■振り込め詐欺に騙されたり、儲け話に乗っかって騙されたりというニュースを見聞してなぜなんだろうと思うことはありませんか。私たちも予定もしていなかったものを広告や口コミの影響を受けて、衝動的に購入してしまうという経験をしますね。
■そのような人の心を扱った心理学の名著「影響力の武器」(第2版)に引き続き、先月同著の「実践編」が発売されました。翻訳本です。両方で720P、価格も5,000円します。私は仕事の参考にと読みましたが、決して楽ではありませんでした。
■そこで、今月は同書から私のお客様で多くの対象がおられる携帯電話ショップに役立つヒントはないかという視点で私がメモしたものをご紹介いたします。
■ビジネス書を読むというのは小説のように娯楽が目的ではありません。仕事の何かに役立たないと値打ちがないものです。ただ単に読んで知識を増やすのも否定はしませんが、ビジネスという視点では生産性の低いものになるのではないでしょうか?
■私は実務家なのでその時の仕事の課題に直結したものを読んで、即参考になるものを探し、ヒントにして考えるようにしています。その方が集中力つきますし、結果的にお客様にも役立ちますし。勿論自分にとっても新しい気づきになることが多いようです。
■実践編の本の帯には「人のこころを動かす説得の科学」とあります。今回は実践編からヒントになったものをまとめます。その前に原理編ともいうべき「影響力の武器」でのべられている6つの原理をご紹介しておきましょう。
■その原理とは・・・多くの人々に共通する心理
①返報性(恩恵を受けたら報いなくてはならないと感じること)
②権威(専門家に指示を仰ごうとすること)
③コミットメントと一貫性(自分のコミットメントや価値観と一貫した行動をとろうとすること)注)コミットメント・・・約束、契約、打ち込むもの
④希少性(手に入れにくいものほど求めたがること)
⑤好意(好意を持つ相手ほど賛同したくなること)
⑥社会的証明(他人の行動を指針とすること)
■早速メモをご紹介いたしましょう。例えば次のようなメッセージはいかがでしょう? ケータイで常に情報をチェックしたり、ゲームや音楽をダウンロードして楽しむ方は・・・(特定多数のお客様を対象にする)
皆さん『●●●●●』にしておられます!
以下、●●●●●の「内容」と「おすすめ理由」を書いて最後に「行動を促す言葉」でしめくくります。⇒「社会的証明の原理」の活用です。
■7月になって夏の新製品が出揃います。旧モデルも残っています。売場では新しい「商品と情報の配列」(棚割り)が必要です。
■品揃えの豊富さは魅力の条件ですが、お客様にとっては「選択肢の多さ」は購入意欲を減退させます。そこで選択肢を狭める(分類をして絞り込む)工夫が必要になります。
■分類ごとにどのような共通する選択肢でくくって商品を配列し、情報を配置するのかが知恵のこめどころです。その場合注意すべきは、お客様に馴染みの薄い機能・性能という特長を使わないで、旧くても一般的になっていることで括るべきです。その方がお客様はイメージしやすいからです。
■よくおまけ特典で「1GBのマイクロSDプレゼント」というのを見かけます。無料特典はその価値(通常いくらで販売しているものかの表現)を伝えないと、お客様からは正当に評価されなくなる可能性があるので注意すべきです。
■旧モデルを販売したい時はあえて新製品と比較陳列して「価格の安さ」を際立たせる方が売れる可能性が高いということです。価格を優先した価値訴求の場合、「松竹梅理論」が通用します。多くの人は、中ぐらいの価格に引き寄せられるという経験則です。
■「●●●●を使わないと損をしますよ!」というように損をするという恐怖の動機づけで問題意識を持たせ、それから「解決策」と「根拠」を提示すると受け容れられやすいとうものです。多くの人は「得をするより、損をしたくない」という気持ちのほうに影響を受けやすいといいます。
■先に相手の要求を満たしてあげる方が、こちらの要求にも応えてくれやすいというものです。店内の人間関係にも適用できますが、まだ購入されていないお客様にも親切丁寧に対応する方が反応を得やすいというものです。例えば、下見のお客様にもご興味をもたれたことや、チェックしていただきたいところに「付箋」を付けてあげるだけでも随分と違います。⇒「返報性」
■「付箋」といえば、人に書類を送るときや、カタログを送ったときに印刷した挨拶文より、付箋に書いた手書きメッセージの方がよく読まれるという実験結果があるそうです。
■あるお店で「当店では、社会貢献活動としてエコキャップの回収に積極的に取り組んでおります。800個で1人分のワクチンになりますので、ぜひご協力下さい。」というメッセージを発信しておられます。これを以下のように変えると反応が多いのではないかと思います。
■「当店ではお客様に代わって、社会貢献活動としてエコキャップの回収に積極的に取り組んでおります。800個で1人分のワクチンになりますので、ぜひご協力いただけませんか?お願いいたします。」いかがでしょう?
■相手のために何かを与えた(例えばシフトを変わってあげた)ときそのことについて、時間の経過と共に与えた方は覚えているが、与えられその時に感謝した方は、時間の経過と共にその価値を忘れてしまいやすい傾向がある。したがって返報性は早い時期で無いと得られないという実験結果があるそうです。
■フット・イン・ザ・ドアテクニック⇒お客様との関係づくりにはまず小さくてもよいから注文をとること。一度関係を持てばその後は大きな商談も可能になるという古典的なセールステクニック。⇒「コミットメント(かかわり)」
■ラベリング⇒お客様の選択が正しいということを念押しするメッセージを伝えると好感をもたれやすいということ。例えばお帰りになるお客様にただ単に「ありがとうございます」と声をかけるだけでなく、「当店をお選びいただきありがとうございます。また、ぜひご利用くださいませ」と言う方が、お客様が自店を選んだことを正しいとお客様自身に確信いただくことになります。⇒「顧客との関係強化」
■簡単な質問が相手の強力を引き出す。⇒「○○○の時はお電話下さい」より「○○○の時はお電話いただけますでしょうか?」と問いかけ「はい」という返事をもらったほうが、電話をいただける確率が高い⇒一貫性の法則です。
■自分で目標(課題)を書くことで自分に対するコミットメントを高めることになるということです。さらにみんなに見えるところに貼り出してみるとか、他人に発表することで積極的に約束を守り、実行することにつながります。
■お客様が言われた言葉を復唱することでお客様に好感を持っていただけるというのは「好意の原理」です。よく理解しようとしてくれているとか自分の発した言葉を受け容れてくれているという共感を生み出します。自動車保険の会社のTVCMでよく使われていますね。
■「笑顔」を見せるのが苦手なら商売はするな、といわれます。本当の笑顔は精神状態から発せられます。自分の気分を良くするのも仕事です。どうしても気分がすぐれなくても、自分は役者だと思ってお店に立つべきです。プロ販売員にとって笑顔の応対は当たり前ですね。それも常に歯を見せる笑顔を練習する必要があります。
■「希少性の原理」⇒人は損失を回避したいという気持ちが強いものです。例えば「キャンペーン特価で新商品をお試しいただけるこのチャンスをご利用下さい」よりも「・・・・・このチャンスをお見逃しなく!」とするほうがお客様の反応が高くなるというものです。
■見た目が大事と言います。POPや手書きのメッセージの場合、字がきれいかどうかで説得力に差が出ます。手書きではキレイに書けない場合はPCを使いましょう。あるいはカタログなどの切り抜きです。もうひとつ、POPは紙一杯に書かないで縁に余白をつくるか、額縁をつけることです。
■コントラスト効果⇒薄いケータイを販売したいならその側に分厚くて重いケータイを陳列します。接客でも使えます。「実感」していただくことが可能です。メッセージは「今お使いのケータイがちょっと分厚いな、重いなとお感じでしたらぜひ一度お手にとって比べてみませんか?」「夏のクールビズスタイルでもYシャツのポケットにも入ります」などいかがでしょう?
■誰かに目標を達成させたいのであれば、そのゴールに向かってすでにどれだけ進んでいるかという証拠を示してあげると良い。例えば、「ポイントを使えば○回分の支払いは消化されますので、実際のお支払いは○回分で済みますよ」というようなメッセージが効果的です。
<完>
- 登録日時
- 2009/07/21(火) 09:45