【今月読んだ本】
『人を助けるとはどういうことか』 エドガー・H・シャイン著
『選ばれるプロフェッショナル』 ジャグディッシュ・N・シース&アンドリュー・ソーベル著
■前回8月30日に民主党の総選挙圧勝の日に「友愛とは自立する人々への支援である」という一文を書きました。その中で上記の著書を読んで紹介する旨を申し上げました。そして今日、9月16日はいよいよ第92代日本国首相に民主党代表の鳩山由紀夫氏が選出されました。わが国の新しい旅立ちの日です。そこでようやく私も2冊の本を読み終えましたのでご紹介しようと思います。
■たいそうな書き出しですが、新政権の船出と比べるほどのものではありません。遅れた理由をこじつけたものです。この2週間はそんなに多忙ではありませんでしたが、この翻訳本を読むのは楽ではありませんでした。全部で290Pと340Pに付箋をつけながら読みきるのは私には大変でした。
■山田風太郎氏や加藤廣氏の小説はあっという間に読めるのですが、ビジネス書はそういうわけにはまいりません。なんとか一度は通読したという状況です。付箋はびっしり付いています。紹介を書くにはもう1、2度読まないと十分ではないと思いますが、そんな完ぺき主義ではまた遅くなります。とにかくお読みいただき、本書を読んでみようと思われたら幸いです。
■この2冊を読む私の動機は8月30日の小文に記述しています。読後の結果は大変参考になり、わたしのもやもやは解消いたしました。問題の所在も掴むことができました。あとは実践することと、必要な時に再読することです。当面は書棚の一等地に置いておかねばならないでしょう。
■まず『人を助けるとはどういうことか』から。本書は「相手の役に立つこと」についての入門書だそうです。エドガー・H・シャインという大先生が書かれています。監訳者は神戸大学大学院教授の金井壽宏氏です。金井先生はシャイン先生の弟子だそうです。本書も金井先生の前書きや解説の分量が多くその部分がとても読みやすく書かれています。
■少し苦労しながらシャイン先生の本文を読みきったあとに金井先生の前書きや解説を読み直すととても理解が深まります。
本書の重要ポイントを金井先生の解説からご紹介いたします。
■世の中には相手の役に立っていない1人よがりの支援があまりに多い。たいていの場合は、支援する側が親しいクライアント(シャイン先生は支援を受ける人々のことをこう呼んでおられます‐筆者注)についてさえ、知らないことがいっぱいあるのに、いきなり「答え」つまり内容面でのアドバイスを勧告してしまう。
■内容(コンテント)に入る前に、クライアントは何を求めているのかを知る。場合によっては共に考えるための過程(プロセス)の方が大事であるという発想が、シャイン先生の考えと実践の土台にある。これがプロセスコンサルテーションの考え方である。
■その核になる部分は支援実践の3つの役割を学ぶことである。その3つとは
①クライアントが必要としている具体的な知識や具体的なサービスという形で支援を与える専門家(コンテントエキスパート)
②クライアントの状態を診断し、処方箋や専門的なサービスを与える医師
(医師のような役割という意味だと判断します‐筆者注)
③実際に必要なものを判断するため、共同で調べることによってクライアントを参加させ、情報をすべて打ち明けてもらえるほどの信頼関係を築くプロセスコンサルタント(プロセスファシリテーターともいう)
このなかで②がプロセスコンサルテーションから最も遠いところに位置づけられている。(②を上手く行う条件は本書でも述べられている‐筆者注)
■シャイン先生は本文で③を行なう為の具体策について事例を交えながら解説されています。例えばそもそも支援をする人、される人の間には心理的な位置関係に最初から格差が生じているという指摘とその理由の解説にはなるほどと気づかされます。
■以下「クライアントが陥りやすい5つの罠」「支援者が陥りやすい6つの罠」「支援者が知らない5つの事」「控えめな問いかけの4つのパターン」「支援関係における7つの原則とコツ」などにまとめられています。チームワークやリーダーについても解説されていますので組織内で働く人にも大いに参考になるでしょう。
■ありがたいことに金井先生は解説のところでプロセスコンサルテーション
10の原則というまとめを掲載いただいています。これをコピーして机の周りに貼っておくなり、手帳に挟んでおかれればとても役に立つでしょう。
■最後に本書の読者の対象を紹介しておきます。
・コンサルタント、ソーシャルワーカー、医者、看護師、介護福祉士
・小・中・高・大学の教員
・子供や恋人、配偶者ともっと実りのある関係を樹立したいと思う方々
・支援を受ける立場にある人
・組織開発に関与する人、経営幹部、管理者、MBAを学んだ人など幅広い人々に役立つということです。
■少し長くなりましたので本稿はここまでとして、もう一冊の『選ばれるプロフェッショナル』については別途ご紹介をいたします。<完>
- 登録日時
- 2009/09/18(金) 11:30