろ──。トランプ政治の核心に、虚偽を事実に変える悪魔の戦略がはっきりと見えた。
「あなたはそれを虚偽だと言うが、我々のスパイサー報道官は『alternative facts(もう一つの事実)』を提供しただけだ」
トランプ米大統領就任式の参加者数をめぐり、ケリーアン・コンウェイ大統領顧問が1月22日の米報道番組で使った言葉が、米国内で熱い議論を呼び起こしている。
●08年以降、民主党陣営のボランティアスタッフとして米大統領選に携わってきた海野素央・明治大学教授(心理学博士)と一緒に分析してみると、この言葉の裏には、トランプ政治を象徴する戦慄の戦略が隠れているのがはっきりと見えてきた。
海野教授が説明する。
「敵を倒して支持を固めるため、真実に対してもう一つの事実をつくるというメカニズムが働いている。選挙戦中から続いているが、今はトランプ政治の戦略の核となった。どんな時でもトランプ氏を守ってくれるのが『もう一つの事実』なのです」
クリントン陣営に身を置きながら海野教授が見たトランプ陣営の選挙戦略は、「全てがフェイク(虚偽)だった」。
●虚偽を事実にすり替えるという手法は、歴代大統領には見られない極めて恐ろしい悪魔の戦略だ。「絶対にあってはならないが、熱狂的な支持者は事実確認もせず、そのまま信じてしまう。虚偽の事実をつくりあげ、真実とミックスすることで、真実の信頼性を下げていく」と海野教授。米報道機関を「フェイクだ」と執拗に攻撃し続けるのも、虚偽はメディアであって、真実は常にトランプ政権とともにあるとの「もう一つの事実」を徹底的に支持者にすり込む戦略に基づいている。
その背景にはトランプ氏の「自己愛的な性格」が影響していると海野教授は考えている。自己愛が強い人は、自分の意見を通し、自身の業績を過大評価する傾向がある。自尊心を傷つけられると対決姿勢に転じるのも特徴だという。
●この戦略を担当するのが側近中の側近の3人。オルタナ・ファクトという概念を初めて公にしたコンウェイ顧問と、トランプ氏のスピーチライターのスティーブン・ミラー大統領補佐官、自らを「国粋主義者」と主張してオルタナ右翼との関係も深いスティーブン・バノン首席戦略官兼上級顧問だ。
「3人の人格は、トランプ大統領と非常に似ている。アイデンティティーが同一化しているから発想も同じ。とがめることなく『もう一つの事実』をつくりだす」(海野教授)
●そこまでして成し遂げようとしているのは、「歴史的に最も雇用創出を成し遂げた大統領」というレガシー(遺産)だ。雇用創出を最優先課題とし、変革能力をアピールするために大統領令を乱発する。同じく変革の象徴として09年に大統領となったオバマ前大統領が素早く成果を出せなかった結果、翌年の中間選挙で敗北した。その教訓を踏まえ、今年のクリスマス商戦までに変革の恩恵を国民が実感できるような成果をつくりだすことに躍起になっている。
●取引で実利引き出す
トランプ戦略を外交に当てはめるとどうなるか。貿易赤字のみを取り上げて日本への敵視発言を続けるトランプ氏に対し、日本政府は「日米同盟の重要性を丁寧に説明すれば分かってもらえる」と期待して今月の日米首脳会談に臨む。ただ、トランプ氏は同盟関係を十分に理解した上で、あえて貿易赤字を強調し、「円安誘導」と批判することで、「もう一つの事実」をつくりだしている可能性が高い。
海野教授は、これまでのトランプ氏の言動から、「あくまでも雇用創出という内政の延長線上に日本は置かれており、『雇用創出のための同盟国』という位置づけになっている」と分析。「取引材料の組み合わせを常に狙って交渉するのがトランプ外交」だとして、同盟国、非同盟国とも同じように実利を引き出すための外交を行う可能性を指摘する。
●人種や民族、宗教、文化の多様性を重んじる民主主義的な価値外交に終止符を打ち、孤立路線で米国第一主義を突き進むトランプ政権。虚偽の世界に現実社会が引き込まれるのか。それとも現実社会がそれを打ち破るのか。世界は今、極めて重要な岐路に立たされている。(編集部・山本大輔)
※AERA 2017年2月13日号 引用はここまで。
■この記事の伝えんとするところはよく分かります。興味深く読みました。実際の日米交渉ではどのような事実を基に話し合いが行われるかは注目していきましょう。今回はこの記事に触発された『事実について』考えてみたいと思います。仕事を進めていく上でとても重要なファクターだと思うからです。
●私がマネジメントを学ぶ過程で非常にインパクトがあって実践の参考にしたのが、故伊櫻淑親先生に教えていただいた『仕事研究』であることは以前にも書きました。
●仕事研究の考え方の中核にある手法は、前提条件を歪めないで良い課題を見つける、それをメンバーで実態共有する、そして重点ポイントを見つける、それから対策を考えるというサイクルを繰り返すことでした。
●その中に「事実を掴んで考える方が良い知恵が出る」というのがありました。また「人は自分が見たいように事実を見る」という戒めや「原文改定を排す」という格言があります。
●「原文改定を排す」とは『仕事研究集団を育てる』という先生の著書の130ページにその意味を理解する事例が記載されています。現在もよくあることですので転載します。
■たとえば、「まかせれば自主的にやるはず」と考えて任せたところ、ちっともやる気を見せない。そうすると<それは彼らの勉強が足りないからだ。では勉強させよう>と考える。それが原文改定者の発想だ。
●勉強が足りないからだと考える前に、「任せれば自主的に動くはず」と考えたその前提が間違っていたのではないかと考えて、その前提について事実調査をする。それが「原文改定を排す」者の態度である。
●中略-態度的なプラス効果が出た場合に共通するのは、任せた事柄が部下の「手の内」の問題であることだった。反対にマイナス効果の出た場合は、事柄が彼らの「手に余る」問題のときだった。
●詳細は本文を参照していただきたい(絶版ですがアマゾンの中古本があります)のですがこの「手の内」の問題が『良い課題』です。何を任せるかによって部下は力を合せて創造的に問題解決に取り組んだり、仕方なしにいやいや仕事をしたりするのである。
●「原文」とは「客観的事実」ということである。だから、原文改定を排すとは思い込みを排し、徹底的に事実を尊重するということだ。以下略。
■何か仕事上で上手くいかないことがあった時に、「誰がそれをやったんだ」とか「責任は誰にある」とかと考えるのではなく、『ぐっとこらえて』、自分の方のやり方に問題は無いかと考えるのが「原文改定を排す」者の態度です。
●伊櫻先生は、これはとても難しいことで、相当の覚悟が必要だとおっしゃいます。これができるようになればマネジメントの打ち出の小槌を手に入れたのも同然と提唱されています。
●私は心がけをしましたが実践の優等生ではありませんでした。教育担当の時は頭で理解して提唱していましたが、自分がいざマネージャーになると初期には謙虚でしたが、慣れてくると短気に結果を求める言動をしたものです。
●ですが極力問題解決には仕事研究的発想で取り組みました。売上不振対策には効果的でないことがありました。(これは仮説力が問われる分野でもあったからだと思います‐次回に記述)。しかし苦情対応には効果がありましたが、現実には一筋縄でいかないことが多々ありました。しかしこういう考え方が芯にあると落ち着いて対応することができました。
●コンサルタントになってからも極力そのやり方を踏襲しましたが、実践の場で究めるという努力は不足していたように思えます。覚悟の不足でしょう。反省です。
●少し長くなりましたので以下次回に続けます。<完>
- 登録日時
- 2017/02/10(金) 10:10